【完結】田舎育ち令嬢、都会で愛される

櫻野くるみ

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リリーをいじめたら王家が許しません。

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「リリー、大事な話があるんだ。食べながらでいいから聞いてほしい。」

朝食のスープを口に運んでいたリリーは、怪訝な顔で頷いた。

お兄様ったら、どうしたのかしら?
そんな真剣な顔をして・・・
王家からの知らせは、私が思っているより大変なことなのかも。

リリーは食事を中断し、兄の話を聞くことにした。


「今日の明け方、王家から書類の数々が届いた。見てごらん。これは控えの分だけどね。」

リリーは渡された書類に目をやった。

国王と父のサインが入ったその書類は、紛れもなくリリーの婚約に関する契約書であった。

「お兄様、これは・・・」

思ってもみなかった内容に驚くリリーに、アーサーはリリーのお披露目のことや、学院への入学もすでに決まっていることを告げた。

「いきなりすぎて驚いただろう?父上と僕も、朝からてんやわんやの大騒ぎだよ。勝手に持ってきて、今日記入して持ってこいっていうんだから。」

「だから父上はあんなに慌てていて、二人には隈が出来ているのですね。知らずに寝ていてごめんなさい・・・」

あまりの申し訳なさに、リリーは俯いてしまう。

「いや、それは構わないんだけど、リリーはラインハルト様との婚約を、嫌になってはいないかい?こんな逃げられないように、囲い混むようなやり方をされて。」

「確かに昨日、婚約のお話をされたばかりなので、正直驚きました。でも嫌ではありません。もしかして昨日の話は夢だったのかもと思っていたので、現実だとわかって嬉しいくらいです。」

リリーの前向きな返事に、アーサーは衝撃を受けた。

「あはは、参ったな。リリーは強いな。正直、こんな重い相手、嫌になって当然だと思ったのに。しかも、こちらが断れないとわかってやっているから、タチが悪い。」

「まあ、お兄様ったら王家に対して不敬ですわ。でも別に強くなんてな・・・」

言いかけて、初めてリリーは気付いてしまった。
もしや、第3王子の婚約者がこんな田舎者の令嬢だとしれたら、この家や、家族が嫌がらせを受け、迷惑をかけてしまうのではないかと。

「お兄様、どうしましょう!私が婚約者に選ばれたと噂が広がったら、私は何を言われても自業自得だとわかっていますが、お父様やお兄様に嫌がらせなどのご迷惑が・・・」

「いや、それは大丈夫だよ。心配いらない。」

「でも、面倒なことがあるから学院を休むって。」

「ああ、それは逆の意味でね。」

「逆?」

「うん。リリーの婚約で、うちとお近づきになりたい貴族が殺到しそうで。」

まだよく理解できていないリリーに、アーサーは過去の話を始めた。


「まだリリーが領地にいた頃の話だから、知らなくて当然なんだけど、王太子の婚約の時は結構問題が起きたんだよ。王家に嫁がせたい貴族達が、相手のご令嬢や、家に過激な嫌がらせを繰り返してね。でっち上げの横領や、誘拐もどきの騒ぎまで。」

まぁ、そんなことが。
全然知りませんでした。

リリーは王太子妃のソフィアを思い出した。
優しく、温かい人柄で、仲の良い家族だった。
まさかそんな辛い過去があったなんて。

「それらの行為に、王家がキレてしまってね。ほら、王太子もソフィア様を溺愛なさっているから。徹底的に、相手を潰して回ってね。それはそれは凄かったよ。仕掛けた家は全て断絶したんだから。悪口を言いふらしていただけで潰されたからね。」

え?
本当に根こそぎ潰してしまったのですか??

「それは・・・」

思わず絶句してしまう。

「その後、今度は第2王子の婚約が発表されたんだけど、まあ普通ならもう怖くて手出しをしないよね。でも何人かいたんだよ、イザベラ様に嫌がらせをした令嬢が。今はどうしているかわからないけど。」

アーサーは遠い目をした。

なんだかすごい話を聞いてしまいました。
そのご令嬢はどうなってしまったのでしょう。

「という訳だから、リリーや僕達に何か仕掛けてくる貴族なんて、余程のバカじゃない限りいないだろうから安心して。リリーを苛めたら王家が黙ってないだろうからね。」

それは安心していいのでしょうか。
むしろ王家の方々がやり過ぎで、心配になりましたよ。
でも、ソフィア様も、イザベラ様も、大切にされていて良かったです。

「それでは、さっきの殺到するというのは?」

「うん、引きずり下ろせないなら、取り込めばいいと考えるみたいでね。僕に婚約の話がやたらと舞い込みそうで、憂鬱だなーと思って。」

まあ、お兄様に婚約者が!
お兄様にはまだ婚約者が居ませんものね。
妹の目から見ると、優しくて真面目な優良株なのですけど。

「私にオススメのご令嬢がいれば良かったのですけど・・・って!!いるじゃないですか!ジェシーが!!」

「あはは、やっぱりリリーもジェシーを勧めてきたか。さっきオーウェンにも言われたよ。」

「だって、ジェシー以上の令嬢なんて、なかなかいませんもの。ああ、ジェシーとお兄様がうまくいったら、なんて素敵なのかしら。」

「ふむ。やっぱりそれがベストかな。」

呟いたかと思うと、アーサーは立ち上がり言った。

「今からジェシーに会ってくるよ。」

「はい!いってらっしゃいませ。ジェシーによろしくお伝えください。」

「ああ、では行ってくる。」

食堂を出ていく兄を笑顔で見送り、リリーは思った。

幼馴染のジェシーが、お義姉さんになるかもしれないのね。
楽しみだわ!

うきうきしながら、リリーはすっかり冷めてしまった朝食を、再び食べ始めたのだった。

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