【完結】田舎育ち令嬢、都会で愛される

櫻野くるみ

文字の大きさ
47 / 69

幼馴染みがお義姉さんになるみたいです。

しおりを挟む
アーサーが隣家を訪ねると、すぐに顔馴染みの執事が現れた。

「アーサー様、オーウェン様はあいにく学院へ外出中ですが・・・」

怪訝そうな顔をしているが、それも当然である。
本来は、アーサーも一緒に学院に居るはずの時刻なのだから。

「今日はジェシーに用があってね。突然で悪いんだが。」

執事は納得すると、すぐにジェシーを呼んでくれた。


「アーサーお兄様?一体どうなさったの?」

すぐにジェシーが顔を出したが、なぜアーサーがここに居るのか不思議そうにしている。
話があると告げると、応接室へ案内された。


紅茶が目の前に置かれると、ジェシーが先に口を開いた。

「もしかして、朝の馬車の音と関係があるのかしら?」

「さすがジェシー、勘がいいな。リリーなんて、あの爆音に気付かず寝ていたよ。」

「あの音で?ある意味さすがだわ、リリー。」

二人で思わず笑ってしまった。

「それで?何があったのか、訊いてもいいのかしら?」

「もちろん。結論だけ言うと、ラインハルト様とリリーの婚約についてだった。」

「はあああ!?婚約?リリー、腹黒王子と婚約したの!?」

ジェシーが驚き、テーブルに強く手をついた為、カップが震えた。

「驚くよね。僕も昨日聞いて驚いたし、今日書類が届いて更に驚いたよ。」

ジェシーが呆れたように溜め息を吐くと、ソファーに身を沈めた。

「なるほどね。昨日おじさまが昇爵して、そのタイミングで婚約の打診をして、翌日にはさっさと契約を済ませようって魂胆ね。あの腹黒王子の考えそうなことだわ。」

あまりに見事に言い当てていて、アーサーは感心してしまった。

「本当にジェシーは賢いよね。まさにそのとおりだよ。今日中に提出って言われて、父上と僕は寝不足さ。」

その恨みもあって、アーサーにはジェシーの、『腹黒王子』の呼び方を咎める気は全く起きなかった。

「それは大変でしたわね。そんな時に私にまで説明に来てくださって、ありがとう。」

「いや、他にも話があってね。」

「他にも?」

さすがのジェシーも、アーサーの本当の目的まではわからないらしい。
アーサーはジェシーの目を見つめ、緊張ぎみに言った。

「ジェシー、突然言われても困るとは思うが、僕と結婚してくれないか?」

「え?」

ジェシーは驚き過ぎて、言葉が続かないらしい。
目をパチクリとしていたが、ようやく合点がいったのか、頷きだした。

「話が読めたわ。アーサーお兄様、これから殺到するお見合い話が面倒になったんでしょう?それに、やっぱり味方になる女性がリリーの近くに居たほうが、これから色々と安心出来るものね。」

「うっ、確かにその通りなんだ。でも改めて客観的に聞くと、ひどい話だな。やっぱり聞き流して・・・」

「アーサーお兄様と結婚するわ!!」

「えっ!?」

「私、まだリリーの婚約なんて認めてないもの。身内になれば、破談にさせるチャンスもあるかもしれないし。」

いや、確かにお互いのメリットはあるかもしれないが、果たしてそれだけで結婚していいものなのか?

アーサーは葛藤していた。
しかし、ジェシーは説得するように続けた。

「アーサーお兄様、私達の結婚が例え利害がからんでいなくとも、もともと私達は相性がいいと思うの。私、アーサーお兄様のこと好きよ。愛していく自信があるわ。お兄様は?」

アーサーは自分に問いかけた。
ジェシーを愛する自信・・・

「僕にもあるよ。ジェシーを愛して、守っていく自信が。」

アーサーは自信を持って言い切った。

なるほど、問題はなかったらしい。

「あら、じゃあ相思相愛ね。」

ジェシーが可愛らしく笑ったので、アーサーも笑った。

「早速、夜にでも父に伝えるよ。あ、あと出来ればもう一つ頼みたいんだ。」

「乗りかかった船というやつね。何でも言ってちょうだい。」

「王子とリリーが学院に入学するんだ。嫌じゃなければジェ」

「行くわ!!」

まだアーサーが言い終わらない内に、ジェシーが承諾していた。

「イチャイチャ学生生活なんて、私が阻止してみせるわ!」


その頃、王宮でリリーのお披露目の為のドレスを発注していたラインハルトは、クシャミをしていた。

「ん?リリーが僕のウワサでもしてるのかな?」

幸せ一杯のラインハルトは、この先ジェシーに邪魔される未来をまだ知らなかった。




しおりを挟む
感想 8

あなたにおすすめの小説

【完結】無口な旦那様は妻が可愛くて仕方ない

ベル
恋愛
旦那様とは政略結婚。 公爵家の次期当主であった旦那様と、領地の経営が悪化し、没落寸前の伯爵令嬢だった私。 旦那様と結婚したおかげで私の家は安定し、今では昔よりも裕福な暮らしができるようになりました。 そんな私は旦那様に感謝しています。 無口で何を考えているか分かりにくい方ですが、とてもお優しい方なのです。 そんな二人の日常を書いてみました。 お読みいただき本当にありがとうございますm(_ _)m 無事完結しました!

【完結】魔力ゼロと捨てられた私を、王子がなぜか離してくれません ――無自覚聖女の王宮生活――

ムラサメ
恋愛
伯爵家で使用人同然に扱われてきた少女、エリナ。 魔力も才能もないとされ、義妹アリシアの影で静かに生きていた。 ある日、王国第一王子カイルの視察で運命が動き出す。 誰も気づかなかった“違和感”に、彼だけが目を留めて――。

噂の悪女が妻になりました

はくまいキャベツ
恋愛
ミラ・イヴァンチスカ。 国王の右腕と言われている宰相を父に持つ彼女は見目麗しく気品溢れる容姿とは裏腹に、父の権力を良い事に贅沢を好み、自分と同等かそれ以上の人間としか付き合わないプライドの塊の様な女だという。 その名前は国中に知れ渡っており、田舎の貧乏貴族ローガン・ウィリアムズの耳にも届いていた。そんな彼に一通の手紙が届く。その手紙にはあの噂の悪女、ミラ・イヴァンチスカとの婚姻を勧める内容が書かれていた。

【完結】子爵令嬢の秘密

りまり
恋愛
私は記憶があるまま転生しました。 転生先は子爵令嬢です。 魔力もそこそこありますので記憶をもとに頑張りたいです。

【完結】ありのままのわたしを愛して

彩華(あやはな)
恋愛
私、ノエルは左目に傷があった。 そのため学園では悪意に晒されている。婚約者であるマルス様は庇ってくれないので、図書館に逃げていた。そんな時、外交官である兄が国外視察から帰ってきたことで、王立大図書館に行けることに。そこで、一人の青年に会うー。  私は好きなことをしてはいけないの?傷があってはいけないの?  自分が自分らしくあるために私は動き出すー。ありのままでいいよね?

【完結】転生したらラスボスの毒継母でした!

白雨 音
恋愛
妹シャルリーヌに裕福な辺境伯から結婚の打診があったと知り、アマンディーヌはシャルリーヌと入れ替わろうと画策する。 辺境伯からは「息子の為の白い結婚、いずれ解消する」と宣言されるが、アマンディーヌにとっても都合が良かった。「辺境伯の財で派手に遊び暮らせるなんて最高!」義理の息子など放置して遊び歩く気満々だったが、義理の息子に会った瞬間、卒倒した。 夢の中、前世で読んだ小説を思い出し、義理の息子は将来世界を破滅させようとするラスボスで、自分はその一因を作った毒継母だと知った。破滅もだが、何より自分の死の回避の為に、義理の息子を真っ当な人間に育てようと誓ったアマンディーヌの奮闘☆  異世界転生、家族愛、恋愛☆ 短めの長編(全二十一話です) 《完結しました》 お読み下さり、お気に入り、エール、いいね、ありがとうございます☆ 

【完結】触れた人の心の声が聞こえてしまう私は、王子様の恋人のフリをする事になったのですが甘々過ぎて困っています!

Rohdea
恋愛
──私は、何故か触れた人の心の声が聞こえる。 見た目だけは可愛い姉と比べられて来た伯爵家の次女、セシリナは、 幼い頃に自分が素手で触れた人の心の声が聞こえる事に気付く。 心の声を聞きたくなくて、常に手袋を装着し、最小限の人としか付き合ってこなかったセシリナは、 いつしか“薄気味悪い令嬢”と世間では呼ばれるようになっていた。 そんなある日、セシリナは渋々参加していたお茶会で、 この国の王子様……悪い噂が絶えない第二王子エリオスと偶然出会い、 つい彼の心の声を聞いてしまう。 偶然聞いてしまったエリオスの噂とは違う心の声に戸惑いつつも、 その場はどうにかやり過ごしたはずだったのに…… 「うん。だからね、君に僕の恋人のフリをして欲しいんだよ」 なぜか後日、セシリナを訪ねて来たエリオスは、そんなとんでもないお願い事をして来た! 何やら色々と目的があるらしい王子様とそうして始まった仮の恋人関係だったけれど、 あれ? 何かがおかしい……

契約結婚の相手が優しすぎて困ります

みみぢあん
恋愛
ペルサル伯爵の婚外子リアンナは、学園に通い淑女の教育を受けているが、帰宅すれば使用人のような生活をおくっていた。 学園の卒業が近くなったある日、リアンナは父親と変わらない年齢の男爵との婚約が決まる。 そんなリアンナにフラッドリー公爵家の後継者アルベールと契約結婚をしないかと持ちかけられた。

処理中です...