【完結】田舎育ち令嬢、都会で愛される

櫻野くるみ

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リリーに絡む命知らずな令嬢達。

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社交界デビューを迎えた令嬢達による、国王への挨拶が一通り終わり、会場は一度歓談と食事を楽しむ時間となった。
その後、リリーのお披露目タイムとなるらしい。

国王ら王族の周辺は、ご機嫌伺いの貴族で溢れ、リリーはラインハルトとまだゆっくりと顔を合わせる機会はなかった。

やっぱりハルト様は王子様なのよね。
堂々とした振る舞いで、笑顔を絶やさずに対応していてさすがだわ。

実際は、リリーと自由に会話も出来ず、ラインハルトは苛立っていた。
今までは仕事と割り切ってうまく振る舞えていたが、見えるところにリリーが居るのに近付けないことが辛く、気を抜くとどす黒いオーラが出てしまう。
度々、兄達に肘でつつかれては、王子様スマイルを慌てて張り付けることを繰り返していた。



そんなラインハルトの葛藤に気付くことなく、リリーは兄やジェシー兄妹と共に、果実のジュースを飲みながら会話を楽しんでいた。
そんなリリーの目に、珍しいお菓子が映った。

「ジェシー、あそこにある色とりどりなお菓子って何かしら?ちょっと見てくるわね。」

「待って、リリー。一人じゃ危ないから、私も行くわ。」

初の夜会で一人にさせるのが心配で、ジェシーがすぐに止めたが、リリーは「すぐそこだから平気」と、小走りに行ってしまった。

「僕達の目の届く場所だから大丈夫だろう。」

「そうそう、さっきの挨拶の場面を見て、リリーに何か仕掛けてくるような馬鹿はさすがにいないだろうし。」

アーサーとオーウェンが、呑気に笑い合う。

確かに、王族にあれだけ大切にされているリリーに、何かする貴族なんていないわよね。

ジェシーがリリーを目で追いながら、そう思った時だった。


「あなたがずっと田舎に籠っていたっていうリリーさんかしら?確かに色が黒くて、せっかくの白のドレスが台無しね。」

え?
なにあの令嬢・・・
正気なの?

ジェシーは目を丸くし、オーウェンはブハッとお酒を噴いた。

「お兄様、馬鹿が居たみたいですわよ。」

「嘘だろ!?あいつら、家ごと終わるな。」

すぐさまリリーの元へ駆け付けようとした三人だったが、ラインハルトの視線を感じて思い止まった。
何か考えがあるらしい。


リリーは戸惑っていた。
目の前には話しかけてきた令嬢と、その背後にも二人の令嬢が立っている。
綺麗なドレスを着た、美しい令嬢達だが、なんだか威圧的で怖い。

「はい、私がリリーですが、あなた方は?」

貴族の顔をほとんど知らないリリーは、申し訳なさそうに名前を訊いてみた。
もしかしたら、会うのは初めてでも、家族の知り合いかもしれない。

「まあ、ミシェル様をご存知ないなんて!!さすが田舎者は違いますわね。」

「ミシェル様はナムール伯爵家のご令嬢でしてよ?無知にも程がありますわ!」

後ろの取り巻きらしき二人の女性が口々に叫ぶ。
どうやら有名な令嬢らしい。


「あーーー!!!あれって、ミシェルじゃない!あの取り巻きも覚えてるわ。お兄様、ほら、昔私を虐めてた中心人物・・・」

「ああ、覚えているよ。成長しないな。しかも、リリーは格上の侯爵令嬢なのに。」

呆れたようにオーウェンがため息を吐いた。
確かにあれから10年ほど経ったが、相変わらず同じことを繰り返しているらしい。


「あなた、本当に何も知らないのね。常識がないから、平気で自分の父親の爵位を上げるように頼んだり出来るのよ。」

ミシェルが憎しみを込めた瞳でリリーを見た。

「あの、何のことでしょう?」

意味がわからなくてリリーは尋ねたが、ミシェルは益々腹を立てたようだ。

「惚けないで下さる?あなたがラインハルト様にお願いして、特別に父親を侯爵にしてもらったのでしょう?そうでなかったら、あんな仕事もしない、ポンコツが侯爵になるなんておかしいじゃない。ラインハルト様も、色仕掛けで落としたのかしら?田舎者で美しくもないあなたの武器なんて、女であることくらいですものね。」

会場の温度が一気に下がった。
冷気の出所はもちろんラインハルトが一番だったが、リリーの家族、ジェシーの家族、王族達皆から漏れ出している。

これは不味い・・・不味すぎる・・・
あの娘の親達は何をしているんだ!
早く三人を止めろ!!

夜会の参加者は心の中では慌てていたが、ただ空気のように静かに佇むことしか出来なかった。


「私はおっしゃる通り、田舎育ちですし、美しくもありません。」

リリーが真っ直ぐに前を見て、話し始めた。

「でも、父の昇爵は父のたゆまぬ努力によるものです。父は働き者ですし、実績もあると聞いています。私は父を尊敬しています。父に対する言葉だけは訂正していただきたいです。国王様も、私情でそんなことはなさいません!」

凛と言い放つ姿は美しく、ラインハルトはリリーに出会った日の事を思い出していた。

『確かに何もないところかもしれないですが、全てがあるところだと私は思っています!!』

領地の事をそう話していた。
領地を田舎だと馬鹿にする人間が多い中で、全てがある場所だと言いきれるリリーに、ラインハルトは惹かれたのである。

一方、父親世代の貴族の男性も、リリーの言葉に感銘を受けていた。
父の功績を誰より信じる娘・・・
多少はコネもあると、妬みから悪口を言った者は過去の自分を恥じていた。

リリーの父、ウィリアムも、自分自身コネだと諦めていた為、娘の発言が嬉しく、男泣きしていた。
国王は、少しの後ろめたさを感じつつ、リリーに信頼を寄せられていることが嬉しかった。

あっという間に、リリーは会場中の人々を味方につけていたのだった。

固唾を飲んで皆がリリーを見守る中、ラインハルトが動いた。

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