57 / 69
リリーに絡む命知らずな令嬢達。
しおりを挟む
社交界デビューを迎えた令嬢達による、国王への挨拶が一通り終わり、会場は一度歓談と食事を楽しむ時間となった。
その後、リリーのお披露目タイムとなるらしい。
国王ら王族の周辺は、ご機嫌伺いの貴族で溢れ、リリーはラインハルトとまだゆっくりと顔を合わせる機会はなかった。
やっぱりハルト様は王子様なのよね。
堂々とした振る舞いで、笑顔を絶やさずに対応していてさすがだわ。
実際は、リリーと自由に会話も出来ず、ラインハルトは苛立っていた。
今までは仕事と割り切ってうまく振る舞えていたが、見えるところにリリーが居るのに近付けないことが辛く、気を抜くとどす黒いオーラが出てしまう。
度々、兄達に肘でつつかれては、王子様スマイルを慌てて張り付けることを繰り返していた。
そんなラインハルトの葛藤に気付くことなく、リリーは兄やジェシー兄妹と共に、果実のジュースを飲みながら会話を楽しんでいた。
そんなリリーの目に、珍しいお菓子が映った。
「ジェシー、あそこにある色とりどりなお菓子って何かしら?ちょっと見てくるわね。」
「待って、リリー。一人じゃ危ないから、私も行くわ。」
初の夜会で一人にさせるのが心配で、ジェシーがすぐに止めたが、リリーは「すぐそこだから平気」と、小走りに行ってしまった。
「僕達の目の届く場所だから大丈夫だろう。」
「そうそう、さっきの挨拶の場面を見て、リリーに何か仕掛けてくるような馬鹿はさすがにいないだろうし。」
アーサーとオーウェンが、呑気に笑い合う。
確かに、王族にあれだけ大切にされているリリーに、何かする貴族なんていないわよね。
ジェシーがリリーを目で追いながら、そう思った時だった。
「あなたがずっと田舎に籠っていたっていうリリーさんかしら?確かに色が黒くて、せっかくの白のドレスが台無しね。」
え?
なにあの令嬢・・・
正気なの?
ジェシーは目を丸くし、オーウェンはブハッとお酒を噴いた。
「お兄様、馬鹿が居たみたいですわよ。」
「嘘だろ!?あいつら、家ごと終わるな。」
すぐさまリリーの元へ駆け付けようとした三人だったが、ラインハルトの視線を感じて思い止まった。
何か考えがあるらしい。
リリーは戸惑っていた。
目の前には話しかけてきた令嬢と、その背後にも二人の令嬢が立っている。
綺麗なドレスを着た、美しい令嬢達だが、なんだか威圧的で怖い。
「はい、私がリリーですが、あなた方は?」
貴族の顔をほとんど知らないリリーは、申し訳なさそうに名前を訊いてみた。
もしかしたら、会うのは初めてでも、家族の知り合いかもしれない。
「まあ、ミシェル様をご存知ないなんて!!さすが田舎者は違いますわね。」
「ミシェル様はナムール伯爵家のご令嬢でしてよ?無知にも程がありますわ!」
後ろの取り巻きらしき二人の女性が口々に叫ぶ。
どうやら有名な令嬢らしい。
「あーーー!!!あれって、ミシェルじゃない!あの取り巻きも覚えてるわ。お兄様、ほら、昔私を虐めてた中心人物・・・」
「ああ、覚えているよ。成長しないな。しかも、リリーは格上の侯爵令嬢なのに。」
呆れたようにオーウェンがため息を吐いた。
確かにあれから10年ほど経ったが、相変わらず同じことを繰り返しているらしい。
「あなた、本当に何も知らないのね。常識がないから、平気で自分の父親の爵位を上げるように頼んだり出来るのよ。」
ミシェルが憎しみを込めた瞳でリリーを見た。
「あの、何のことでしょう?」
意味がわからなくてリリーは尋ねたが、ミシェルは益々腹を立てたようだ。
「惚けないで下さる?あなたがラインハルト様にお願いして、特別に父親を侯爵にしてもらったのでしょう?そうでなかったら、あんな仕事もしない、ポンコツが侯爵になるなんておかしいじゃない。ラインハルト様も、色仕掛けで落としたのかしら?田舎者で美しくもないあなたの武器なんて、女であることくらいですものね。」
会場の温度が一気に下がった。
冷気の出所はもちろんラインハルトが一番だったが、リリーの家族、ジェシーの家族、王族達皆から漏れ出している。
これは不味い・・・不味すぎる・・・
あの娘の親達は何をしているんだ!
早く三人を止めろ!!
夜会の参加者は心の中では慌てていたが、ただ空気のように静かに佇むことしか出来なかった。
「私はおっしゃる通り、田舎育ちですし、美しくもありません。」
リリーが真っ直ぐに前を見て、話し始めた。
「でも、父の昇爵は父のたゆまぬ努力によるものです。父は働き者ですし、実績もあると聞いています。私は父を尊敬しています。父に対する言葉だけは訂正していただきたいです。国王様も、私情でそんなことはなさいません!」
凛と言い放つ姿は美しく、ラインハルトはリリーに出会った日の事を思い出していた。
『確かに何もないところかもしれないですが、全てがあるところだと私は思っています!!』
領地の事をそう話していた。
領地を田舎だと馬鹿にする人間が多い中で、全てがある場所だと言いきれるリリーに、ラインハルトは惹かれたのである。
一方、父親世代の貴族の男性も、リリーの言葉に感銘を受けていた。
父の功績を誰より信じる娘・・・
多少はコネもあると、妬みから悪口を言った者は過去の自分を恥じていた。
リリーの父、ウィリアムも、自分自身コネだと諦めていた為、娘の発言が嬉しく、男泣きしていた。
国王は、少しの後ろめたさを感じつつ、リリーに信頼を寄せられていることが嬉しかった。
あっという間に、リリーは会場中の人々を味方につけていたのだった。
固唾を飲んで皆がリリーを見守る中、ラインハルトが動いた。
その後、リリーのお披露目タイムとなるらしい。
国王ら王族の周辺は、ご機嫌伺いの貴族で溢れ、リリーはラインハルトとまだゆっくりと顔を合わせる機会はなかった。
やっぱりハルト様は王子様なのよね。
堂々とした振る舞いで、笑顔を絶やさずに対応していてさすがだわ。
実際は、リリーと自由に会話も出来ず、ラインハルトは苛立っていた。
今までは仕事と割り切ってうまく振る舞えていたが、見えるところにリリーが居るのに近付けないことが辛く、気を抜くとどす黒いオーラが出てしまう。
度々、兄達に肘でつつかれては、王子様スマイルを慌てて張り付けることを繰り返していた。
そんなラインハルトの葛藤に気付くことなく、リリーは兄やジェシー兄妹と共に、果実のジュースを飲みながら会話を楽しんでいた。
そんなリリーの目に、珍しいお菓子が映った。
「ジェシー、あそこにある色とりどりなお菓子って何かしら?ちょっと見てくるわね。」
「待って、リリー。一人じゃ危ないから、私も行くわ。」
初の夜会で一人にさせるのが心配で、ジェシーがすぐに止めたが、リリーは「すぐそこだから平気」と、小走りに行ってしまった。
「僕達の目の届く場所だから大丈夫だろう。」
「そうそう、さっきの挨拶の場面を見て、リリーに何か仕掛けてくるような馬鹿はさすがにいないだろうし。」
アーサーとオーウェンが、呑気に笑い合う。
確かに、王族にあれだけ大切にされているリリーに、何かする貴族なんていないわよね。
ジェシーがリリーを目で追いながら、そう思った時だった。
「あなたがずっと田舎に籠っていたっていうリリーさんかしら?確かに色が黒くて、せっかくの白のドレスが台無しね。」
え?
なにあの令嬢・・・
正気なの?
ジェシーは目を丸くし、オーウェンはブハッとお酒を噴いた。
「お兄様、馬鹿が居たみたいですわよ。」
「嘘だろ!?あいつら、家ごと終わるな。」
すぐさまリリーの元へ駆け付けようとした三人だったが、ラインハルトの視線を感じて思い止まった。
何か考えがあるらしい。
リリーは戸惑っていた。
目の前には話しかけてきた令嬢と、その背後にも二人の令嬢が立っている。
綺麗なドレスを着た、美しい令嬢達だが、なんだか威圧的で怖い。
「はい、私がリリーですが、あなた方は?」
貴族の顔をほとんど知らないリリーは、申し訳なさそうに名前を訊いてみた。
もしかしたら、会うのは初めてでも、家族の知り合いかもしれない。
「まあ、ミシェル様をご存知ないなんて!!さすが田舎者は違いますわね。」
「ミシェル様はナムール伯爵家のご令嬢でしてよ?無知にも程がありますわ!」
後ろの取り巻きらしき二人の女性が口々に叫ぶ。
どうやら有名な令嬢らしい。
「あーーー!!!あれって、ミシェルじゃない!あの取り巻きも覚えてるわ。お兄様、ほら、昔私を虐めてた中心人物・・・」
「ああ、覚えているよ。成長しないな。しかも、リリーは格上の侯爵令嬢なのに。」
呆れたようにオーウェンがため息を吐いた。
確かにあれから10年ほど経ったが、相変わらず同じことを繰り返しているらしい。
「あなた、本当に何も知らないのね。常識がないから、平気で自分の父親の爵位を上げるように頼んだり出来るのよ。」
ミシェルが憎しみを込めた瞳でリリーを見た。
「あの、何のことでしょう?」
意味がわからなくてリリーは尋ねたが、ミシェルは益々腹を立てたようだ。
「惚けないで下さる?あなたがラインハルト様にお願いして、特別に父親を侯爵にしてもらったのでしょう?そうでなかったら、あんな仕事もしない、ポンコツが侯爵になるなんておかしいじゃない。ラインハルト様も、色仕掛けで落としたのかしら?田舎者で美しくもないあなたの武器なんて、女であることくらいですものね。」
会場の温度が一気に下がった。
冷気の出所はもちろんラインハルトが一番だったが、リリーの家族、ジェシーの家族、王族達皆から漏れ出している。
これは不味い・・・不味すぎる・・・
あの娘の親達は何をしているんだ!
早く三人を止めろ!!
夜会の参加者は心の中では慌てていたが、ただ空気のように静かに佇むことしか出来なかった。
「私はおっしゃる通り、田舎育ちですし、美しくもありません。」
リリーが真っ直ぐに前を見て、話し始めた。
「でも、父の昇爵は父のたゆまぬ努力によるものです。父は働き者ですし、実績もあると聞いています。私は父を尊敬しています。父に対する言葉だけは訂正していただきたいです。国王様も、私情でそんなことはなさいません!」
凛と言い放つ姿は美しく、ラインハルトはリリーに出会った日の事を思い出していた。
『確かに何もないところかもしれないですが、全てがあるところだと私は思っています!!』
領地の事をそう話していた。
領地を田舎だと馬鹿にする人間が多い中で、全てがある場所だと言いきれるリリーに、ラインハルトは惹かれたのである。
一方、父親世代の貴族の男性も、リリーの言葉に感銘を受けていた。
父の功績を誰より信じる娘・・・
多少はコネもあると、妬みから悪口を言った者は過去の自分を恥じていた。
リリーの父、ウィリアムも、自分自身コネだと諦めていた為、娘の発言が嬉しく、男泣きしていた。
国王は、少しの後ろめたさを感じつつ、リリーに信頼を寄せられていることが嬉しかった。
あっという間に、リリーは会場中の人々を味方につけていたのだった。
固唾を飲んで皆がリリーを見守る中、ラインハルトが動いた。
80
あなたにおすすめの小説
【完結】無口な旦那様は妻が可愛くて仕方ない
ベル
恋愛
旦那様とは政略結婚。
公爵家の次期当主であった旦那様と、領地の経営が悪化し、没落寸前の伯爵令嬢だった私。
旦那様と結婚したおかげで私の家は安定し、今では昔よりも裕福な暮らしができるようになりました。
そんな私は旦那様に感謝しています。
無口で何を考えているか分かりにくい方ですが、とてもお優しい方なのです。
そんな二人の日常を書いてみました。
お読みいただき本当にありがとうございますm(_ _)m
無事完結しました!
【完結】魔力ゼロと捨てられた私を、王子がなぜか離してくれません ――無自覚聖女の王宮生活――
ムラサメ
恋愛
伯爵家で使用人同然に扱われてきた少女、エリナ。
魔力も才能もないとされ、義妹アリシアの影で静かに生きていた。
ある日、王国第一王子カイルの視察で運命が動き出す。
誰も気づかなかった“違和感”に、彼だけが目を留めて――。
噂の悪女が妻になりました
はくまいキャベツ
恋愛
ミラ・イヴァンチスカ。
国王の右腕と言われている宰相を父に持つ彼女は見目麗しく気品溢れる容姿とは裏腹に、父の権力を良い事に贅沢を好み、自分と同等かそれ以上の人間としか付き合わないプライドの塊の様な女だという。
その名前は国中に知れ渡っており、田舎の貧乏貴族ローガン・ウィリアムズの耳にも届いていた。そんな彼に一通の手紙が届く。その手紙にはあの噂の悪女、ミラ・イヴァンチスカとの婚姻を勧める内容が書かれていた。
【完結】ありのままのわたしを愛して
彩華(あやはな)
恋愛
私、ノエルは左目に傷があった。
そのため学園では悪意に晒されている。婚約者であるマルス様は庇ってくれないので、図書館に逃げていた。そんな時、外交官である兄が国外視察から帰ってきたことで、王立大図書館に行けることに。そこで、一人の青年に会うー。
私は好きなことをしてはいけないの?傷があってはいけないの?
自分が自分らしくあるために私は動き出すー。ありのままでいいよね?
【完結】転生したらラスボスの毒継母でした!
白雨 音
恋愛
妹シャルリーヌに裕福な辺境伯から結婚の打診があったと知り、アマンディーヌはシャルリーヌと入れ替わろうと画策する。
辺境伯からは「息子の為の白い結婚、いずれ解消する」と宣言されるが、アマンディーヌにとっても都合が良かった。「辺境伯の財で派手に遊び暮らせるなんて最高!」義理の息子など放置して遊び歩く気満々だったが、義理の息子に会った瞬間、卒倒した。
夢の中、前世で読んだ小説を思い出し、義理の息子は将来世界を破滅させようとするラスボスで、自分はその一因を作った毒継母だと知った。破滅もだが、何より自分の死の回避の為に、義理の息子を真っ当な人間に育てようと誓ったアマンディーヌの奮闘☆
異世界転生、家族愛、恋愛☆ 短めの長編(全二十一話です)
《完結しました》 お読み下さり、お気に入り、エール、いいね、ありがとうございます☆
【完結】触れた人の心の声が聞こえてしまう私は、王子様の恋人のフリをする事になったのですが甘々過ぎて困っています!
Rohdea
恋愛
──私は、何故か触れた人の心の声が聞こえる。
見た目だけは可愛い姉と比べられて来た伯爵家の次女、セシリナは、
幼い頃に自分が素手で触れた人の心の声が聞こえる事に気付く。
心の声を聞きたくなくて、常に手袋を装着し、最小限の人としか付き合ってこなかったセシリナは、
いつしか“薄気味悪い令嬢”と世間では呼ばれるようになっていた。
そんなある日、セシリナは渋々参加していたお茶会で、
この国の王子様……悪い噂が絶えない第二王子エリオスと偶然出会い、
つい彼の心の声を聞いてしまう。
偶然聞いてしまったエリオスの噂とは違う心の声に戸惑いつつも、
その場はどうにかやり過ごしたはずだったのに……
「うん。だからね、君に僕の恋人のフリをして欲しいんだよ」
なぜか後日、セシリナを訪ねて来たエリオスは、そんなとんでもないお願い事をして来た!
何やら色々と目的があるらしい王子様とそうして始まった仮の恋人関係だったけれど、
あれ? 何かがおかしい……
契約結婚の相手が優しすぎて困ります
みみぢあん
恋愛
ペルサル伯爵の婚外子リアンナは、学園に通い淑女の教育を受けているが、帰宅すれば使用人のような生活をおくっていた。 学園の卒業が近くなったある日、リアンナは父親と変わらない年齢の男爵との婚約が決まる。 そんなリアンナにフラッドリー公爵家の後継者アルベールと契約結婚をしないかと持ちかけられた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる