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王子様はご立腹。
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夜会の剣呑な空気も知らず、リリーは隣室でお茶会の雰囲気を楽しんでいた。
なにしろ、ジェシー以外の令嬢とお茶会をしたことのなかったリリーである。
20名もの令嬢達と輪になって話すのは緊張するが、隣にはジェシーも居る為、ワクワクする気持ちの方が勝っていた。
リリーは思い切って自分から話しかけようと試みたが、令嬢の名前を知らないことに気付いてしまった。
尋ねようかとも思ったが、ここは先に名乗るのが礼儀かと考え直し、徐に立ち上がった。
「リリー・スペンサーと申します。こういう場は不慣れで申し訳ございません。仲良くしていただけると嬉しいです。」
ペコッとお辞儀をしたリリーに、拍手と笑い声が起きた。
「ふふっ、リリー様を知らない者なんてこの場にはおりませんわ。本当にリリー様って可愛らしい方ですのね。」
「せっかくリリー様が自己紹介をして下さったのですから、私達も致しましょう。爵位はとりあえず置いておいて、ジェシー様からお隣に順番にというのはいかが?」
「それはいいですわ。名前だけでも覚えていただけたら嬉しいですもの。」
こうして、極めて和やかにお茶会は進んでいった。
リリーが料理をすることを聞き付けていた令嬢が、リリーのミルクスープを飲みたいと言ったことで、今度皆で料理の会を開くことになったり、リリーの好きな恋愛小説の話をしたり・・・
「実は内緒なのですが、うちの兄が小説を書いておりますの。『王子様との秘密の恋愛』という本が少しだけ売れて・・・」
「『王子様との秘密の恋愛』!?持ってますわ。王妃様もお好きなのです!」
ある令嬢の暴露に、リリーはすぐさま食いついた。
もはやリリーの恋のバイブルとも言える小説の為、テンションが上がっていた。
「私も読みましたわ。続編の最後、口付けで終わるハッピーエンドが素敵でしたわ。」
感想を告げる令嬢の言葉で、リリーはふとラインハルトとのことを思い出してしまった。
そういえばハルト様、口付けの先がどうとか言ってましたよね。
先って結局なんなのでしょう?
つい考え込んでしまったリリーに、心配そうな声が聞こえた。
「リリー様?どうかなさいまして?」
優しく接してくれる令嬢達に気を許していたリリーは、せっかくなので尋ねてみることにした。
「あの、口付けの先って、皆様はご存知ですか?」
「リリー!!」
ジェシーが慌てて止めたが、噂好きの女の子達が、楽しそうな話題を聞き逃すはずもなく。
「まぁ、リリー様、口付けの先がどうなさったの?」
「ハルト様がそのようなことを仰っていたのですが、私はよくわからなくて。先があるのですか?」
きゃぁぁぁぁぁぁぁ!!!
部屋に悲鳴のような歓声が響き渡った。
「ラインハルト王子ってば、お優しい顔をなさってるのに、まぁ!!」
「やっぱり殿方ですものね。リリー様には特別なお顔を見せるのですわ。」
本日一番の盛り上がりを見せているが、リリーには意味がわからなかった。
ジェシーは「あの変態腹黒が・・・」と小声で罵り、令嬢達はリリーのうぶな発言に、「ミシェル様はリリー様が女を武器にしているなんて言っていたけれど、やっぱり嘘だったのね」と、リリーに更に好意を持った。
こうしてお茶会の熱気が最高潮の頃、夜会会場では。
ラインハルトが驚異の忍耐力で、笑顔をキープしていた。
その笑顔に勘違いをし、どんどん本性を現すナムール伯爵親子。
「お父様、私がラインハルト様に頼んで、すぐにお父様を侯爵にしていただきますわ。」
「はっはっは。それは心強いな。やっぱり持つべきは、都会育ちの洗練された美しい娘だな。」
馬鹿な親子は、いかに自分達がラインハルトや国王を侮辱しているかに気付いていない。
躊躇無くリリーを貶める言葉に、聞いているだけでも不快を感じ、皆顔をしかめている。
この場に留まるだけで、相当なストレスを感じた。
「ナムール伯爵、近々あなたとは個人的にお話ししたいことがあったんですよ。せっかくなので、今この場でお時間をいただいてもいいですか?」
ラインハルトが笑顔を張り付け、あえて丁寧に切り出した。
『王子が動いた!』
貴族達の間に緊張が走る。
「おおっ、それはそれは。娘との結婚ですか?それとも私の昇爵?どちらにしても構いませんとも。皆さんに証人になっていただきましょう。」
「そうですね。証人に・・・」
そこでラインハルトの顔付きが変わった。
今までの笑顔は消え失せ、温度のない冷たい目付きになった。
「父上、ここは僕に任せて下さいますか?」
「いいだろう。好きにやるが良い。」
国王がにやっと笑い、王妃が一つ頷いた。
許可を得ると、ラインハルトは手を叩き、叫んだ。
「証人をここへ!!」
いよいよラインハルトによる復讐が始まる。
なにしろ、ジェシー以外の令嬢とお茶会をしたことのなかったリリーである。
20名もの令嬢達と輪になって話すのは緊張するが、隣にはジェシーも居る為、ワクワクする気持ちの方が勝っていた。
リリーは思い切って自分から話しかけようと試みたが、令嬢の名前を知らないことに気付いてしまった。
尋ねようかとも思ったが、ここは先に名乗るのが礼儀かと考え直し、徐に立ち上がった。
「リリー・スペンサーと申します。こういう場は不慣れで申し訳ございません。仲良くしていただけると嬉しいです。」
ペコッとお辞儀をしたリリーに、拍手と笑い声が起きた。
「ふふっ、リリー様を知らない者なんてこの場にはおりませんわ。本当にリリー様って可愛らしい方ですのね。」
「せっかくリリー様が自己紹介をして下さったのですから、私達も致しましょう。爵位はとりあえず置いておいて、ジェシー様からお隣に順番にというのはいかが?」
「それはいいですわ。名前だけでも覚えていただけたら嬉しいですもの。」
こうして、極めて和やかにお茶会は進んでいった。
リリーが料理をすることを聞き付けていた令嬢が、リリーのミルクスープを飲みたいと言ったことで、今度皆で料理の会を開くことになったり、リリーの好きな恋愛小説の話をしたり・・・
「実は内緒なのですが、うちの兄が小説を書いておりますの。『王子様との秘密の恋愛』という本が少しだけ売れて・・・」
「『王子様との秘密の恋愛』!?持ってますわ。王妃様もお好きなのです!」
ある令嬢の暴露に、リリーはすぐさま食いついた。
もはやリリーの恋のバイブルとも言える小説の為、テンションが上がっていた。
「私も読みましたわ。続編の最後、口付けで終わるハッピーエンドが素敵でしたわ。」
感想を告げる令嬢の言葉で、リリーはふとラインハルトとのことを思い出してしまった。
そういえばハルト様、口付けの先がどうとか言ってましたよね。
先って結局なんなのでしょう?
つい考え込んでしまったリリーに、心配そうな声が聞こえた。
「リリー様?どうかなさいまして?」
優しく接してくれる令嬢達に気を許していたリリーは、せっかくなので尋ねてみることにした。
「あの、口付けの先って、皆様はご存知ですか?」
「リリー!!」
ジェシーが慌てて止めたが、噂好きの女の子達が、楽しそうな話題を聞き逃すはずもなく。
「まぁ、リリー様、口付けの先がどうなさったの?」
「ハルト様がそのようなことを仰っていたのですが、私はよくわからなくて。先があるのですか?」
きゃぁぁぁぁぁぁぁ!!!
部屋に悲鳴のような歓声が響き渡った。
「ラインハルト王子ってば、お優しい顔をなさってるのに、まぁ!!」
「やっぱり殿方ですものね。リリー様には特別なお顔を見せるのですわ。」
本日一番の盛り上がりを見せているが、リリーには意味がわからなかった。
ジェシーは「あの変態腹黒が・・・」と小声で罵り、令嬢達はリリーのうぶな発言に、「ミシェル様はリリー様が女を武器にしているなんて言っていたけれど、やっぱり嘘だったのね」と、リリーに更に好意を持った。
こうしてお茶会の熱気が最高潮の頃、夜会会場では。
ラインハルトが驚異の忍耐力で、笑顔をキープしていた。
その笑顔に勘違いをし、どんどん本性を現すナムール伯爵親子。
「お父様、私がラインハルト様に頼んで、すぐにお父様を侯爵にしていただきますわ。」
「はっはっは。それは心強いな。やっぱり持つべきは、都会育ちの洗練された美しい娘だな。」
馬鹿な親子は、いかに自分達がラインハルトや国王を侮辱しているかに気付いていない。
躊躇無くリリーを貶める言葉に、聞いているだけでも不快を感じ、皆顔をしかめている。
この場に留まるだけで、相当なストレスを感じた。
「ナムール伯爵、近々あなたとは個人的にお話ししたいことがあったんですよ。せっかくなので、今この場でお時間をいただいてもいいですか?」
ラインハルトが笑顔を張り付け、あえて丁寧に切り出した。
『王子が動いた!』
貴族達の間に緊張が走る。
「おおっ、それはそれは。娘との結婚ですか?それとも私の昇爵?どちらにしても構いませんとも。皆さんに証人になっていただきましょう。」
「そうですね。証人に・・・」
そこでラインハルトの顔付きが変わった。
今までの笑顔は消え失せ、温度のない冷たい目付きになった。
「父上、ここは僕に任せて下さいますか?」
「いいだろう。好きにやるが良い。」
国王がにやっと笑い、王妃が一つ頷いた。
許可を得ると、ラインハルトは手を叩き、叫んだ。
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