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敵にまわしてはいけない人。
しおりを挟むラインハルトの号令により、三人の男がそれぞれ騎士に連れられて入室してきた。
皆揃って覇気が無く、俯いている。
ナムール伯爵は何が始まるのか全く気付いていない様子だが、伯爵の取り巻き二人は、現れた男に見覚えがあるようで、すぐさま顔色を変えた。
それを見ていたラインハルトは、あえて伯爵だけに問いかける。
「ナムール伯爵。彼らに見覚えは?」
「さあ。存じませんな。」
伯爵の答えに、連れられてきた男の一人が顔を上げ、伯爵をキッと睨み付けた。
しかし、伯爵は本当に覚えがないのか、表情を変えることなく立っている。
ラインハルトは攻め方を変えることにした。
「話を変えましょう。最近二つの男爵家が、爵位を剥奪された件はご存知ですか?」
「それはもちろん。こう申してはなんですが、あれは性急にことを進めすぎたのでは?彼らに落ち度があったとは私には思えませんな。」
「ほう。あなたは国王の決定に異議があると仰るのですね?」
「いやいや、滅相もない。ただ、疑問が残ると申したまでです。」
強気な伯爵の言葉に、周りの貴族は息を飲んだ。
まさか、国王に楯突くようなことを平然とこの場で口にするとは。
もう王家と親戚になったつもりでいるらしい。
国王の様子をチラッと盗み見ると、苦虫を噛み潰したような顔をしている。
これはただではすまないと、貴族達が戦々恐々とする中、ラインハルトは楽しくなってきたのか、ニッと笑った。
「伯爵がここまで仰るのですから、私達も耳を傾けねばなりませんね。ねぇ、父上?」
「そうだな。」
不機嫌そうな声で、国王が答えた。
国王と王子に自分の言い分を認められたと思った伯爵は、満足そうに鼻を膨らませた。
「娘が嫁げば、身内となるのですから、このくらい大したことではありませんよ。」
「お父様、さすがですわ!」
わざと持ち上げられたことにも気付かず、ナムール伯爵親子は二人で喜びあった後、周囲を見下すように顎を上げて微笑んでみせた。
そんな親子を冷めた目付きで眺めていたラインハルトだったが、いよいよ嫌気が差したらしい。
「さてと。そろそろ茶番は終わりにしましょうか。私の可愛い婚約者を随分と馬鹿にしてくれましたからね。覚悟は出来ていますよね?」
怒りのオーラを隠すこと無く伯爵親子に向ければ、ようやく王子の異変に気付いたのか、伯爵が遠慮がちに言った。
「あの、ラインハルト王子?茶番とは?私はあなたの義理の父になる・・・」
「なりませんよ。」
伯爵に全てを言わさず、ラインハルトがキッパリと否定する。
「僕の婚約者は、愛するリリーただ一人だ。今日は可愛いリリーのお披露目の為に、皆に集まってもらったはずなのだが?」
ラインハルトが見回すと、状況を見守っていた貴族が頷いた。
「そうです。ラインハルト王子とリリー嬢の為の夜会です。」
「皆、お二人を祝福するために集まったのです。ナムール伯爵、あなた達の為ではない。」
「なんだと!?お前ら、覚えておけ!私が侯爵になったら・・・」
「だから、なりませんよ。」
貴族達に悪態をつくナムール伯爵に、再びラインハルトが苛立ちながら言い放った。
「あなた達親子は、僕達の婚約お披露目というこの場で、リリーを不当に傷付け、貶める発言をし続けた。しかも、王家を冒涜する発言もね。僕は決して許さないよ?」
全く目が笑っていない表情で、親子に向けて不敵に笑うラインハルトに、この人だけは敵にまわしてはいけないと、周囲は悟った。
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