【完結】田舎育ち令嬢、都会で愛される

櫻野くるみ

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リリーは領地経営のスペシャリスト?

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ラインハルトが見ていたことなど露知らず、リリーは無事に救出できたハンカチをチェックしていた。

うん、大丈夫!
破れてもいないし、綺麗なままだわ。

ハンカチを畳むと、まだポカンとした表情でリリーを見つめている令嬢に差し出した。

「どうぞ。お花の刺繍がとっても可愛いハンカチですね。」

微笑みながら差し出されたハンカチを、しばらくボーッと見ていた令嬢だったが、侍女に突つかれて我に返った。

「あ、ありがとうございます、リリー様。素晴らしい跳躍で、私感動して、あっ、お怪我はなさってませんか?母が刺繍してくれた大切なハンカチなんです!!」

焦って支離滅裂になりつつ、何度もお辞儀をするので、リリーは落ち着くように優しい声音で話す。

「まぁ、お母様が?お母様は刺繍がお得意なのですね。羨ましいわね、ジェシー。」

「そうね、私達のお母様は下手ではないけれど、ちょっと独特というか・・・」

萎縮している令嬢の気持ちをほぐそうと、ジェシーも冗談めかしてわざと顔をしかめてみせる。
ちなみに、リリーとジェシーの母親の刺繍は、モチーフが特殊すぎて、いつもあきれられている為、あながち嘘を言ったわけでもない。

そんな二人の会話に緊張が解けてきたのか、令嬢が思い切った様子で言った。

「あ、あの、私はセイラ・バーキンと申します。父は子爵を賜っております。それで、あの、お礼をさせて下さい!!」

リリーはもちろんお礼など受けとるつもりはなかったが、セイラの意志が案外固く、三人でランチをすることになった。


三人は食堂でも注目を浴びていたが、広いテラス席の端に移動すると、人目も気にならなくなった。

セイラもリリー達と同じく新入生だが、両親が領地へ行ってしまい、今は一人で屋敷に居るらしい。
入学した際に、御守りがわりに母親がハンカチをくれたそうだ。

「あら、それは心細いのではなくて?」

同情するジェシーに、セイラが力なく頷く。

「はい。私は元々人見知りをしてしまうので、お友達も出来なくて・・・」

しょぼんと肩を落としているセイラに、リリーとジェシーが顔を見合わせた。

「私達はもうお友達よね?こうして食事も一緒にとっているし。」

リリーが不思議そうに首を傾げる。

「ええ、新入生同士、仲良くしましょう!」

二人の言葉に、セイラは目をパチパチしている。

「え、身分も違いますけれど、よろしいのですか?」

「ふふっ、身分なんて所詮父親のものだもの。私達はただの同級生よ。」

「ジェシーったら良いこと言うわ!それではセイラ様、お友達として早速訊いてしまうけど、何か困ったことでも?」

リリーは、セイラの両親が領地に行っていると教えてくれた時のセイラの雰囲気に、ずっと違和感を感じていたのである。

最初は私事だと言い渋っていたセイラだったが、どうやら領地の経営がうまくいっておらず、両親が出向いているらしい。

「バーキン領って、王都から割と近くて、日帰りでも行ける場所よね?お花畑がある・・・」

「そうなんです!お花しかないんです!!」

リリーはそれはそれで素敵だと思ったが、セイラの家にとっては収入が減ってしまい、切実な問題らしい。

「リリー様は、酪農を学んでいらっしゃって、領地を発展させたスペシャリストだと噂になっております。何かアドバイスがあればぜひ!!」
 
え?
私がスペシャリスト?
初耳だし、誰がそんなデタラメ・・・

隣でジェシーが噴き出すのを堪えている。

「ちょっとジェシー、笑わないでよ!私だって初めて聞いたし、そんな力、私にはな・・・」

そんな力、私にはないと言おうとしたが、セイラの必死な表情を見たらリリーは続きが言えなくなってしまった。

考えておく約束をして、その場はひとまず解散した。
お昼休みが終わってしまったからである。
しかしこの話が、この後予想をしない方向に進んでいくのであった。


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