【完結】田舎育ち令嬢、都会で愛される

櫻野くるみ

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王家の女子会と恋人の鐘。

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セイラと知り合った日、リリーは授業の後、王宮に立ち寄っていた。
今日は王子妃教育がお休みで、王妃達とお茶をする約束をしていたからである。

メンバーは王妃、リリーの他に、王太子妃ソフィア、第2王子婚約者イザベラの四人だ。
リリーは、近い将来親戚となる予定の三人に、始めは少なからず緊張をしていたのだが、彼女達はすでにリリーを義娘、義妹だと認識しているらしく、お茶会は賑やかに始まった。

「リリーちゃん、学院はどう?ラインハルトがいつもベッタリとくっついていて、邪魔ではなくて?」

王妃が哀れむように眉を寄せながら訊いてきた。
ソフィアとイザベラまで、苦笑しながらリリーを思い遣る表情を見せる。
皆、自分達も経験済みだと言わんばかりの顔だ。

「いえ、そんな。ハルト様は一歩引いて見守ってくれている感じです。おかげでお友達も増えました。」

リリーが否定すると、三人は驚き、顔を寄せて囁きあっている。

「いったいどういう風の吹き回しかしら?」

「何かの作戦の一種でしょうか。」

「あ、アレかもしれませんわ!ほら、夜会の時、リリーちゃんが隣室のお茶会が楽しかったってラインハルト様に報告してた時の、ラインハルト様の顔!!」

「あ、それだわ、イザベラちゃん!お義母様、ほらラインハルト様が嬉しそうにリリーちゃんの話を聞いていて。」

「なるほどね。ラインハルトの今のブームは、可愛く報告してくるリリーちゃんを観察することなわけね。だからあえて少し離れて・・・」

こそこそと話す三人を、リリーは不思議そうに眺めていた。

ブームって何かしら?
ハルト様は、あまり人前ではベッタリなんてしないもの。
馬車の中ではいつも距離が近いけれど。

リリーが思い出して赤面していると、ヒソヒソ話が終わったらしい王妃から発表があった。

「今日はね、リリーちゃんに王子妃試験の話を伝えようと思って。」

「王子妃試験?」

リリーは初めて聞いた内容にビックリし、思わず聞き返していた。

試験があったなんて!
私でも合格出来るものかしら?

不安そうなリリーを安心させるように、王妃がリリーの頭を撫でた。

「試験というか、課題をやってもらうことになっているの。恒例でね。ソフィアちゃんとイザベラちゃんも合格したのよ。」

二人がリリーを励ますように頷いている。

「課題というのはどんなものなのでしょうか?」

「何でもいいのだけれど、ざっくり言うと、国の発展の為に何かするということね。」

ざっくりし過ぎていて、意味がわからないです・・・

ますます動揺するリリーを落ち着かせるように、ソフィア達も話に加わった。

「大丈夫よ、リリーちゃん!!私は新しい飼料を開発しただけよ。」

「私は畜産の流通経路の改善を。」

ん?飼料?畜産??

リリーは王宮や王都内での課題と勝手に想定していたので、予想外の内容に少し怪訝そうな顔をした。
すると王妃が説明してくれた。

「ソフィアちゃんの実家は穀物を作っているのよ。イザベラちゃんの家は畜産業。主に豚ね。」

「えええええっ!!そうだったのですか?もしかしてソフィア様の開発された飼料って、あの配分が画期的な飼料ですか?スペンサー領も仕入れている・・・」

ソフィアが嬉しそうに笑った。

「そうなのよ。開発はしてみたものの流通するか心配していたら、スペンサー家の領主の娘が気に入ったから、大量に欲しいって言われて。リリーちゃんのことだったのよね。」

まさか、こんなところで繋がりが!!
飼料が変わって、ミルクの質も量も劇的に変わったのに!!

リリーは大興奮である。

「あの飼料のおかげで、牛達の体調がよくなったんです!しかも、イザベラ様の家がまさか畜産を営んでいたなんて!親近感を感じてしまいます!!」

「そうなの。結果的に、うちの子達のお嫁さんは、この国の『食』を支えてくれている地域出身なの。ありがたいことだわ。よく勉強しているから、頼りになるし。」

王妃が感慨深そうに言った。
やっぱり王妃はこの国の安定を誰よりも考えているらしい。

そんな中、リリーは自分に何が出来るかを考えてみた。

うーん、うちの領地は改善の余地はまだ大いにあるけど、早めに結果を出すとなると難しいわね。
セイラ様の領地なら試してみたいこともあるけれど・・・
ん?
これっていい案かも?

リリーは今日相談されたことを三人に話してみた。


「という訳で、領地の改善方法のアドバイスをお願いされたところだったんです。全然スペシャリストじゃないのですけど・・・」

三人は愉快そうに笑っていたが、王妃が壁の側に立っていたメイドに合図をした。
彼女はすぐさま地図を持って現れ、他のメイドが紅茶を脇に避けた。

「とっても面白いと思うわ。領地の経営建て直しの例になるし。」

「でも一つの領地に肩入れするみたいで、あまりよくないですよね?」

心配するリリーに、ソフィアも王妃に同調した。

「あくまでモデルケースとして考えれば平気じゃないかしら。良い見本となれば、他の土地も真似するだろうし。」

イザベラも頷いている。

「バーキン領はここでしょう?リリーちゃんはどんなことを考えているの?」

「今日言われたばかりなので、まだこれから具体的に考えますが、お花畑を生かすべきだと思っています。公園として整えて、入園料をとったり、屋台を出したり、お花を使ったお土産物を作ったり。日帰りが出来るそうなので、最終的には王都に近いデートスポットとか、プロポーズ場所になれば、若い観光客が増えるかなと。」

とりあえず思い付いたことを言っただけだったが、三人は満足げに微笑んでいた。

「さすがスペシャリストね!いいところをついていると思うわ。」

「だったら私、作って欲しいものがあるわ!小説に出てきた、『恋人の鐘』を作るのはどう?」

イザベラの発案にリリーも飛び付いた。

「『王子様との秘密の恋愛』のあのシーンですね!?私、あの場面大好きなんです。早速作者に許可をもらってきます!」

この前のお茶会の令嬢に連絡してみましょう。
普通の会話だったのに、情報ってどこで役に立つかわからないものね。
人気の小説だから、もし鐘ができたら集客力は抜群のはず!!
セイラ様にも、思っていたより大事になってしまうけれど、王子妃試験の課題に領地を使わせて欲しいと頼まないと。

その後も王家の女子会は大いに盛り上がり、リリーの課題のはずが、気付けば皆で意見を出し合っていた。



次の日、リリーを迎えに来たラインハルトは、お転婆ジャンプを学院で披露したリリーにお仕置きをしようと考えていたのだが・・・

「え?恋人の鐘?一緒に鳴らすの?僕とリリーで?」

「はい!最初の一組目に私達がなれば、観光地として有名になるって王妃様が。あの、その鐘を鳴らした二人は永遠に結ばれるんです。」

照れながらも、一緒に鳴らして欲しいとお願いするリリーに、お仕置きのことなど当然吹っ飛び、ラインハルトがリリーを抱き締めたのは言うまでもない。

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