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民衆がセガールに言われた通りに大人しく待っていると、司祭のクラウスが壇上に現れた。
「皆さん、この土も少量混ぜれば辺りが浄化されるので、同じ場所ではなく、広範囲に少しずつ撒いて下さいね。水もそうですが、周囲の住民にも配って、町ごとどんどん浄化を進めていきましょう。」
「わかりました!!ありがとうございました!!」
クラウスの出現で我に返ったアンリとディランも、重そうにしながらも笑顔で帰っていく人々を見送った。
「兵達に町を回らせ配給を行うつもりだったが、随分仕事が片付いたな。」
「そうですね、短時間で済んでしまいましたね。来られなかったり、知らなかった民の為に、細かく確認しながら人を回らせますが、人手も持参する量も大幅に削減出来そうです。」
「そうだな。極端なことを言えば、城から持参していかなくても、今分け与えた水や土から増やした分をもらい、次の町に持って行けばいつかは全土が浄化されるからな。」
全土か。
そういえば、この国って広いのかしら?
アンリは召喚されてからまだ王宮から出たことがなく、国の地理や国民の数など、基本的なことを知らなかった。
「この国、グランダースは広いのですか?」
国王と司祭の会話を遮るのは申し訳なかったが、アンリは尋ねてみた。
「それなりに広いですね。もっと大きな国もありますが、文明、商業、農業、武力、人口など、どれもバランス良く栄えていました。」
「ああ、数年前まではな。今は見る影もないが。しかも、この機会に虎視眈々とグランダースを狙う国もある。」
「では、早く国の端まで水や食料に困らないようにしないといけませんね。」
アンリが、国の端まで行くにはどれくらいの時間がかかるのか疑問に思っていた時だった。
「それは俺に任せろ!!」
まだこの場に残って指示を出していたセガールの声がした。
「とりあえず王宮周辺の町は、明日中にはなんとかなりそうだ。町の連中が協力的だから、放っておいても行き渡るだろう。確認はさせるがな。その他の地域は、遠征の部隊を編成中だ。復帰した奴らも多いし、人手は足りてる。」
さすが、セガールさん。
私の考え付く心配事なんて、もうとっくに解決に向けて動いていました。
「頼もしいですね。では、私はアンリ様の水や土を更に増やしておきましょう。いくらあっても困りませんからね。」
「ああ、遠征部隊に持たせる分を頼む。」
クラウスの言葉にディランが賛成した為、クラウスとセガールは先に城へ戻っていった。
「アンリ、昨日、俺が試して欲しいと言ったことなんだが。」
「はい!!何をしますか?」
アンリはディランに連れられ、城からほど近い、とうもろこし畑にいた。
奥に見えるのは小麦畑のようだ。
「このとうもろこしや小麦は、家畜に与える飼料にも使っている。今日はアンリに養鶏場と牛舎を見てもらいたいのだが、餌の状況も知っていたほうが早いと思って寄ってみた。」
なるほど、鶏や牛の状態はまだ知らないけれど、この餌を食べているんじゃ相当弱っているのでは?
とうもろこしの粒が小さすぎて、食べるところがなさそうだもの。
この畑はまだ私の土を加えていないみたいだし、今から動物達に会いに行くなら、美味しい餌を持っていってあげたいな。
アンリは昨日のように、とうもろこし畑の土に触れ、祈った。
とうもろこしがみるみるうちに育ち、重そうなとうもろこしが生った。
試しにディランが収穫し、剥いてみると、大きな粒がぎっしり揃った美味しそうなとうもろこしが姿を現した。
「面白いほど見事なとうもろこしだな。鶏達が喜びそうだ。アンリ、疲れていないか?」
「問題ありません!小麦もちゃちゃっと収穫しちゃいましょう!」
小麦も無事収穫出来たので、まずは鶏に会いに行く。
「ディラン様、鶏達が全然動かないのですけど、大丈夫なのでしょうか?」
思っていたよりひどい状態に、アンリは泣きそうになってしまう。
覇気のない鳴き声がたまに聞こえるが、餌を食べる元気が残っているのかさえ心配になってくるほどだ。
アンリはほぐしたとうもろこしを容器に入れると、鶏に近付く。
「アンリ、気を付けろよ!」
ディランが心配するが、今の鶏にはアンリをつつく元気など無いだろう。
「鶏さん、食べたら元気になるから、お願いだから食べて。」
アンリが心から言うと、一羽が首を持ち上げ、とうもろこしを一粒啄んだ。
クッ?クルッ?
コケー!!
元気に鳴いた。
その一羽が引き金となり、他の鶏達もこぞって餌を食べ始める。
ディランは、聖なる水を与えて回った。
コケッ!!
コケーコー!!
鳴き声の大合唱が始まり、養鶏場は一気に騒々しくなった。
しかも、飼育員が何かに気付き、突然叫んだ。
「大変です!一斉に卵を産み出しました!!」
ここ最近はほぼ産むことのなかった卵が、あちらこちらで産み落とされている。
「もう何も驚かないと思っていたが、アンリはいつも俺の予想を上回ってくるな。」
ディランが卵を拾いながら、アンリに微笑んだ。
「皆さん、この土も少量混ぜれば辺りが浄化されるので、同じ場所ではなく、広範囲に少しずつ撒いて下さいね。水もそうですが、周囲の住民にも配って、町ごとどんどん浄化を進めていきましょう。」
「わかりました!!ありがとうございました!!」
クラウスの出現で我に返ったアンリとディランも、重そうにしながらも笑顔で帰っていく人々を見送った。
「兵達に町を回らせ配給を行うつもりだったが、随分仕事が片付いたな。」
「そうですね、短時間で済んでしまいましたね。来られなかったり、知らなかった民の為に、細かく確認しながら人を回らせますが、人手も持参する量も大幅に削減出来そうです。」
「そうだな。極端なことを言えば、城から持参していかなくても、今分け与えた水や土から増やした分をもらい、次の町に持って行けばいつかは全土が浄化されるからな。」
全土か。
そういえば、この国って広いのかしら?
アンリは召喚されてからまだ王宮から出たことがなく、国の地理や国民の数など、基本的なことを知らなかった。
「この国、グランダースは広いのですか?」
国王と司祭の会話を遮るのは申し訳なかったが、アンリは尋ねてみた。
「それなりに広いですね。もっと大きな国もありますが、文明、商業、農業、武力、人口など、どれもバランス良く栄えていました。」
「ああ、数年前まではな。今は見る影もないが。しかも、この機会に虎視眈々とグランダースを狙う国もある。」
「では、早く国の端まで水や食料に困らないようにしないといけませんね。」
アンリが、国の端まで行くにはどれくらいの時間がかかるのか疑問に思っていた時だった。
「それは俺に任せろ!!」
まだこの場に残って指示を出していたセガールの声がした。
「とりあえず王宮周辺の町は、明日中にはなんとかなりそうだ。町の連中が協力的だから、放っておいても行き渡るだろう。確認はさせるがな。その他の地域は、遠征の部隊を編成中だ。復帰した奴らも多いし、人手は足りてる。」
さすが、セガールさん。
私の考え付く心配事なんて、もうとっくに解決に向けて動いていました。
「頼もしいですね。では、私はアンリ様の水や土を更に増やしておきましょう。いくらあっても困りませんからね。」
「ああ、遠征部隊に持たせる分を頼む。」
クラウスの言葉にディランが賛成した為、クラウスとセガールは先に城へ戻っていった。
「アンリ、昨日、俺が試して欲しいと言ったことなんだが。」
「はい!!何をしますか?」
アンリはディランに連れられ、城からほど近い、とうもろこし畑にいた。
奥に見えるのは小麦畑のようだ。
「このとうもろこしや小麦は、家畜に与える飼料にも使っている。今日はアンリに養鶏場と牛舎を見てもらいたいのだが、餌の状況も知っていたほうが早いと思って寄ってみた。」
なるほど、鶏や牛の状態はまだ知らないけれど、この餌を食べているんじゃ相当弱っているのでは?
とうもろこしの粒が小さすぎて、食べるところがなさそうだもの。
この畑はまだ私の土を加えていないみたいだし、今から動物達に会いに行くなら、美味しい餌を持っていってあげたいな。
アンリは昨日のように、とうもろこし畑の土に触れ、祈った。
とうもろこしがみるみるうちに育ち、重そうなとうもろこしが生った。
試しにディランが収穫し、剥いてみると、大きな粒がぎっしり揃った美味しそうなとうもろこしが姿を現した。
「面白いほど見事なとうもろこしだな。鶏達が喜びそうだ。アンリ、疲れていないか?」
「問題ありません!小麦もちゃちゃっと収穫しちゃいましょう!」
小麦も無事収穫出来たので、まずは鶏に会いに行く。
「ディラン様、鶏達が全然動かないのですけど、大丈夫なのでしょうか?」
思っていたよりひどい状態に、アンリは泣きそうになってしまう。
覇気のない鳴き声がたまに聞こえるが、餌を食べる元気が残っているのかさえ心配になってくるほどだ。
アンリはほぐしたとうもろこしを容器に入れると、鶏に近付く。
「アンリ、気を付けろよ!」
ディランが心配するが、今の鶏にはアンリをつつく元気など無いだろう。
「鶏さん、食べたら元気になるから、お願いだから食べて。」
アンリが心から言うと、一羽が首を持ち上げ、とうもろこしを一粒啄んだ。
クッ?クルッ?
コケー!!
元気に鳴いた。
その一羽が引き金となり、他の鶏達もこぞって餌を食べ始める。
ディランは、聖なる水を与えて回った。
コケッ!!
コケーコー!!
鳴き声の大合唱が始まり、養鶏場は一気に騒々しくなった。
しかも、飼育員が何かに気付き、突然叫んだ。
「大変です!一斉に卵を産み出しました!!」
ここ最近はほぼ産むことのなかった卵が、あちらこちらで産み落とされている。
「もう何も驚かないと思っていたが、アンリはいつも俺の予想を上回ってくるな。」
ディランが卵を拾いながら、アンリに微笑んだ。
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