ショボい魔法しか使えない私が、魔法のない世界に召喚されたら崇め奉られてます

櫻野くるみ

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罪深い家族

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翌朝、早い時間から広場には村人が集まりだした。
その中にはもちろん、アンリの無事を願うマイクやアンリのクラスメイト達の姿もある。
一度解散してからまだ数時間しか経っておらず、皆疲れの残った顔をしていたが、それよりアンリの安否のほうが心配だった。
やはりと言うべきか、アンリの家族は広場に来てはいない。

神父が昨夜とは別の場所を担当できるように捜索範囲に村人を配置していると、アンリの担任が森を通って出勤してきた。
アンリが行方不明になっていることを説明し、心当たりを尋ねるが「そんなものはない」と素っ気なく言われてしまう。
少しも胸を痛める様子が無いことに、神父は腹立たしさを覚えた。

「先生、あなたがアンリに対して特別厳しい態度をとっていたのは何故ですか?」

「は?なんのことでしょう?まさか神父様は、私のせいでアンリがいなくなったとでも?」

鼻で笑いながら馬鹿にするような言い方に、マイクも黙ってはいられなかった。

「先生はアンリが虐められても、雑用を押し付けられても、全部見ないふりだったじゃないか!しかもキツイ言葉を言ったり、自分の仕事まで雑用と言ってやらせていたくせに!!」

食って掛かったマイクに、教師は冷たい瞳を向けた。

「何を言っているんだ?あんな魔力の乏しい、出来損ないの生徒なんて、せめて雑用でもやらせなければ将来使い道がないだろう」

「ひどい・・・」

「生徒の能力を伸ばす為の教師が言うことか?」

会話を聞いていた村人が眉をひそめた。
非難の視線が自分に注がれていることに気付いた担任は、「失礼する」と言うと、逃げるように学校へと去っていった。

「神父様、僕あいつも許せない!!」

担任の後ろ姿を睨み付けながら憤るマイクを、神父が慰めた。

「大丈夫ですよ、私に任せて下さい。教育連盟には私から通告しておきます」

教師は教育連盟に登録し、各学校に派遣される為、あの教師は何かしらのペナルティを受けることになるだろう。

その後、アンリの家族が現れないまま捜索は再開されたが、森の中でもなんの痕跡も見つからなかったので、やはりアンリはまだ村の中に留まっているという結論に至った。

「村の中ったって、もう探す場所なんて残ってないだろ?」

「ねえ、本当にアンリちゃんは納屋から逃げたのかしら?鍵がかかっていたのに?」

「そうなんだよな。そもそもが無理なんだよ。他に出入口もないのにどうやって出られたんだ?出られたとして、鍵も持たずにどうやってまた鍵をかけたんだ?」

再び広場に戻ってきた村人達は頭を捻るが、やはり一つの結果に考え付いてしまう。

「やっぱり言いたくはないけど、あの両親と兄はおかしいと思う」

「うん、私も。今も探しに来ていないのが何よりの証拠なんじゃないかしら?行き先を知っているなら、探すのは無意味だもの」

「確かに!」

「そうね!」

口々に家族が怪しいと騒ぎ出すが、今度は神父も止めることはなかった。
彼も家族を一番怪しんでいたからである。

「皆さん、こうなった以上、アンリの家族にもう一度話を聞くしかなさそうです。私は今からアンリの家へ向かいます」

神父が決意の籠った顔で告げると、捜索参加者は賛成し、全員が付いて行くと言ってきかなかった。

「僕達も邪魔をしないから連れていって下さい!アンリが心配なんだ・・・」

クラスメイトの子供達も強い眼差しで懇願した為、皆でアンリの家へ足早に進む。


アンリの家の扉をノックすると、まず寝起きの母親が顔を出した。

「なんですか?まだ朝なのに、大勢で非常識じゃないの?」

自分の娘の捜索に参加もせず、まだ寝ていた上にひどい台詞まで吐いた母親に、神父らは開いた口が塞がらない。
父親と兄も起き出してきた。

「おいおい、また押しかけて何だっていうんだ?迷惑だな」

「もしかしてまだ探しているんですか?ぷっ、みんな暇だなぁ」

二人の無神経な発言に、いい加減怒り心頭の神父が代表して強い口調で尋ねた。

「あなた方は、アンリの行方を知っていますね?どこに隠しているんですか!早くアンリを出しなさい!!」

そうだそうだ!と村人が叫ぶが、父親はニヤニヤ笑いながら平然と答える。

「そんなこと俺達が知るわけがないだろう。育ててやった恩も忘れて、あいつが勝手にいなくなったんだから。隠してるなんて、証拠でもあるのか?」

「この家に居なければ、私達はあなた方がアンリを手にかけた可能性も考えなければなりません。虐待をしていたのですから、動機は充分です。考えたくもありませんが、川に流してしまえば痕跡も残らないでしょうしね。さあ皆さん、この家を隅々まで徹底的に調べますよ!」

「「「おおおーーーっっ!!」」」


当然だが結局アンリは見つからず、神父は国の事件を取り扱う治安庁へとアンリの家族を通報したのだった。


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