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疑惑の矛先
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アンリは、かつて住んでいた村から遥かに遠い異世界で、今まさに一国の女王になろうとしていた。
温かい人々に囲まれて送る充実した日々が、家族や故郷での辛い思い出を塗り替えていくのを実感し、次第に村のことを思い出すことも減っていた。
時を同じくして、アンリの生まれ故郷は、未だにパニックのさなかにあった。
村人が総出で村の隅々まで探しても、アンリの姿がどこにも見つからないのである。
アンリはグランダースに召喚されているのだから、村の中に居なくて当然なのだが、残念ながらその事実を知る者はおらず、村人はただひたすらにアンリを探し回った。
ちなみにこちらの村とグランダースでは時間の流れが異なる為、アンリが村から姿を消してから、こちらではまだ半日ほどしか経過していない。
最初は『狭い村だし、すぐに見つかるだろう』と楽観視していた者達にも、次第に焦りの色が濃く見え始めた。
村の中にアンリが行きそうな場所など限られている。
ましてやマイクと会話をし、神父を呼んで戻るまでにさほど時間は経っていないのだ。
アンリの失踪が判明してから探し回ること数時間、村人にも疲れが見え始めたので、捜索を一旦中断し、解散することに決まった。
陽が出てからのほうが明るくて効率的なのと、もしかしてアンリが何処かで疲れて眠ってしまった可能性もある。
目覚めてアンリが出てきてくれればいいのにとマイクは願っていた。
翌朝再度村の中と、まだ手付かずの森を男達で探し、アンリの担任の教師から話を訊くことにした。
担任は村には住んでおらず、村の外から通いでやってくる為、アンリの失踪をまだ知らない。
担任のアンリに対する態度には問題があるとわかった今、一度しっかり話す必要がある、
「みなさん、ひとまずお疲れさまでした。一度体を休めて、また陽が昇ったら改めてお願いします」
神父が労いながら声をかけて回ると、無念さや心配そうな表情を浮かべた村人達は大人しく従い、それぞれの家路につこうと別れの挨拶を交わした。
「お疲れ様。またあとでな」
「大丈夫、きっと明るくなったら見つかるわ」
そんな中、アンリの両親と兄は、自分達の大切な家族が見つからないにも関わらず、まるで他人事のように肩を竦めながら立ち去ろうとしていた。
力を貸してくれている人々へのお礼はおろか、舌打ちをしながら悪態をついている。
「なんで俺らがこんなことを・・・」
「本当に腹の立つ娘だわ。きっと私達に対する当て付けのつもりで隠れているに違いないわ」
「あー、かったるい。あいつが居なくても別に構わないのにさ」
同じ血が通った家族の台詞や行動とはとても思えず、たまたまその場で耳にした数名は、彼らの神経を疑い、そして勘繰った。
『こんなに探してもアンリの痕跡すら見つからないのはおかしくないか?まさか彼らがアンリに何かしたのでは?』
それまでの言動と態度が仇となり、アンリの家族に対する疑惑はどんどん膨んでいく。
それは伝染病のように徐々に村人達に広がり、一つの結論へと導かれていった。
それは考えるだけで恐ろしく、最初は口に出すことも躊躇していたが、やがて彼らは遠慮がちに言い出した。
「まさかとは思うんだけど・・・」
「いや、証拠はないが怪しいのは確かだ」
「納屋にアンリは居なかった。鍵がかかっていたのなら、鍵を開けてアンリを納屋から連れ出した人間がいるってことになる。それが出来るのは・・・」
絶対的に怪しいのはアンリの家族だ。
もしや、あの家族がアンリに手をかけたのではないか?
まさか!そんな恐ろしいことはないと信じたいが。
皆が同じ考えに行き着き、葛藤していることに気付いた神父は、冷静に話しかけた。
「憶測は再度捜索してからにしましょう」
神父もアンリの家族の態度には苛立ちと不審さを感じていたが、ひとまず村人達を諭す。
しかし、かったるそうに去っていくアンリの家族に対し、鋭い視線を送らずにはいられなかった。
温かい人々に囲まれて送る充実した日々が、家族や故郷での辛い思い出を塗り替えていくのを実感し、次第に村のことを思い出すことも減っていた。
時を同じくして、アンリの生まれ故郷は、未だにパニックのさなかにあった。
村人が総出で村の隅々まで探しても、アンリの姿がどこにも見つからないのである。
アンリはグランダースに召喚されているのだから、村の中に居なくて当然なのだが、残念ながらその事実を知る者はおらず、村人はただひたすらにアンリを探し回った。
ちなみにこちらの村とグランダースでは時間の流れが異なる為、アンリが村から姿を消してから、こちらではまだ半日ほどしか経過していない。
最初は『狭い村だし、すぐに見つかるだろう』と楽観視していた者達にも、次第に焦りの色が濃く見え始めた。
村の中にアンリが行きそうな場所など限られている。
ましてやマイクと会話をし、神父を呼んで戻るまでにさほど時間は経っていないのだ。
アンリの失踪が判明してから探し回ること数時間、村人にも疲れが見え始めたので、捜索を一旦中断し、解散することに決まった。
陽が出てからのほうが明るくて効率的なのと、もしかしてアンリが何処かで疲れて眠ってしまった可能性もある。
目覚めてアンリが出てきてくれればいいのにとマイクは願っていた。
翌朝再度村の中と、まだ手付かずの森を男達で探し、アンリの担任の教師から話を訊くことにした。
担任は村には住んでおらず、村の外から通いでやってくる為、アンリの失踪をまだ知らない。
担任のアンリに対する態度には問題があるとわかった今、一度しっかり話す必要がある、
「みなさん、ひとまずお疲れさまでした。一度体を休めて、また陽が昇ったら改めてお願いします」
神父が労いながら声をかけて回ると、無念さや心配そうな表情を浮かべた村人達は大人しく従い、それぞれの家路につこうと別れの挨拶を交わした。
「お疲れ様。またあとでな」
「大丈夫、きっと明るくなったら見つかるわ」
そんな中、アンリの両親と兄は、自分達の大切な家族が見つからないにも関わらず、まるで他人事のように肩を竦めながら立ち去ろうとしていた。
力を貸してくれている人々へのお礼はおろか、舌打ちをしながら悪態をついている。
「なんで俺らがこんなことを・・・」
「本当に腹の立つ娘だわ。きっと私達に対する当て付けのつもりで隠れているに違いないわ」
「あー、かったるい。あいつが居なくても別に構わないのにさ」
同じ血が通った家族の台詞や行動とはとても思えず、たまたまその場で耳にした数名は、彼らの神経を疑い、そして勘繰った。
『こんなに探してもアンリの痕跡すら見つからないのはおかしくないか?まさか彼らがアンリに何かしたのでは?』
それまでの言動と態度が仇となり、アンリの家族に対する疑惑はどんどん膨んでいく。
それは伝染病のように徐々に村人達に広がり、一つの結論へと導かれていった。
それは考えるだけで恐ろしく、最初は口に出すことも躊躇していたが、やがて彼らは遠慮がちに言い出した。
「まさかとは思うんだけど・・・」
「いや、証拠はないが怪しいのは確かだ」
「納屋にアンリは居なかった。鍵がかかっていたのなら、鍵を開けてアンリを納屋から連れ出した人間がいるってことになる。それが出来るのは・・・」
絶対的に怪しいのはアンリの家族だ。
もしや、あの家族がアンリに手をかけたのではないか?
まさか!そんな恐ろしいことはないと信じたいが。
皆が同じ考えに行き着き、葛藤していることに気付いた神父は、冷静に話しかけた。
「憶測は再度捜索してからにしましょう」
神父もアンリの家族の態度には苛立ちと不審さを感じていたが、ひとまず村人達を諭す。
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