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聖女、女王になる
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「アンリ、ハリーの言うことは気にするな。こいつは昔から冗談が過ぎるところがあるんだ。」
「ふふっ、もちろん冗談なのはわかっていますよ。ハリソン様、お食事の準備が整いましたので、ぜひ召し上がって下さい。」
「いや、私は本気で妻に・・・むごっ・・・」
ディランが手のひらでハリソンの口を押さえ、羽交い締めにしている。
本当に仲がいいのね。
良かった、さっきまでのわだかまりが消えて。
微笑ましい気持ちで二人を眺めながら配膳を手伝うアンリに、ディランとハリソンは笑顔を向けながら本気で牽制しあっていた。
「おい、ハリー!お前は何を急に言い出すんだ!!」
「邪魔をしないでくれ。ディランの妻じゃないなら、俺にもチャンスはあるだろう?」
「あるわけないだろう!お前にやれるか!!」
「ケチだなぁ。あ、グランタールの領土をディランに返すから、アンリ様をくれよ。」
「そんな簡単に大切な領土を返すな!!それに、アンリは物じゃないんだぞ!!」
すっかり以前の口調に戻った二人は、大真面目にアンリを取り合っているのだが、まるで兄弟がじゃれあっているようにしか見えなかった。
やがて争い疲れた二人は並んで食事を始めたが、食べている間も、遠くで兵達と語らいながらパンを補充しているアンリから目を離すことはない。
二人の強い視線に気付いたアンリが振り返った時、またしても唐突にハリソンが言い出した。
「素晴らしいことを思い付いてしまった!アンリ様、グランタールを治めて下さいませんか?もちろん私が常に隣で補佐を致しますので、ご安心を。アンリ様のお力で、我が国と我が民をお導き下さい。」
「「はぁっ??」」
意味がわからず反応が遅れたアンリより先に、ディランとセガールの素っ頓狂な声があがった。
正気か?と訊きたげな表情でハリソンを見ているが、グランダースの兵達からは大きな歓声が上がり、ハリソンも満足そうに頷いている。
兵の中でも一際大きな声を上げたのは、もちろん使者のダスティンだった。
「聖女様が女王になられるなら、私も聖女様にお仕え出来るということですよね!?不肖ながら、精一杯努めさせていただきます!!」
立ち上がりそう叫ぶと、一人感慨深そうに浸っているが、そもそもハリソンが勝手に言い出しただけである。
「ハリー、勝手に決めるな!グランタールの兵よ、もっと自国に誇りを持つべきだ。」
ディランが諭すように語りかけるが、久しぶりの食事とアンリの親しみやすい温かい雰囲気に、グランタール軍はすっかり魅入られてしまっていた。
「皆も賛成のようだし、次の王を任命する権利はこの俺にある。」
ハリソンはディランにきっぱりと言い返すと、アンリの前で懇願するように跪いた。
「アンリ様、我が国をお助け下さい。民は困窮し、辛い生活を強いられております。ぜひアンリ様のお力で、グランタールを恵みの国へ!!」
「アンリ、聞いては駄目だ!」
ディランが向こうから必死に怒鳴っているが、アンリの気がそちらに向いてしまわないように、ハリソンが潤んだ瞳でアンリの手をぎゅっと握りしめた。
ええと?
なんだか状況がよくわからないんだけれど、治めるとか女王ってなんのこと?
でもディラン様と仲の良い、ハリソン様の為だもの。
私に出来ることなら、いくらだって手助けはしたいわ。
「私の力がお役に立てるなら・・・」
「アンリ様、ありがとうございます!今日からアンリ様がグランタールの女王です!!」
ええっ!?
なんで私が女王に?
復興のお手伝いのつもりで了承しただけなのに。
アンリがオロオロしながらディランを見ると、ディランは頭を抱えてしゃがみ込んでいた。
「ふふっ、もちろん冗談なのはわかっていますよ。ハリソン様、お食事の準備が整いましたので、ぜひ召し上がって下さい。」
「いや、私は本気で妻に・・・むごっ・・・」
ディランが手のひらでハリソンの口を押さえ、羽交い締めにしている。
本当に仲がいいのね。
良かった、さっきまでのわだかまりが消えて。
微笑ましい気持ちで二人を眺めながら配膳を手伝うアンリに、ディランとハリソンは笑顔を向けながら本気で牽制しあっていた。
「おい、ハリー!お前は何を急に言い出すんだ!!」
「邪魔をしないでくれ。ディランの妻じゃないなら、俺にもチャンスはあるだろう?」
「あるわけないだろう!お前にやれるか!!」
「ケチだなぁ。あ、グランタールの領土をディランに返すから、アンリ様をくれよ。」
「そんな簡単に大切な領土を返すな!!それに、アンリは物じゃないんだぞ!!」
すっかり以前の口調に戻った二人は、大真面目にアンリを取り合っているのだが、まるで兄弟がじゃれあっているようにしか見えなかった。
やがて争い疲れた二人は並んで食事を始めたが、食べている間も、遠くで兵達と語らいながらパンを補充しているアンリから目を離すことはない。
二人の強い視線に気付いたアンリが振り返った時、またしても唐突にハリソンが言い出した。
「素晴らしいことを思い付いてしまった!アンリ様、グランタールを治めて下さいませんか?もちろん私が常に隣で補佐を致しますので、ご安心を。アンリ様のお力で、我が国と我が民をお導き下さい。」
「「はぁっ??」」
意味がわからず反応が遅れたアンリより先に、ディランとセガールの素っ頓狂な声があがった。
正気か?と訊きたげな表情でハリソンを見ているが、グランダースの兵達からは大きな歓声が上がり、ハリソンも満足そうに頷いている。
兵の中でも一際大きな声を上げたのは、もちろん使者のダスティンだった。
「聖女様が女王になられるなら、私も聖女様にお仕え出来るということですよね!?不肖ながら、精一杯努めさせていただきます!!」
立ち上がりそう叫ぶと、一人感慨深そうに浸っているが、そもそもハリソンが勝手に言い出しただけである。
「ハリー、勝手に決めるな!グランタールの兵よ、もっと自国に誇りを持つべきだ。」
ディランが諭すように語りかけるが、久しぶりの食事とアンリの親しみやすい温かい雰囲気に、グランタール軍はすっかり魅入られてしまっていた。
「皆も賛成のようだし、次の王を任命する権利はこの俺にある。」
ハリソンはディランにきっぱりと言い返すと、アンリの前で懇願するように跪いた。
「アンリ様、我が国をお助け下さい。民は困窮し、辛い生活を強いられております。ぜひアンリ様のお力で、グランタールを恵みの国へ!!」
「アンリ、聞いては駄目だ!」
ディランが向こうから必死に怒鳴っているが、アンリの気がそちらに向いてしまわないように、ハリソンが潤んだ瞳でアンリの手をぎゅっと握りしめた。
ええと?
なんだか状況がよくわからないんだけれど、治めるとか女王ってなんのこと?
でもディラン様と仲の良い、ハリソン様の為だもの。
私に出来ることなら、いくらだって手助けはしたいわ。
「私の力がお役に立てるなら・・・」
「アンリ様、ありがとうございます!今日からアンリ様がグランタールの女王です!!」
ええっ!?
なんで私が女王に?
復興のお手伝いのつもりで了承しただけなのに。
アンリがオロオロしながらディランを見ると、ディランは頭を抱えてしゃがみ込んでいた。
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