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ドッペルゲンガー編
⒉その場所
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驚く私の手を取った少女も、私と同じ顔で驚いた表情を浮かべていた。
手を取った状態のまま、固まること暫し。
「お嬢様、どうかなさいましたか?」
そんな声が聞こえ、少女の後ろにあったドアが外へと開き、そこから黒い燕尾服を着た青年が姿を見せた。
そして、座り込む少女と手を取ったままの私を確認すると、ピタッとその動きを止める。
信じられない、という顔をする青年から目の前の少女へと視線を移し、とりあえず立たせようとグッと体を引き上げた。
「ひゃっ」
全く自分と同じ顔から同じ声で、普段の自分からは想像できないような音を聞いた。
間違っても、私は「ひゃっ」なんて悲鳴はあげれない。そんな可愛げはないと自覚はある。
勢いが強過ぎたのか、こちらへ倒れ込んだ少女を受け止めて、まっすぐ立たせてやる。
「失礼しました。お怪我は?」
「え……えっと、だい、じょうぶ、です」
足元から観察して、ぱっと見は怪我がない事を自分の目でも確認する。
地面に倒れてしまったから、もしかしたら後ろは少し汚れてしまったかもしれない。せっかくの綺麗なドレス、本当に申し訳ないことをした。
未だ衝撃が抜けない少女と青年の様子だったけど、先に青年の方がハッと正気に戻ったようだ。
慌てて少女の方へと駆け寄ると、彼女を後ろへと庇い、私へと鋭い視線を向けた。
「貴様、何者だ⁉︎ お嬢様と同じ姿をしているが、まさか魔物の類か!」
「まもの……? すまない、それがどういったものかは分からないが、私も驚いているんだ。こちらに貴女方を害する気はない」
敵意はないと両手をあげるも、青年は依然として厳しい態度は崩さない。
まぁ、それもそうだ。全く知らない、しかも「お嬢様」という少女と同じ見た目の女が現れれば、私だって同じく疑うだろう。
それでも、私には彼らを害する気は本当に微塵もないし、出て行けというなら急いでここを後にする気だ。
「すぐに出て行く。勝手に入ってすまなかった」
「ならば、いますぐここから出て行け」
「一つだけ良いだろうか? ここはどこなんだ?」
「……何を言っている。ここはハイルシュタイン公爵家のお屋敷だ。知らないなど通らないぞ」
「ハイルシュタイン……公爵…?」
聞き馴染みのない言葉に首を傾げる。
もしかして、ここはどこかのテーマパークか何かなのか? 名前もそうだが、公爵なんて日本にはいない。
それに言葉が通じているのなら、ここは日本のはず。
少女は私と同じ顔をしているが……青年の方は、どうも日本人とは違う、西洋人の顔立ちをしている。髪は黒髪に近いが緑がかっているようで、瞳は銀色だった。
かなり日本語が上手いし、随分と長く日本にいる方なのだろう。
「すまない。私は誤って入ってしまったようなんだ。出口を教えてもらっても?」
「門ならお前の後ろの道を真っ直ぐだ。早く行け」
「そうか、ありがとう。あぁ、あとここは何県なんだ? 近所にこんな場所があるとは知らなかったもので」
「…………貴様、本当に何者だ? この辺りに暮らしていて、公爵邸を知らないなどありえない」
「ということは、かなり遠くに来てしまったのか……住所はどこなのだろう」
「アリアンタ地方の公爵私有地だ」
「あぁ、そうではなく。本当の住所の方を聞きたいんだ」
「さっきから何を言っている。エレスチャル王国アリアンタ地方、それ以外にない」
噛み合わない会話に、私と青年の眉間にシワが寄る。
しかし、青年の目から本気の敵意を感じ取って、私は思わずたじろぐ。
「こ、ここはどこかのテーマパークか何かではないのか?」
「てーまぱーく? なんだそれは」
「ならば、ここは本当に日本ではないと⁉︎」
私の狼狽ぶりを怪訝そうに見ながらも、青年はしっかりと頷いた。
手を取った状態のまま、固まること暫し。
「お嬢様、どうかなさいましたか?」
そんな声が聞こえ、少女の後ろにあったドアが外へと開き、そこから黒い燕尾服を着た青年が姿を見せた。
そして、座り込む少女と手を取ったままの私を確認すると、ピタッとその動きを止める。
信じられない、という顔をする青年から目の前の少女へと視線を移し、とりあえず立たせようとグッと体を引き上げた。
「ひゃっ」
全く自分と同じ顔から同じ声で、普段の自分からは想像できないような音を聞いた。
間違っても、私は「ひゃっ」なんて悲鳴はあげれない。そんな可愛げはないと自覚はある。
勢いが強過ぎたのか、こちらへ倒れ込んだ少女を受け止めて、まっすぐ立たせてやる。
「失礼しました。お怪我は?」
「え……えっと、だい、じょうぶ、です」
足元から観察して、ぱっと見は怪我がない事を自分の目でも確認する。
地面に倒れてしまったから、もしかしたら後ろは少し汚れてしまったかもしれない。せっかくの綺麗なドレス、本当に申し訳ないことをした。
未だ衝撃が抜けない少女と青年の様子だったけど、先に青年の方がハッと正気に戻ったようだ。
慌てて少女の方へと駆け寄ると、彼女を後ろへと庇い、私へと鋭い視線を向けた。
「貴様、何者だ⁉︎ お嬢様と同じ姿をしているが、まさか魔物の類か!」
「まもの……? すまない、それがどういったものかは分からないが、私も驚いているんだ。こちらに貴女方を害する気はない」
敵意はないと両手をあげるも、青年は依然として厳しい態度は崩さない。
まぁ、それもそうだ。全く知らない、しかも「お嬢様」という少女と同じ見た目の女が現れれば、私だって同じく疑うだろう。
それでも、私には彼らを害する気は本当に微塵もないし、出て行けというなら急いでここを後にする気だ。
「すぐに出て行く。勝手に入ってすまなかった」
「ならば、いますぐここから出て行け」
「一つだけ良いだろうか? ここはどこなんだ?」
「……何を言っている。ここはハイルシュタイン公爵家のお屋敷だ。知らないなど通らないぞ」
「ハイルシュタイン……公爵…?」
聞き馴染みのない言葉に首を傾げる。
もしかして、ここはどこかのテーマパークか何かなのか? 名前もそうだが、公爵なんて日本にはいない。
それに言葉が通じているのなら、ここは日本のはず。
少女は私と同じ顔をしているが……青年の方は、どうも日本人とは違う、西洋人の顔立ちをしている。髪は黒髪に近いが緑がかっているようで、瞳は銀色だった。
かなり日本語が上手いし、随分と長く日本にいる方なのだろう。
「すまない。私は誤って入ってしまったようなんだ。出口を教えてもらっても?」
「門ならお前の後ろの道を真っ直ぐだ。早く行け」
「そうか、ありがとう。あぁ、あとここは何県なんだ? 近所にこんな場所があるとは知らなかったもので」
「…………貴様、本当に何者だ? この辺りに暮らしていて、公爵邸を知らないなどありえない」
「ということは、かなり遠くに来てしまったのか……住所はどこなのだろう」
「アリアンタ地方の公爵私有地だ」
「あぁ、そうではなく。本当の住所の方を聞きたいんだ」
「さっきから何を言っている。エレスチャル王国アリアンタ地方、それ以外にない」
噛み合わない会話に、私と青年の眉間にシワが寄る。
しかし、青年の目から本気の敵意を感じ取って、私は思わずたじろぐ。
「こ、ここはどこかのテーマパークか何かではないのか?」
「てーまぱーく? なんだそれは」
「ならば、ここは本当に日本ではないと⁉︎」
私の狼狽ぶりを怪訝そうに見ながらも、青年はしっかりと頷いた。
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