「君と暮せば毎日がちょっといい日」

るみ乃。

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「炊飯器デビュー戦」(蒼汰視点)

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 帰ってきてすぐ、段ボールをビリビリ破った。
「おぉぉ……! 新品の匂いや! 見て悠真、ピカピカやで!」
「落ち着け、まだコンセントも刺してないから」
 呆れた顔しながらも、なんやろ……悠真、ちょっと笑ってる? そういうの見たら、余計テンション上がってまう。

「よし……まずは洗米やな! 俺、今日のために米研ぎマスターになるって決めてたから」
「……さっきまで米研ぎめんどいって言ってたくせに」

 ザルとボウルを行ったり来たりしてたら、バシャッと水がはねて、
 思わず「うわぁぁ冷たい!」って飛び跳ねた。
 次の瞬間、悠真がすっと背後からタオルを俺の首にかける。

「……ありがとう」
 声が自分でもわかるくらい近くなって、なんか胸が熱い。耳の先までポッてしてんの、絶対バレたくない。

「ほら、入れる水の量はこの線まで」
「分かってるって。俺な、説明書もちゃんと読んだもん」
「へぇ~、えらいじゃん」
 低く笑って、肩越しに覗き込まれた瞬間、手が止まった。
 距離……近い。もう結構一緒にいるのに……慣れへん…ドキドキする

「じゃあ炊飯ボタン押して」
「……押していいん? 俺、押すで? ポチッとな!」
 ピッと音がして、炊飯器が光る。

「おぉ……これが最新式の炊飯器の力……! なんか未来感あるぅ!」
「米炊いてるだけだよ」
「でもこれから俺らの毎日を支えてくれるやつやし、なんか感慨深いやん」
「……俺は。お前に支えられてるけど」
 ――……は? 急に何言ってんねん、この人。
「……アホちゃう」ってだけ返して、視線を逸らす。心臓が変な音してるのは、きっと湯気のせいや。

 炊けるまで、ソファで並んでテレビを見る。気づいたら片足が悠真の膝に乗ってて、でも悠真は直そうとしない。むしろ、手を置いてきたりして。……ずるい。

 そして――
「……きた! 炊けた! ほら悠真、開けるで?」
「いちいち実況するなよ」

 ふたを開けた瞬間、湯気と甘い香りに包まれる。
「うわぁ……ツヤッツヤや! 絶対うまいやつ!」
 茶碗によそって、一口。

「……んっ、やわらか……! めっちゃ美味しい!」
「ほらな? 俺の選択、大正解やろ」
「いや、炊飯器の性能だろ」
「でも、炊飯器選んだの俺やし?」
「……はいはい。じゃあ“蒼汰と炊飯器と、俺”の合作ってことで」

「……っ、なんで悠真まで入ってんねん」
「だって、お前の隣で食べるごはんじゃないと、美味しくないし」
 ――……うわ、直球や。湯気よりも顔が熱い。

 笑いながらおかわりをよそおうとしたら、悠真が俺の手を軽く包んできた。
 新品の炊飯器は、この部屋の一員になっただけじゃない。
 ……俺らの距離も、もっと近くなった。
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