「君と暮せば毎日がちょっといい日」

るみ乃。

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「おばあちゃんもお姉さんも、俺に甘すぎやん」(蒼汰視点)

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 風呂上がりのスモモは、ふわっふわ。ドライヤーのぬくもりが残るうちに、リビングのラグでコロリン。俺と悠真は両側から交互に撫でる。

「なぁスモモ、ええ匂いやろ? シャンプー“初恋ミント”やでぇ」
「クセ強い名前だな」

笑いながらも鼻先を寄せ、

「たしかに、すっきり甘い」。

のどかな空気の中――玄関から声。

「悠真、蒼汰も一緒?」
 
加奈さんや。

 開けた瞬間、焙煎コーヒーの香り。紙袋を抱え、にっこにこ。

「こんばんは! 今日カフェ開けてたん?」
「まぁね。はい、新作ガトーショコラと保温カフェオレ」
「いや、ほぼ毎日会うてるやん!」
「仕事ん時と家ん時は別。ね、悠真?」
「巻き込まないで」

…でも口元はゆるい。

 スモモが足元にすり寄る。
「綺麗にしてもらって…いい匂い。蒼汰くん、ありがとう」
「スモモがお利口さんやから、楽勝やった」
 
横から悠真が

「調子に乗ってる」。
「乗らせて?」

肘でつつくと、目だけで「後で覚えとけよ」といってくる
めっちゃ好き、そういうとこ。

 廊下からおばあちゃん登場。
「ほんと、ありがとねぇ。スモモも懐いて」
「こっちこそ光栄です」
「今日はお礼に寿司でも取りましょうか。」
「寿司、いいね、久しぶり」
 悠真の笑顔は、家族の前だと少し子供っぽくて新鮮や。

 寿司が並ぶ頃、話題は商店街へ。
「カフェ、新作桃のパフェ始まったの。蒼汰の店からも流れてきとる」
「カラー放置中に“パフェの亡霊”が呼ぶんよ」
「何それ」悠真が眉をひそめる。
「二人とも今度来なよ。一緒に暮らしてから、全然顔出さないじゃん」
「じゃぁ、家族割だよ、姉ちゃん」
「そんな制度ない」
「今できた」
 ――こういうやりとり、胸があったかくなる。
 もう“ごっこ”じやなくて、本当の家族に混ざってる感じ。

 ふと視線を上げると、悠真と目が合う。口角がわずかに上がる。

 大丈夫? 疲れてない?
 声にならんけど、そう聞かれたみたいで、胸が満たされる。

 食後、おばあちゃんが笑う。
「スモモ、蒼ちゃんの膝に頭のせとる」
 ほんまや。目ぇとろん。
「なつかれすぎやろ…」
 拗ねる悠真が可愛くて、
「交代しよ?」と膝を差し出すが、スモモは動かん。

「空気読めへんタイプやな」
「似てるね? 蒼汰に」
「俺、読まんの?」
「良い意味で、まっすぐだな」
 おばあちゃんまで頷く。

 まっすぐ。
 “家族の輪”に混ざってええんか不安やったけど、今は肩の力が抜けてる。ここで笑って、甘えていい。

 帰り際、加奈さんが耳打ち。
「うちの弟、笑わせてくれてありがとう」
「こっちこそ大事にしてもらってるよ」
「今度二人でカフェ来なよ、新作試食してもらいたいから」
「うん、悠真と一緒に行きます」

 エレベーター前、スモモが名残惜しそうに鼻を鳴らす。並んで歩く背中に家の灯りがつく。
 ――今日の“当たり前”に、ありがとう。次も同じ匂いと笑い声で。それが、いちばん好きや。
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