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「嫉妬は隠せない」
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静かな在宅ワークの日々だったはずが……
昼すぎ、作業の手を止めてコーヒーを淹れていたときだった。
「あっ、スマホ⁉」
テーブルに置きっぱなしの蒼汰のスマホが、ピコン、と鳴る。
……仕事用の連絡だろう。
そう思いつつも、つい視線が吸い寄せられる。
画面には短い文章。
「蒼汰、今日午後、最上さんから、蒼汰指名でカットとカラー入ったからよろしく」
そしてその下には、同僚の「サクちゃん」なる人物からのメッセージ。
しかも――中年のイケオジとのツーショット写真付き。
「……は?」
思わず声が出た。
仕事で撮った写真にしては、妙にくだけた空気だ。
なんで、職場の共有じゃなくて蒼汰の個人に?
なんだよこの“イケオジ?”。
コーヒーを持つ手が、気づかぬうちにぎゅっと力んでいた。
夕方、蒼汰が帰宅すると、俺はもう我慢できずに訊いてしまった。
「なあ……さっきスマホに来てたんだけど、あの“サクちゃん”って誰?」
「ああ?」蒼汰は靴を脱ぎながら首を傾げる。
「サクちゃんのこと? 同僚。あ、やっぱメッセ届いてた?」
「届いてたっていうか、勝手に見えただけだ」
俺が少し語気を強めると、蒼汰はにやっと笑って、わざとらしく眉を下げた。
「お、もしかして……悠真、やきもち?」
「ち、違っ……!」と言いかけて、口ごもる。
だって実際、胸の奥がざわついてるんだから否定しきれない。
蒼汰は俺の隣に腰を下ろし、スマホを見せてきた。
「ほら、この人。“最上さん”って常連のお客さん。サクちゃんの知り合いらしくって、最近よく『蒼ちゃんに切ってほしい!』って指名されるんだ」
「……で、なんで蒼汰に指名、サクちゃんがカットすればいいんじゃないのか?」
「んー、サクちゃん新人さんやから、まだカットとかできへんねん。だから俺がカットするとき一緒に勉強中ってやつ、やさしい先輩で俺めっちゃ好かれてるねん。」
蒼汰はけろっと言うけど、俺の胸のもやもやは消えない。
「……仕事なら、わざわざ個人に送る必要ないだろ」
「ぇぇ、悠真ってけっこうと独占欲強いんやん」
そう言って、蒼汰は俺のコーヒーカップを横取りし、勝手に一口飲んだ。
「ちょっ……」
「ほら、俺が゛サクちゃんに取られちゃうって思った?それとも…イケオジ?」
蒼汰の笑顔は悪戯っぽい。
その無邪気さに、余計に心がざわつく。
「……思ってない」
「ほんまぁ? そんじゃあ証明してみて」
蒼汰が俺に顔を近づける。
やけに真剣な目で、けど唇には笑みを浮かべながら。
「俺が誰のもんか、ちゃんと分からせて、なぁ悠真」
心臓が跳ね上がる。
やきもちなんて、蒼汰に言われたくないのに。
でも、その挑発に抗えなくて、俺は彼を引き寄せてしまった。
「……もう、ほんと調子に乗るなよ」
蒼汰は俺の腕の中で声を立てて笑った。
その笑い声を聞いて、胸のもやもやがようやくほどけていく。
やきもちを焼かされるのは悔しいけど。
その分、蒼汰の“俺のもの”を確認できるなら――
いいのかな……
昼すぎ、作業の手を止めてコーヒーを淹れていたときだった。
「あっ、スマホ⁉」
テーブルに置きっぱなしの蒼汰のスマホが、ピコン、と鳴る。
……仕事用の連絡だろう。
そう思いつつも、つい視線が吸い寄せられる。
画面には短い文章。
「蒼汰、今日午後、最上さんから、蒼汰指名でカットとカラー入ったからよろしく」
そしてその下には、同僚の「サクちゃん」なる人物からのメッセージ。
しかも――中年のイケオジとのツーショット写真付き。
「……は?」
思わず声が出た。
仕事で撮った写真にしては、妙にくだけた空気だ。
なんで、職場の共有じゃなくて蒼汰の個人に?
なんだよこの“イケオジ?”。
コーヒーを持つ手が、気づかぬうちにぎゅっと力んでいた。
夕方、蒼汰が帰宅すると、俺はもう我慢できずに訊いてしまった。
「なあ……さっきスマホに来てたんだけど、あの“サクちゃん”って誰?」
「ああ?」蒼汰は靴を脱ぎながら首を傾げる。
「サクちゃんのこと? 同僚。あ、やっぱメッセ届いてた?」
「届いてたっていうか、勝手に見えただけだ」
俺が少し語気を強めると、蒼汰はにやっと笑って、わざとらしく眉を下げた。
「お、もしかして……悠真、やきもち?」
「ち、違っ……!」と言いかけて、口ごもる。
だって実際、胸の奥がざわついてるんだから否定しきれない。
蒼汰は俺の隣に腰を下ろし、スマホを見せてきた。
「ほら、この人。“最上さん”って常連のお客さん。サクちゃんの知り合いらしくって、最近よく『蒼ちゃんに切ってほしい!』って指名されるんだ」
「……で、なんで蒼汰に指名、サクちゃんがカットすればいいんじゃないのか?」
「んー、サクちゃん新人さんやから、まだカットとかできへんねん。だから俺がカットするとき一緒に勉強中ってやつ、やさしい先輩で俺めっちゃ好かれてるねん。」
蒼汰はけろっと言うけど、俺の胸のもやもやは消えない。
「……仕事なら、わざわざ個人に送る必要ないだろ」
「ぇぇ、悠真ってけっこうと独占欲強いんやん」
そう言って、蒼汰は俺のコーヒーカップを横取りし、勝手に一口飲んだ。
「ちょっ……」
「ほら、俺が゛サクちゃんに取られちゃうって思った?それとも…イケオジ?」
蒼汰の笑顔は悪戯っぽい。
その無邪気さに、余計に心がざわつく。
「……思ってない」
「ほんまぁ? そんじゃあ証明してみて」
蒼汰が俺に顔を近づける。
やけに真剣な目で、けど唇には笑みを浮かべながら。
「俺が誰のもんか、ちゃんと分からせて、なぁ悠真」
心臓が跳ね上がる。
やきもちなんて、蒼汰に言われたくないのに。
でも、その挑発に抗えなくて、俺は彼を引き寄せてしまった。
「……もう、ほんと調子に乗るなよ」
蒼汰は俺の腕の中で声を立てて笑った。
その笑い声を聞いて、胸のもやもやがようやくほどけていく。
やきもちを焼かされるのは悔しいけど。
その分、蒼汰の“俺のもの”を確認できるなら――
いいのかな……
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