「君と暮せば毎日がちょっといい日」

るみ乃。

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「危なっかしくて可愛い夜」

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 冬の初めに買った土鍋は、この家で一番働いている。
「どうせなら、ちゃんとしたのを」
 そう言って選んだそれは、今夜もコンロの真ん中で湯気を上げていた。

「今日は俺が作るでぇ」
 そう宣言した蒼汰は、エプロンを身につけて、
 スマホを片手に鍋と睨めっこしている。
 画面をスクロールする指も、鍋をかき混ぜる手も、どこか落ち着きがない。

「なあ悠真、白菜って先やったっけ後やったっけ」
「最初でいいと思うけど」
「ほな入れるで……あ、ちょ、火強ないかな?」

 慌てて火を弱める。
 その様子があまりに危なっかしくて、
 自然とキッチンから目が離せなくなる。

「……そんな見んでも大丈夫やってぇ」
「心配になる」
「もう、テレビでも見ときって」

 そう言われてソファに座るけど、結局視線は戻ってしまう。
 おそろいで買ったエプロンは、蒼汰には少し大きくて、
 そのせいか動くたびに紐が揺れて、余計に目につく。

 新婚みたいだな、なんて思ってしまって、
 自分で少し照れた。

「味見してみて」
 差し出されたお玉を受け取る。
「……美味い」
「ほんま? よかった……」

 その瞬間、肩の力が抜けたみたいに笑う。
 不安だったのが全部顔に出ている。

 鍋を囲むと、次は取り合いが始まる。
「それ俺の肉やって!」
「もう、取った……俺の」
「ずるいわ!」

 箸がぶつかって、笑って、また奪い合う。
 騒がしいけど、嫌じゃない。

「この鍋、めっちゃ活躍してるな」
「そうだな。買ってよかった」
「悠真、ええ買い物したやん」

 そう言われると、少し誇らしい。

 具材が減って、鍋の中が寂しくなった頃、
 蒼汰がぱっと顔を上げた。

「うどんやんな?」
「あぁ、もちろん」
「やった」

 冷蔵庫からうどんを取り出して、慎重に鍋に入れる。
 今度は火加減も完璧だ。

「……ほら、もう任せといても大丈夫やろ」
「そうだな」

 湯気の向こうで、満足そうに頷く蒼汰。
 うどんをすすりながら、嬉しそうに笑う。

「やっぱ鍋の最後はうどんやな」
「そうだな」

 お腹も心も温まって、
 この冬も、きっとこうして過ぎていく。

 危なっかしくて、かわいい蒼汰を見て
 モット、甘やかしたくなった俺……
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