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「蒼汰が少し拗ねた夜」
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夕方のニュースで、デパ地下の特集が流れている。
限定チョコを求めて、人が押し合いへし合いしている映像は、
毎年見ても慣れない。
「うわ……えぐ。チョコってこんな命懸けやったっけ」
「毎年こんなものだよ。バレンタイン前は特にね」
そう返しながら、隣を見る。
蒼汰はテレビを見ているようで、実は全然見ていない顔をしていた。
この感じ、知ってる。考え事をしてるときの顔だ。
「……なぁ、悠真」
「ん?」
呼ばれて振り向くと、目が合う。
ちょっとだけ視線が泳いだ。
「悠真ってさ、チョコ……もらったこと、ある?」
ああ、そう来たか。
少しだけ考えて、正直に答える。
「ああ、あるよ」
「えぇえええ!?!?」
蒼汰がソファから半分浮いた。
反応がいちいち大きい。
「ちょ、誰!?誰から!?女の子!?男の子!?」
「蒼汰、また一人で盛り上がってない?」
思わず笑ってしまう。
「普通に、クラスの女子だよ」
「……クラスの女子」
蒼汰は復唱して、腕を組む。
分かりやすすぎるくらい、もやっとしている。
「学生の時?」
「そう。みんな、俺が男が好きだって知らなかったし」
「……そっか」
納得はしてる。
でも気持ちは追いついてない、そんな間。
少し間を置いてから、蒼汰がぼそっと言う。
「別にええねんで……ただ、ちょっとや」
可愛い。
そう思ってしまう自分も、たぶん重症だ。
「嫉妬?」
「……うるさい」
そう言いながら、距離を詰めてくる。
本当に分かりやすい。
「でもさ」
静かに言葉を選ぶ。
「今は、蒼汰からしかもらいたくないよ」
一瞬、蒼汰が固まった。
「……っ」
「そういうこと、さらっと言わんといて」
「本当のことだから」
しばらく黙っていた蒼汰が、照れたまま小さく言う。
「……じゃあ今年は、俺がやる」
「何を?」
「悠真へのチョコ。独占するねん」
「それは光栄だな」
「俺も期待してええ?俺、もらったことないねん……」
そんなことまで言うのか。
自然と口元が緩む。
「任せとけ……」
「ほんま?」
「ああ、俺からの本命チョコ待っといていいぞ」
次の瞬間、蒼汰が勢いよく抱きついてきた。
「なに」
「充電……悠真成分切れかけやった」
やれやれ、と思いながら背中に手を回す。
この距離が、もう当たり前になっている。
テレビではまだ、デパ地下戦線が続いている。
でも、そんなものはもうどうでもよかった。
肩が触れ合うこの距離で、
今年のバレンタインは、きっと騒がしくて、甘い。
蒼汰がいるから……
限定チョコを求めて、人が押し合いへし合いしている映像は、
毎年見ても慣れない。
「うわ……えぐ。チョコってこんな命懸けやったっけ」
「毎年こんなものだよ。バレンタイン前は特にね」
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この感じ、知ってる。考え事をしてるときの顔だ。
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「ん?」
呼ばれて振り向くと、目が合う。
ちょっとだけ視線が泳いだ。
「悠真ってさ、チョコ……もらったこと、ある?」
ああ、そう来たか。
少しだけ考えて、正直に答える。
「ああ、あるよ」
「えぇえええ!?!?」
蒼汰がソファから半分浮いた。
反応がいちいち大きい。
「ちょ、誰!?誰から!?女の子!?男の子!?」
「蒼汰、また一人で盛り上がってない?」
思わず笑ってしまう。
「普通に、クラスの女子だよ」
「……クラスの女子」
蒼汰は復唱して、腕を組む。
分かりやすすぎるくらい、もやっとしている。
「学生の時?」
「そう。みんな、俺が男が好きだって知らなかったし」
「……そっか」
納得はしてる。
でも気持ちは追いついてない、そんな間。
少し間を置いてから、蒼汰がぼそっと言う。
「別にええねんで……ただ、ちょっとや」
可愛い。
そう思ってしまう自分も、たぶん重症だ。
「嫉妬?」
「……うるさい」
そう言いながら、距離を詰めてくる。
本当に分かりやすい。
「でもさ」
静かに言葉を選ぶ。
「今は、蒼汰からしかもらいたくないよ」
一瞬、蒼汰が固まった。
「……っ」
「そういうこと、さらっと言わんといて」
「本当のことだから」
しばらく黙っていた蒼汰が、照れたまま小さく言う。
「……じゃあ今年は、俺がやる」
「何を?」
「悠真へのチョコ。独占するねん」
「それは光栄だな」
「俺も期待してええ?俺、もらったことないねん……」
そんなことまで言うのか。
自然と口元が緩む。
「任せとけ……」
「ほんま?」
「ああ、俺からの本命チョコ待っといていいぞ」
次の瞬間、蒼汰が勢いよく抱きついてきた。
「なに」
「充電……悠真成分切れかけやった」
やれやれ、と思いながら背中に手を回す。
この距離が、もう当たり前になっている。
テレビではまだ、デパ地下戦線が続いている。
でも、そんなものはもうどうでもよかった。
肩が触れ合うこの距離で、
今年のバレンタインは、きっと騒がしくて、甘い。
蒼汰がいるから……
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