「君と暮せば毎日がちょっといい日」

るみ乃。

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「その袖、計算済み」

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 二月の終わり。微妙な雨。
 春はすぐそこなのに……雨が冷たい
 ベランダに出たが、空は完全い灰色だ。

「乾かんやん……」
 蒼汰が洗濯物をを握りながら、落ち込んでいる。
「……うわ」
 部屋干しの匂いが気になるらしい。
 俺はソファからそれを眺めながら思う。
 
 蒼汰がクロ-ゼットをのぞき込む……
「わぁ……最悪やん、着る服ないて…」
 ……想定内。
 俺のパーカー、少し大きめサイズを選んで手に取る。
「俺のパーカー使えば?」
「それ悠真のやろ」
「いいよ」

 本音:ぜひ着てくれ。

「いや、でも」
「どうせ家の中だし」

 さらっと。できるだけ自然に言う。
 蒼汰は少し迷ってから袖を通す。

 あぁぁ、やっぱり。でかい……
 袖が余って、指先が半分隠れてる。
 肩も少し落ちてる……

 想像通り。いや、想像以上。

 やばい……
 顔に出すな。平常心。

「ほら、やっぱりでかい」
 蒼汰が文句言う。
「似合ってる」
 声が若干早かった気がする。
「適当やろ」
「適当じゃない」
 蒼汰は気づいてない。たぶん。
 袖を少し引っ張って整えるふりをしながら、距離が近くなる。

 洗剤の匂いの奥に、自分の匂いが混ざってる。
 その上から、蒼汰の体温。

 これ、俺の服だよな……
 なのに、似合いすぎてて腹が立つ。

「……なんか落ち着くわ」

 蒼汰が小さく言う。
 それは反則だろ。

「それ俺のやつ」
「知ってる」

 袖に顔を半分埋める蒼汰。
 やめろ。心臓に悪い。

 俺はもともと、少しゆったりめの服が好きだ。
 ……ということにしている。

 実際は、蒼汰が借りたときにちょうどいいから。
「共有財産やろ、もう」
 蒼汰が言う。
「半分な」
 冷静を装う。

 内心は、全部やるからそのまま着てろって思ってる……

 雨はまだ降っている。
 部屋の空気は少し湿っている。
 でも、自分の服を着た蒼汰が隣にいるこの状況は、わりと最高。

 でかめサイズにして正解だった。
 ……絶対言わないけど。
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