【完結】聖クロノア学院恋愛譚 ―君のすべてを知った日から―

プロローグ

　時代は、変わり始めていた。

　これまで、アルファはアルファの学び舎へ行き、
　オメガとベータは、別の道を進むのが当たり前だった。

　だが、平等を求める声が高まり、ついに三者が共に学ぶ男子校が誕生した。
　その名は——聖クロノア学院。

　長い歴史と格式を誇るこの学院は、伝統を守りながら、新しい時代へと一歩を踏み出した。

　そしてその年、一人のアルファが編入してくる。

　レオン・ヴァルフォード。
　王家の血を引く貴族の出身。
　容姿、能力、家柄、すべてを備えた“理想のアルファ”。

　その転入は、学院内外で大きな話題となった。
　だが、レオン自身は世間の喧騒に一切関心を示さなかった。

「俺は、俺の意志でここに来た。
　オメガだろうとベータだろうと関係ない。
　平等なんだろ？ なら、選ぶ自由があってもいいはずだ。」

　学院の門をくぐるその瞬間、彼の運命は静かに、しかし確かに動き出す。

　そして彼の前に現れたのは——

　ユリス・フェルナンド。
　生徒会副会長を務める、静かな瞳のベータの学生。

　けれど、彼の“本当の姿”を知る者は少ない。

　レオンとユリスの出会いが、学院の均衡を少しずつ崩していく。
　交錯する思惑、隠された陰謀、そして学院に潜む“闇”。

　これは、運命に抗う二人の物語。