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35影の再会、囚われの刻(前編)
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再検査通知が寮の掲示板に貼られた翌日、重たい足取りで医務室に向かった。胸の奥に沈んだ鉛のような不安が、歩くたびに重さを増す。廊下のざわめき、視線の熱、それらすべてが俺の鼓動を早めていく。
医務室に入ると、数人の職員と生徒がいた。俺は黙ってうなずき、職員に導かれるまま個室へと入っていく。扉が閉まる直前、無意識に肩を抱きしめていた。
しばらくして、扉が静かに開いた。
現れたのは、金髪に鋭い目をした男だった。冷たい視線に、俺の体が反応する。どこかで見たことがある。その目、その空気……誰かに、似ている。
男はゆっくり部屋に入ってきて、薄く笑った。
「はじめまして、ユリス・フェルナンド……いや、久しぶりだね、“フラン”」
その声が、氷の刃みたいに突き刺さる。脳裏に焼きついていた名前が、胸の奥で反響する。
「覚えてるかい? アレク・ヴァルフォードだよ。レオンの兄さ」
その瞬間、俺の背筋がぞわりと凍りついた。焦げた匂い、焼けるような叫び、幼い記憶の中の恐怖が、一気に蘇る。
「フラン、君は美しく育ったね。ベータのように整った体格に、しなやかなオメガのライン……」
アレクの目が冷たく光る。
何かが、おかしい。
空気が妙に重くなっていく。息がしづらい。視界が歪み始め、体温が急に上がってくるのを感じた。
「君は特別だ。君の存在の意味、もう理解しているだろう?」
近づいてきたアレクが、俺の顎に手を添えた。その冷たい指先が肌をかすめた瞬間、体がビクリと震える。
「感じてるだろう? 君のオメガの本能が、俺のアルファの気配に応えてる」
やめろ……そんなはずはない。俺は、こんな風に……。
だけど、体は逆らえなかった。胸の奥がじんわりと熱く、呼吸は浅く早くなり、下腹部がきゅうっと締めつけられるように疼く。頭の中が真っ白になっていく。
「違う……やめろ……っ」
声にならない声が漏れた。なのに、アレクの気配に、俺の体は確実に反応していた。肌が火照り、奥がずきずきと疼く。理解できない感覚に、俺は飲み込まれていく。
「これが君の真実だよ、フラン」
アレクの囁きが、耳元に絡みついた。
目に熱が滲んだ。恥ずかしくて、怖くて、悔しくて、どうしようもなかった。特異核保持者なんてラベル一つで、俺の自由は奪われるのか。
そのとき、扉が乱暴に叩かれた。
「ユリス、大丈夫か!? 開けろ! 何をしてるんだ、アレク!」
レオンの声――その声が、俺を現実に引き戻した。
アレクはわずかに目を細めて、俺の耳元で囁いた。
「この檻の中で、自分が誰なのか思い出すんだ。“フラン”としての君をな」
ドアが開いた瞬間、レオンが駆け込んでくる。俺の姿を見るなり、その顔が凍りついた。
「レオン……見ないで……」
情けない声が、漏れた。顔を背けたけど、俺の体から立ち上る甘い香りが、部屋中に漂っていた。発情の匂い――オメガの香りだ。
「くそっ……この香り……っ」
レオンの喉が鳴る。彼の理性が、必死に本能と戦っているのが伝わってくる。
「……ダメだ、今は……」
そう言いながら、レオンは俺の肩に手を置いた。その手のひらの温もりが、思わず涙が出そうになるほど優しかった。
「ユリス、落ち着け。俺がいる……絶対に、守るから」
その言葉に、俺の心がわずかに揺れた。けど、レオンの手はわずかに震えていた。苦しんでいるのは、俺だけじゃないんだ。
「お前を傷つけたりしない。……俺が、守る」
レオンの目を見た。その瞳の奥には、恐れも、怒りも、けれど確かな決意が宿っていた。
俺は、信じたいと思った。この手の温もりを。
今は、それだけが――救いだった。
医務室に入ると、数人の職員と生徒がいた。俺は黙ってうなずき、職員に導かれるまま個室へと入っていく。扉が閉まる直前、無意識に肩を抱きしめていた。
しばらくして、扉が静かに開いた。
現れたのは、金髪に鋭い目をした男だった。冷たい視線に、俺の体が反応する。どこかで見たことがある。その目、その空気……誰かに、似ている。
男はゆっくり部屋に入ってきて、薄く笑った。
「はじめまして、ユリス・フェルナンド……いや、久しぶりだね、“フラン”」
その声が、氷の刃みたいに突き刺さる。脳裏に焼きついていた名前が、胸の奥で反響する。
「覚えてるかい? アレク・ヴァルフォードだよ。レオンの兄さ」
その瞬間、俺の背筋がぞわりと凍りついた。焦げた匂い、焼けるような叫び、幼い記憶の中の恐怖が、一気に蘇る。
「フラン、君は美しく育ったね。ベータのように整った体格に、しなやかなオメガのライン……」
アレクの目が冷たく光る。
何かが、おかしい。
空気が妙に重くなっていく。息がしづらい。視界が歪み始め、体温が急に上がってくるのを感じた。
「君は特別だ。君の存在の意味、もう理解しているだろう?」
近づいてきたアレクが、俺の顎に手を添えた。その冷たい指先が肌をかすめた瞬間、体がビクリと震える。
「感じてるだろう? 君のオメガの本能が、俺のアルファの気配に応えてる」
やめろ……そんなはずはない。俺は、こんな風に……。
だけど、体は逆らえなかった。胸の奥がじんわりと熱く、呼吸は浅く早くなり、下腹部がきゅうっと締めつけられるように疼く。頭の中が真っ白になっていく。
「違う……やめろ……っ」
声にならない声が漏れた。なのに、アレクの気配に、俺の体は確実に反応していた。肌が火照り、奥がずきずきと疼く。理解できない感覚に、俺は飲み込まれていく。
「これが君の真実だよ、フラン」
アレクの囁きが、耳元に絡みついた。
目に熱が滲んだ。恥ずかしくて、怖くて、悔しくて、どうしようもなかった。特異核保持者なんてラベル一つで、俺の自由は奪われるのか。
そのとき、扉が乱暴に叩かれた。
「ユリス、大丈夫か!? 開けろ! 何をしてるんだ、アレク!」
レオンの声――その声が、俺を現実に引き戻した。
アレクはわずかに目を細めて、俺の耳元で囁いた。
「この檻の中で、自分が誰なのか思い出すんだ。“フラン”としての君をな」
ドアが開いた瞬間、レオンが駆け込んでくる。俺の姿を見るなり、その顔が凍りついた。
「レオン……見ないで……」
情けない声が、漏れた。顔を背けたけど、俺の体から立ち上る甘い香りが、部屋中に漂っていた。発情の匂い――オメガの香りだ。
「くそっ……この香り……っ」
レオンの喉が鳴る。彼の理性が、必死に本能と戦っているのが伝わってくる。
「……ダメだ、今は……」
そう言いながら、レオンは俺の肩に手を置いた。その手のひらの温もりが、思わず涙が出そうになるほど優しかった。
「ユリス、落ち着け。俺がいる……絶対に、守るから」
その言葉に、俺の心がわずかに揺れた。けど、レオンの手はわずかに震えていた。苦しんでいるのは、俺だけじゃないんだ。
「お前を傷つけたりしない。……俺が、守る」
レオンの目を見た。その瞳の奥には、恐れも、怒りも、けれど確かな決意が宿っていた。
俺は、信じたいと思った。この手の温もりを。
今は、それだけが――救いだった。
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