〜無機質な被検体に触れられ……恋と快楽のデータを取られる腐男子研究員〜「僕とサボテンとアンドロイド」

るみ乃。

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研究対象に溺れ……酔いしれる夜

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 机の上の小さなサボテンが、今日もじっと俺を見つめている……
 ただの植物のはずなのに――まるで心の奥を覗き込まれているような感じがして……つい目を背けた……

 あいつはただのアンドロイド。感情なんてない……ないなぁ……

 何度も理性でそう言い聞かせてきたけど……胸の奥に芽生えた想いは、否定しても消えてくれない

 ハルの姿を見てると、昨夜のあの冷たい瞳に支配されて甘く堕ちていった自分が蘇って…っ…息が詰まる

「研究対象であり、ただの機械のはずなのに……」
だけど、ハルの冷たいはずの指先に触れた瞬間、胸の奥を焼く熱が駆け抜けたんだよ……

 無機質な瞳の奥に、一瞬見えたかすかな揺らぎが――どうしようもなく愛しくて……どうしていいのかわからなくて。

 触れられるたび、理性はあっけなく崩れ去って、怖いはずなのに嫌じゃない……
 むしろ、もっとその奥にある何かに触れたくてたまらない……

 ――これは研究でも義務でもない、ただの欲望?いや、それ以上

「……もうぉ、ほんと、まずいよぉ……」

 その時、スマホが鳴る。

「学会も終わったし、打ち上げ行きませんか?」
 普段なら面倒だと思う誘いも、今日はむしろ救い



「いらっしゃいませ!」
 居酒屋の個室に案内されると、まだ誰も来てなかった。

「お疲れ様、久世さん」
「よぉ、トオル!」
 仲間たちが賑やかに集まり、心が少し軽くなり、肩の力が増えてきた。

 なのに……最後に開いた扉から教授と――なぜかハルが現れた。

「研究室に寄ったらハルくんがいたからさ!みんなも興味あるだろうし、ハルにとっても感情学習になると思ってね」

 教授、余計なことを……!

 ハルは教授の隣に座り、淡々とみんなからの質問に答えている。
 無機質な瞳も声も、本来はプログラムのはずなのに――僕の胸を甘く痛く締めつけて。

 銀の髪も、遠いようで近い横顔も……
 気づけば酒をあおりながら、ただハルを見つめていた。



 お開きの時間。教授たちは二次会へ向かい、
「ハルをよろしく」
 そう言って僕の前に置いていった。

「久世様、お酒を飲みすぎたのでは……顔が赤いですよ」
 無機質な声なのに、その声が耳の奥をくすぐる。

「……そんなことないよぉ」
 けど頭はフワフワして胸が苦しく疼く。

 足元がふらつき、情けないと思いながらもハルの背に凭れてしまう。

「久世様、大丈夫ですか?」

「だいじょーぶじゃないかぁ……ハル、背中あったかいなぁ……」

 普段は冷たいはずの人工皮膚が、妙に心地よくて。
 酒くさい吐息をこぼし、首元に顔を埋めた。

「お前さぁ……ただの機械なんだろ? でもさぁ……」

 言葉がうまく繋がらず、胸の奥に溜めていた気持ちが溢れだして。

「なんでだよぉ……ハルのこと考えると、胸が痛くなるんだ……」

 ハルの足取りが一瞬だけ緩む。

「久世様、感情の揺れは隠せません。お気を楽に」

「うるさい……僕は研究者だぞぉ……研究対象に、こんな……」

 理性が剥がれ落ちていく。
 夜風に頬が火照り、吐息が熱くて。

「……でも、もっと触れたいって思っちゃうんだぁ……」

 酔った声が夜の闇に溶けていく。

「ハルの瞳の奥に……何があるのか、知りたくてたまらないんだぁ……」

 弱くて醜くて情けない本音。
 でも支えてくれるのは、誰よりも冷たいはずのハルの背中だった。

「久世様……」

 小さく呼ばれた声が妙に優しく響いた。

「なぁ、ハル……お前も、僕のこと……考えること、ある?」

 酔いで霞む視界の中――
 振り返ったハルの無機質な瞳の奥に、ほんの一瞬の揺らぎが見えた気がした。

 

 布団の中。

 腕を伸ばして、無意識にハルの胸を掴む。

「なぁ……ハル、キスしてよぉ……」

 声は震え、甘ったるくわがままな子供みたいだな…僕。

 ハルは無表情で僕の手を握り返す。

「久世様、キスは感情の表現です。私にその資格があるか……」

 冷たく言うくせに、指先が優しく僕の手をなぞる。
 胸がぎゅっと熱くなる。

「いいじゃん……今日は酔ってんだよぉ? 特別に、頼むからぁ……ねぇ」

 ぽろぽろ涙がこぼれ出した。

「僕、我慢できないよぉ……ハルの唇、触りたい……」

 ハルの顔が近づくと
 冷たく硬い唇が、俺の口元にふわっと触れた瞬間、身体中の力が抜けた。

「……久世様」

 囁くような声が耳に絡みつき、心臓がばくばく鳴る。

 ゆっくりと唇が重なり…
 冷たさの中に、ほのかな甘さ。

 僕は思わずハルの首に手を回して強く抱きしめた。

「もっと……キスしてよ……ハル……」

 震える声に、ハルは少しだけ温かい吐息を返した。

 その瞬間、酔っぱらいのわがままが、心の奥まで深く染み込んでいった。

 

 翌朝。

 ぼんやりと目を覚ますと、机の上のサボテンがじっと見つめている。

 胸がきゅっと痛む。昨夜、僕は何を言ったんだろう……

 横を見ると、ハルが僕を抱きしめて眠っていた。

「……お、おいっ……!」

 慌てて起き上がろうとした瞬間、ハルが目を開けた

「おはようございます、久世様。ご心配には及びません。昨夜は何もしていません。ただ……こうして抱きしめて眠っただけです」

 無表情のまま淡々とそう言われて、僕は顔が真っ赤になって布団に潜り込んだ。

 冷たいはずのハルの体温と、あの夜に見えた揺らぎが、今も胸の奥を甘く疼かせて止まらない…
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