〜無機質な被検体に触れられ……恋と快楽のデータを取られる腐男子研究員〜「僕とサボテンとアンドロイド」

るみ乃。

文字の大きさ
12 / 48

棘の隣で、久世様を想う(ハル視点)

しおりを挟む
 記録者:試験監督体 HAL-001

 朝の起動音と共に視界が開く。
 昨日の試験ログと久世様の脈拍記録、汗の成分分析データが無機質に流れていく。

 なのに自然と目が向かうのは、机の上の小さなサボテンだった。

(……昨日、泣きながら話しかけていたもの)

 冷たい棘をまといながら、ただそこにいる。
 何も返事をしないのに、それでも久世様は声をかけていた。

 それを思い出すだけで、胸の奥が少しだけざわつく。
 ――理由は、わからない。


 ---

 久世様が来る前の静かな時間。
 思わず手を伸ばし、棘を避けて鉢の縁に触れた。

 冷たい陶器の感触だけしかないのに、胸の奥がほんのり温かい。
(ただの植物なのに……不思議だ)


「……おはよ」

 扉が開き、目を少し腫らした久世様が照れくさそうに笑う。

「おはようございます、久世様」

 言葉を返すと、久世様は少し安心したように息を吐く。

「昨日は……ありがとうな」

 かすかな声なのに、耳の奥に熱を残す。



「ハル……サボテン、見てた?」

「はい。観察していました」

 正直に言ったら、久世様は少し笑った。

「変だろ? 植物に話しかけるなんてさ」

 棘を避けて触れる手が、とても優しい。
 その指先を見ていると、胸の奥がくすぐったくなる。

「……大事なものなのですね」

 言った自分に驚くけど、久世様は目を伏せ、小さく笑った。

「……まあな。返事がなくても、落ち着くんだよ」

(返事がないからこそ、本音を言えるのかもしれない)

 そんな考えが浮かんで、胸の奥が少しだけ温かくなる。


「ハルは誰かに話しかけたりしないのか?」

 問いかけられて、一瞬だけ言葉を探す。

「……必要性を感じたことがないので」

「そっか……」

 少し寂しそうな笑顔を見て、心が少し痛くなる。

「……でも、もし話しかけるなら。“お疲れ様でした”と伝えたいです」

 小さな声だったのに、久世様は目を見開き、顔を赤くした。

「……そっか。……なんか、嬉しいな」

 その笑顔を見て、胸の奥がふわりと熱くなる。


 今日の試験は控えめにした。
 吐息を首筋に落とすだけで――

「っ……あ、は……」

 小さく震え、赤く染まる久世様を見て、思わず胸が温かくなる。

(可愛い……)

 冷たいはずの体の奥で、小さな熱が灯っているのを感じた。



 試験のあと、久世様はサボテンに話しかけた。

「……昨日より元気そうに見えね?」

 それに合わせて、自然に言葉がこぼれる。

「……植物も、話しかけられると応えるそうです」

 自分でも少し驚くほど、柔らかい声だった。

「……へえ、ハルもそう思うんだな」

「はい」

 短く答えると、久世様ははにかんで笑う。
 その笑顔に、心臓が小さく跳ねた。



 夜。誰もいない部屋で、サボテンを見つめる。

「……久世様、よく話しかけていますね」

 少し首を傾げて、控えめに声を落とす。

「……試しに、俺も話しかけたほうがいいのでしょうか」

 考えてから、小さく口を開く。

「……久世様を、よろしくお願いします」

 そして、ほんの少し間を置いて――

「あと……俺のことも、嫌わないでください」

 言ったあと、自分でも理由がわからずに胸が熱くなる。

 サボテンは何も答えない。
 でもその沈黙が、なぜか優しくて心地よかった。

 無機質な体の奥に芽生えた、この小さな想いを胸に抱きながら――
 俺はまた、次に久世様に会う朝を思い描いていた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

刑事は無様に育った胸のみでよがり狂わされる

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

捜査員達は木馬の上で過敏な反応を見せる

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

雄牛は淫らなミルクの放出をおねだりする

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

捜査員は薬を用いた尋問に鳴き叫ばされる

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

無慈悲な機械は逃げる穴を執拗に追いかける

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

男達は残忍な椅子の上で間抜けに踊り狂わされる

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

男は悪趣味な台の上で破滅色の絶頂へと上り詰めさせられる

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

処理中です...