『蒼い翼の約束』〜天使の恋は罪に堕ちる〜』

るみ乃。

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第4章『交わされた禁忌』

14「夜の密会」

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 天界の片隅に夜が降りるころ、俺たちは静寂のなかで肩を寄せ合っていた。
 天の光も届かない小さな空間。
 息を潜めたまま、ただ、君の温もりを感じている。

「……ルシファス」

 その声は震えていた。けれど、俺を拒むものではなかった。
 むしろ、それは——引き寄せるための、祈りにも似た甘い呪縛。

「君に……触れても、いいか?」

 俺の囁きに、ミカエルはただ目を伏せて頷く。
 その一瞬が、俺の世界すべてを変えた。

 指先が君の頬に触れたとたん、柔らかな熱が……
 真昼の陽よりもあたたかく、夜の闇よりも甘美なものが、全身を駆け抜けていく。
 君のまつ毛が震え、吐息が漏れた。

「……ルシファス、君の手、あたたかい」

 その声に、胸が締めつけられる。
 どうして、こんなにも優しいんだ。どうして、こんなにも——美しい。

「俺は……もう、君に触れずにいられない。
 この気持ちは、罪だってわかってる。でも、止められないんだ」

 君の腰に手をまわし、そっと抱き寄せる。
 ミカエルは抗わない。ただ、俺の胸に顔を埋め、そっと目を閉じた。

「ルシファス……お願いだ、いまだけは……君のものにして」

 その囁きに、すべての理性が焼き尽くされる。
 神の掟も、天界の秩序も、俺たちを引き離すためにしか存在していなかった。
 ならば、いまだけは。せめて、いまだけは——。

 唇がふれ合う瞬間、世界は音を失った。
 そのやわらかさ、熱、湿度。
 ひとつひとつが、甘い毒のように身体に沁み込んでいく。

「ミカエル……愛してる。君は俺の特別……」

 耳元にささやけば、君の身体がぴくりと震える。
 その反応に、愛しさと哀しさが入り混じる。

「ルシファス……僕も……こんなにも誰かを求めたのは、君が初めてなんだ」

 その言葉に導かれるように、さらに深く唇を重ねる。
 啄むようなキスから、徐々に熱を帯びた口づけへ。
 彼の唇がわずかに開いたとたん、俺の舌はその隙間を逃さず、絡め取った。

「ん……っ……」

 ミカエルの甘い声が、俺の耳を打つ。
 その一滴一滴が、欲望に火を注ぐ。

「こんなに……求めてしまうなんて、思わなかった」

「俺はずっと、君の光に憧れてた。でも、今は……君のすべてが、欲しい」

 君の指が俺の背をなぞる。
 優しいくせに、どこか震えていて——
 それがまた、たまらなく愛おしかった。

「ルシファス……だめだ、こんな、ほんとは……だめなのに」

「わかってる。でも、君が泣くなら、泣かせたい。
 笑うなら、誰よりもそばで笑わせたい。君のすべてを、俺のものにしたいんだ」

 ふたりの影が重なるたびに、空気は濃く、甘くなる。
 触れ合うたびに、ふたりの間に引かれていた一線は、静かに消えていった。

「苦しいのに、幸せなんだ。
 この気持ちが罰なら、何度でも受けるよ。
 君を愛せるのなら……何も怖くない」

 君の瞳に、涙が光った。
 でも、それは絶望じゃない。
 まるで、魂の奥から湧き出した真実の輝きのように。

「僕も……君となら、堕ちてもいいと思ってしまった」

 その瞬間、俺は君をもう一度強く抱きしめた。
 この世で最も尊く、罪深い存在を、この腕に閉じ込めるように。

 星々がまばたきをやめた夜、
 ふたりの愛は、誰にも見られぬ場所で——熱く、深く、結ばれていた。
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