『蒼い翼の約束』〜天使の恋は罪に堕ちる〜』

るみ乃。

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第4章『交わされた禁忌』

22「祈るように君を想う」

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 灯りも届かぬ地界の片隅で、俺はまた空を見上げていた。
 もう、あの空に戻ることはできないと知っていながら、癖のように、名残のように、空を見てしまう。

 星の瞬きがあまりに遠くて、まるで過去の記憶のかけらを空に浮かべたみたいに見える。
 ひとつひとつが冷たくて、でも、目を背けられないほどに眩しい。

 ――ミカエル。
 君は、今どこにいる?

 俺のことを、まだ憶えていてくれるだろうか。
 それとも、神の祝福の中で、俺の名も顔も、風のように消えてしまったのか。

 それでもいい。
 幸せでいてくれたら、それだけで――

 ……いや。
 そんな綺麗事を言えるほど、俺は聖人じゃないんだ。

 

「ほんと、ズルいよな……」

 思わず呟いて、口元に苦い笑みが滲む。

 どうして、君ばかりを想ってしまうんだろう。
 どうして、地界に落ちてもなお、心は天に縛られたままなんだろう。

 手放したはずなのに。
 俺の罪が、君を遠ざけたはずなのに。
 それでも、まだ――

 

 夜風が冷たい。
 だが、その冷たさがどこか心地よかった。
 天界の眩しすぎる光よりも、闇に抱かれたこの世界の方が、よほど“優しい”。

 神の目も、掟も、ここには届かない。
 誰にも咎められないこの孤独の中で、俺はただ、静かに君を想うことができる。

 それだけが、今の俺に残された「自由」だ。

 

 目を閉じれば、すぐに思い出せる。
 澄んだ声、透き通る瞳。
 真面目で頑なで、でも時々、俺の袖をつかんで寄り添ってきた、あの手の温もり。

 お前の全てが、愛しかった。

 いや……
 今も、こんなにも愛している。

 天使だった頃よりも、もっと深く、もっと苦しいほどに。

 愛してはいけない存在。
 触れてはいけない光。
 けれど、想いだけは、誰にも奪わせたくなかった。

 

「ミカエル……」

 名前を呼ぶと、それだけで胸が軋んだ。

 この声が届かないことなんて……届いてしまってはいけないとも思ってる。

 だけど、祈るように願ってしまうんだ。
 いつか、君がまた俺を見つけてくれることを。

 あの頃のままの声で、「ルシファス、そこにいたの?」って……呼んでくれることを。

 

 今日もまた、星のない夜が来る。
 闇に紛れて、誰にも知られずに、俺はそっと、罪の名前を呟く。

 ミカエル――
 ただ、君を愛してる。

 それがどんなに許されないことでも、
 俺の中では、永遠に終わらない。

 お君のいない世界で、それでも俺は、君のことしか考えられないまま……
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