『蒼い翼の約束』〜天使の恋は罪に堕ちる〜』

るみ乃。

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第4章『交わされた禁忌』

21「君の名を、僕は忘れていても」(ミカエル視点)

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  「ミカエル……」

どこかで誰かの声がした気がした。 
 けれど振り返っても、そこには風の音しかなかった。
僕は天界の白い回廊を歩いていた。
空は青く澄み、何ひとつ変わらない――はずなのに。

「……おかしいな」

胸の奥が、妙にざわついていた。神の命を受け、天使たちを統率する責任を担う身でありながら、
その感情は日に日に強くなっていった。
――誰かが、いた。
 ――何かを、忘れている。
だがその“誰か”の名前も、顔も、想いさえも思い出せない。
ただ、空を見上げるたびに、心の奥で何かが軋んだ。
「何を探してるんだろう……僕は」
それでも歩くことを止められなかった。
 答えのない問いを抱えたまま、今日も僕は空を仰ぐ。
 
 
 空から目を逸らし、ミカエルは静かな水辺に立った。
白い翼が風に揺れ、足元の水に映る自分の姿が、どこか他人のように感じられた。


「……本当に、僕は……正しいのか」
誰にも届かない声。ガブリエルに相談すれば「お前は何も失ってない」と笑われるだろう。
でも、違う。何かが空っぽなのだ。
 
ふと、風が吹き抜けた。どこからともなく花びらが舞い、ミカエルの足元へとひらりと落ちる。
彼はそれを見下ろし、なぜだか涙が零れそうになるのを感じた。

「……誰かが、僕の名前を読んでいる」
どこか遠くで、誰かが――
  
 
天から地を見下ろす。そこに何かがあると信じて、僕はは翼を広げた。 
 まるで、失われた光を探すように。
 
 交わることのない空と地。
 けれど、そこにある想いは、確かに響き合っていた。
記憶を越えて、魂が呼応する。
 それは“愛”と呼ぶには、あまりに切なく、あまりに強い祈りだった――。 
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