『蒼い翼の約束』〜天使の恋は罪に堕ちる〜』

るみ乃。

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第3章『天の剣、地の声』(青年期)

13「僕の声は、君に届いてる?」

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 神の庭に、静かな風が舞っていた。

 凍てついた空の下、俺は、ミカエルと向き合っていた。

「ミカエル……この想いが届かないのなら……ここで、俺を斬ってくれ」

 喉の奥から搾り出すように言葉……胸が痛む。けれどそれ以上に、君を前にして、俺は嘘はつけなかった。

 ミカエルは、悲しげに目を伏せ、細い指で剣を差し出した。その手が、震えているのが見えた。

「ルシファス……君が本気なら……君も剣を取って」

 刃がぶつかり合う。鋭く、乾いた音が空を裂くたびに、俺の中で何かが壊れていく。

「……ミカエル、俺の声は、君に届いてるのか?」

 剣を交わす隙間に、俺は祈るように呟いた。凍った空気に乗せて、ただ真実だけを。

「俺は……君を、愛している。君の光が、どれほど遠く離れていても、俺の胸の奥に、確かに灯っていたんだ。
 君の声、君の香り、君の温もり……。あの日、初めて触れたとき、世界が色を持ったんだ」

 溢れ出す想いは、言葉以上の何かとなって君に向かっていく。

「君の笑顔を守りたくて、君の瞳に映るものを壊したくなくて。
 ただ、君の隣にいたかった。それだけだった。
 君のいない俺は、ただの影だ……」

 一瞬、ミカエルの剣が止まった。揺れる瞳の奥に、痛みと迷い、そして……愛に似た色が確かにあった。

「どうか……どうか、この声が、君の心に届いていてほしい。
 俺のこの想いが、罪だとしても——それでも、真実なんだ」

 その瞬間、ミカエルの頬に涙が伝った。

 そして、震える唇で俺の名を呼んだ。

「ルシファス……」

 切ないその声に、胸が焼けるように痛んだ。

「俺の気持ちを……わかってほしい」

 その囁きが、風にさらわれて消えていく。

「僕は……どうすれば……」

 迷いの中で語られるその言葉が、俺をさらに深く突き刺した。

 戦うために剣を交えているのに、どうしようもなく惹かれ合ってしまう。どうして、こんなにも——。

「どうして……君は、そんなにも……僕を……」

 震える声。けれどその瞳には、確かに愛が宿っていた。俺の心を揺らすほどに、強く、切なく。

「僕は神の命に従う……けれど、心は——君の傍にある」

 その告白に、俺の頬を熱い涙が流れた。

 剣を交えているこの時間さえ、俺にとっては、尊く、奇跡のようだった。

「もう、わからない……。戦う意味も、正義も。俺はただ、君も——守りたい。それだけなんだ」

 ミカエルは、そっと剣を下ろした。

 俺も、ゆっくりと剣を降ろし、君の瞳を見つめた。

 そこにあったのは、怒りでも敵意でもなく……祈るような、優しい想いだった。

「ミカエル……どうか、俺のすべてを受け止めてほしい」

 言葉が震える。心が、張り裂けそうだった。

「俺は……君を愛してしまった。
 それが罪だと知ってる。神の掟も、天の秩序も、
 それを許さないのも……全部わかってる。
 でも、この想いは……偽りじゃない。
 君の光が、俺の闇を照らしてくれた。
 君に触れた日から、俺は……自由になりたいと思ったんだ。
 君とともにいたいって、願ってしまったんだよ」


 俺の告白は、苦しみの果てにある、甘く、熱を帯びたものだった。

 ミカエルの瞳に、また一筋の涙が浮かぶ。

 君は、静かに俺の手に触れた。その温かさに涙が頬を伝う。

「ルシファス……僕も……君を想ってる」

 その言葉が、全身に沁みわたる。

「君の想いは、罪なんかじゃない……。こんなにも、優しくて、強くて、尊いのに……。僕はそれに気づいてたのに、目を逸らしてたんだ……」

 そっと彼の手を握り返す。指先から伝わる想いを、確かめるように。

「たとえ天を敵に回しても、俺は君を愛し続ける」

 その言葉に、ミカエルの瞳が揺れた。微笑みが、ほんの少しだけ、浮かぶ。

「僕も……君を信じたい。君のすべてを知りたい。光も、闇も、痛みも、哀しみも……全部」

「たとえ引き裂かれても、遠く離れても、俺は君のそばにいる」

 囁きが風に乗り、ミカエルの心に届いたと確信した。

 剣を手にしたまま、俺たちは見つめ合い、手を離さなかった。

「君のすべてを受け入れる。俺のすべても、君に捧げる」

 その誓いは、まるで永遠の光のように俺たちを包んだ。

 神の命令も、天の掟も、俺たちの愛を引き裂くことはできない。

 ——この想いを抱いて、どんな未来も、共に歩く。

 それが、俺たちが選んだ愛のかたちだった。

 涙と微笑みが交わるこの場所で、俺は確信する。

「君がいれば、俺の闇は怖くない。
 そして君の闇も、俺がすべて包むよ」

 すべてをさらけ出し、すべてを赦し合った俺たちの愛は、

 罪なんかじゃない——

 ただ、純粋に、美しく、尊く輝いていた。
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