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『Café月夜 ― 月の鏡が映す、あなたへの想い ―』
エピロ-グ「cafe月夜の記録簿」
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月が欠けはじめる頃、店の灯を落とす。
「cafe月の鏡」は、満月の夜にだけ現れ、夜明けとともに静かに消える。
この場所は、言葉にならなかった想いを影として映す場所。
人が月に心を映すように、影もまた人の心を覗き込む。
――あの二人が来た夜も、そうだった。
ひとり目の青年は、迷うような瞳をしていた。
彼の影は深く、けれど優しかった。
「伝えたかった言葉」が長い間、胸の底で凍っていたのだろう。
その影は、彼に代わって愛を語り、涙を流した。
そして二人目の青年。
彼は光の側に立つ人間だった。
だからこそ、影に気づけなかった。
けれど今夜――欠けかけた月の下で、
彼はもう一度、同じ声を聞いただろう。
影を通して知った“真実”が、現実の彼らを繋ぎ直した。
カウンターを拭きながら、月を見上げる。
空にはまだ、薄く輪郭を残した月が浮かんでいた。
まるで誰かの記憶が夜空に残っているようだ。
カウンターの上には、青いカクテルの残り香がわずかに漂っていた。
“影の月光”――それは、二人が座っていたテーブルにだけ残されていたもの。
光を受けるたび、グラスの底で青が揺らめく。
まるで、まだ語り終えていない想いのように。
「よかったですね。」
小さく呟いた声に、店の奥でグラスがひとりでに鳴った。
それは、彼らの影が返した合図のように思えた。
グラスを手に取り、残りの液体をそっと月明かりに透かした。
夜風が入り、扉が少しだけ開く。
外には、もう誰の足跡もない。
ただ、風の中で二つの気配がすれ違うのを感じた。
影と光。もうどちらも欠けてはいない。
ひとつの月のように、静かに重なり合っている。
カウンターの隅のノートに、新しい行を綴る。
――「遼と及川、満月の夜、影を還す。」
満月に
影をそっと還す夜
言えなかった想いは
静かに光となる
二つの心が重なり
影と光がひとつに溶ける
月は微笑み、夜は明ける
世界はまた、静かに息をする
――Cafe 月の鏡――
ページを閉じると、店の灯が一つずつ消えていった。
音もなく、影もなく。
ただ、窓の外で月だけが静かに笑っていた……
「また次の満月に。」
誰にともなく告げ、扉を閉めた。
夜が完全に欠けたとき、店はもう、どこにも存在しない。
でも、誰かが心の底で“言えなかった想い”を抱く限り、
『Cafe 月の鏡』は、再びその夜に現れる……
《完》
「cafe月の鏡」は、満月の夜にだけ現れ、夜明けとともに静かに消える。
この場所は、言葉にならなかった想いを影として映す場所。
人が月に心を映すように、影もまた人の心を覗き込む。
――あの二人が来た夜も、そうだった。
ひとり目の青年は、迷うような瞳をしていた。
彼の影は深く、けれど優しかった。
「伝えたかった言葉」が長い間、胸の底で凍っていたのだろう。
その影は、彼に代わって愛を語り、涙を流した。
そして二人目の青年。
彼は光の側に立つ人間だった。
だからこそ、影に気づけなかった。
けれど今夜――欠けかけた月の下で、
彼はもう一度、同じ声を聞いただろう。
影を通して知った“真実”が、現実の彼らを繋ぎ直した。
カウンターを拭きながら、月を見上げる。
空にはまだ、薄く輪郭を残した月が浮かんでいた。
まるで誰かの記憶が夜空に残っているようだ。
カウンターの上には、青いカクテルの残り香がわずかに漂っていた。
“影の月光”――それは、二人が座っていたテーブルにだけ残されていたもの。
光を受けるたび、グラスの底で青が揺らめく。
まるで、まだ語り終えていない想いのように。
「よかったですね。」
小さく呟いた声に、店の奥でグラスがひとりでに鳴った。
それは、彼らの影が返した合図のように思えた。
グラスを手に取り、残りの液体をそっと月明かりに透かした。
夜風が入り、扉が少しだけ開く。
外には、もう誰の足跡もない。
ただ、風の中で二つの気配がすれ違うのを感じた。
影と光。もうどちらも欠けてはいない。
ひとつの月のように、静かに重なり合っている。
カウンターの隅のノートに、新しい行を綴る。
――「遼と及川、満月の夜、影を還す。」
満月に
影をそっと還す夜
言えなかった想いは
静かに光となる
二つの心が重なり
影と光がひとつに溶ける
月は微笑み、夜は明ける
世界はまた、静かに息をする
――Cafe 月の鏡――
ページを閉じると、店の灯が一つずつ消えていった。
音もなく、影もなく。
ただ、窓の外で月だけが静かに笑っていた……
「また次の満月に。」
誰にともなく告げ、扉を閉めた。
夜が完全に欠けたとき、店はもう、どこにも存在しない。
でも、誰かが心の底で“言えなかった想い”を抱く限り、
『Cafe 月の鏡』は、再びその夜に現れる……
《完》
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※本作は「小説家になろう」「アルファポリス」にて同時掲載しております。
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©︎月影 / 木風 雪乃
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