『恋のアラカルト:BL・超短編集』~どの恋が好き?~

るみ乃。

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『プリズムの恋、ノイズの愛――九条くんと僕の二つの物語』

「独りではない証拠 ・モノクロ-ムノイズ」

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「……九条、くん……。僕、明日が来るのが……怖いんだ……」

 喉の奥から零れ落ちたのは、祈りにもならない、みっともない本音だった。
 言葉にした瞬間、自分が壊れてしまいそうで、視線を落とす。

 九条くんは何も言わない。
 ただ、僕の細い首筋に、自分の熱い額をそっと押し当ててきた。

 逃げ場を塞ぐみたいなのに、不思議と乱暴じゃない。
 皮膚越しに伝わる体温が、じわりと滲んでくる。
 短いイヤホンのコードが、
 これ以上離れるな、と言わんばかりに僕たちを繋ぎ止めて――
 吐息と心音を、無理やりひとつのリズムに縛りつける。

「……怖くねえよ。俺が、いる」

 低く、確かめるような声。
 それは甘い約束なんかじゃなかった。
 救うとも、未来を与えるとも言わない。
 ただ、地獄の底で背中を預け合うと決めた者同士の、重い契約。

 九条くんは僕の手からカメラを奪い取ると、
 迷いもなくレンズを自分たちに向けた。

 ピントの合わない、暗闇の中の自撮り。
 意味なんてない一枚。
 それでも、シャッター音だけがやけに大きく響く。

「……これで、お前は独りじゃねえ」
 少し間を置いて、ぶっきらぼうに続ける。
「……死にたくなったら、この汚ねえツラを見ろ。逃げんな」

 九条の指が、僕の頬を乱暴に拭った。
 涙を消すというより、
「ここにいろ」と押し付けるみたいな触れ方。

 そのまま、指先がほんの一瞬だけ、名残惜しそうに留まる。
 それだけで、胸の奥がひどく熱くなった。

 この耳を塞ぐノイズと、
 隣で息をする狂犬みたいな男の体温があるなら、
 僕の心は、どうにか形を保っていられる。

 暗闇の中、僕たちは重なり合う。
 抱き合うほど近くて、でも触れすぎない距離で。

 レンズ越しじゃない、本当の絶望を分け合う「共犯者」として。
 もう僕を消し去ることはできなかった……

 完
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