『恋のアラカルト:BL・超短編集』~どの恋が好き?~

るみ乃。

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『プリズムの恋、ノイズの愛――九条くんと僕の二つの物語』

「断絶と接続 ・モノクロ-ムノイズ」

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「…………」

 声が出ない。
 僕は、震える手で有線のイヤホンの片方を差し出した。
 言葉で説明する勇気なんてない。
 ただ、この重すぎる沈黙に、もう耐えられなかったんだ。

 九条くんは僕の手から、奪い取るようにそれを自分の耳に押し込んだ。

 流れ出したのは、旋律のない音。
 雨音と、機械が低く唸るようなノイズが溶け合った、暗いアンビエント。

「……何だ、これ。音楽じゃねえよ。ただの、ゴミ」
 短く吐き捨てる。

「……雨の音が……消えるから……
 これ、聴いてないと……僕、消えちゃうんだ」
 喉の奥が詰まてえしまう。

 九条くんは返事をしなかった。
 ただ、乱暴な音を立てて、僕の隣の椅子に腰を下ろす。

 有線のコードは短い。
 首を絞める鎖みたいに、僕たちを否応なく繋ぎ止める。
 触れ合った肩。彼の体温が、冷え切った僕の皮膚にじわじわと侵食してきて、呼吸のリズムが狂った。

「……お前、俺を撮った時の音。悲鳴みたいだったぞ。
 ……次に撮ったら、そのカメラと一緒に、お前を壊してやる」
「……いいよ……壊して。九条くんなら……いい」
 小さく、でも逃げずに答える。
 九条の動きが、ほんの一瞬止まった。

 次の瞬間、大きな手が僕のカメラを包み込む。
 壊す気配はない。ただ、レンズの冷たさを確かめるように、
 ゆっくりと指を這わせるだけだった。

「……佐伯」
 低く、名前を呼ばれる。
「レンズ越しじゃなくて、俺を見ろ」
 命令に逆らえず、僕はゆっくりと顔を上げた。

 レンズを通さない九条くんの瞳。
 痛いほど鋭いのに、深海の底みたいに静かで。
 そこに映っている自分が、逃げ場を失っていた……
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