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僕が恋した君は人間じゃなかった
『屋上で、半妖がポンコツ宣言』コメディ編
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「……で」
一段落して、俺は改めて切り出した。
「整理すると……ハズキは半妖のオオカミ男」
「うん」
「条件次第で動画みたいな耳が出て」
「基本的にはね。まあ、たまに制御不能になるけど」
「で、致命的にポンコツ、なんだ」
「そこは断固として訂正を求めたい!」
ハズキは必死に抗議のジェスチャーをした、
あえて視線を外して無視を決め込んだ。
「……それで。結局、お前は俺のことどう思ってるんだよ」
一番肝心で、一番聞きそびれていた問いを、今さらながら投げかける。
ハズキは一瞬だけ鳩が豆鉄砲を食ったような顔をしたが、
やがて困ったように、けれど隠しきれない熱を帯びた瞳で笑った。
「……好きに決まってるじゃん。
わざわざこんな夜中に屋上に呼び出すくらいには」
「いつから」
「えーっと……たぶん、小学校の時、
だいちが俺の落とした消しゴムを無言で拾ってくれた時」
「初恋が早すぎるだろ」
「そこから一途にずっと! 四六時中ずっと!」
声を張り上げるハズキの顔が、月光の下で林檎のように赤く染まる。
「でもさ、いざ通じ合っちゃうと急に……俺、人外だし。
だいちは普通の人間だし」
「悲劇のヒロイン属性、まだ残ってたのか」
「だって怖いだろ! 付き合うってなったら、色々あるじゃないか」
「耳の管理とかか?」
「だから耳の管理って言うな! 盆栽じゃないんだから!」
ハズキが肩を怒らせた。
俺はそんな彼との距離を、もう一歩だけ詰めた。
「一緒に悩めばいいだろ。今までだって、
宿題忘れた時も、変な校則に引っかかった時も、そうしてきたじゃん」 「……」
「お前が人間じゃなくても、俺たちのやり方が変わる理由にはならないよ」
ハズキはしばらく呆然と黙り込んでいたが、
やがて観念したように深い溜め息を吐いた。
「……じゃあ、今日から恋人、ってことでいいの?」
「そうなるな。異論がなければ」
「マジで? 夢じゃない?
俺、実はさっきフェンスに頭打って気絶してない?」
「マジだよ」
確信を得た瞬間、ハズキの様子が劇的に変わった。
「え、ちょ、待って! 待ってだいち!
俺、肝心の告白のキメ台詞まだ言ってないんだけど!」
「さっきのポンコツ談義で十分伝わったよ」
「初デートどうする!? 映画? それともお互いの種族の歴史を学ぶ博物館!?」
「落ち着けって。お前、情緒が迷子すぎる」
その時だった。
ハズキの頭頂部から「ぽんっ」と小気味よい音がしそうな勢いで、
三角形の毛むくじゃらの耳が勢いよく飛び出した。
「……おい、出てるぞ」
「え、嘘!? やべっ!」
慌てて両手で押さえにかかるハズキだったが、耳は意思を持っているかのようにパタパタと動き、一向に引っ込む気配がない。
「あー、もう! 嬉しいと勝手に出ちゃう仕様なんだよこれ!」
「仕様が雑すぎんだろ」
お互いの顔を見合わせ、どちらからともなく吹き出した。
夜の学校、立入禁止の静寂を切り裂くように、
二人の笑い声が屋上に響き渡る。
ただ、少しだけ特別で、ひどく賑やかな恋が始まっただけだ。
たぶん、明日からも、この先も、騒がしい日々は続くのだろう。
俺はそんな予感を心地よく感じながら、ハズキの頭の上で所在なげに揺れる耳に、そっと指先で触れた。
「……っ、引っ張るなよ! 敏感なんだから!」
「引っ張らないよ。……たぶん」
「たぶん!? 今、たぶんって言ったろ!」
屋上の境界線の上で、二人の影はどこまでも明るく重なっていた……
《完》
一段落して、俺は改めて切り出した。
「整理すると……ハズキは半妖のオオカミ男」
「うん」
「条件次第で動画みたいな耳が出て」
「基本的にはね。まあ、たまに制御不能になるけど」
「で、致命的にポンコツ、なんだ」
「そこは断固として訂正を求めたい!」
ハズキは必死に抗議のジェスチャーをした、
あえて視線を外して無視を決め込んだ。
「……それで。結局、お前は俺のことどう思ってるんだよ」
一番肝心で、一番聞きそびれていた問いを、今さらながら投げかける。
ハズキは一瞬だけ鳩が豆鉄砲を食ったような顔をしたが、
やがて困ったように、けれど隠しきれない熱を帯びた瞳で笑った。
「……好きに決まってるじゃん。
わざわざこんな夜中に屋上に呼び出すくらいには」
「いつから」
「えーっと……たぶん、小学校の時、
だいちが俺の落とした消しゴムを無言で拾ってくれた時」
「初恋が早すぎるだろ」
「そこから一途にずっと! 四六時中ずっと!」
声を張り上げるハズキの顔が、月光の下で林檎のように赤く染まる。
「でもさ、いざ通じ合っちゃうと急に……俺、人外だし。
だいちは普通の人間だし」
「悲劇のヒロイン属性、まだ残ってたのか」
「だって怖いだろ! 付き合うってなったら、色々あるじゃないか」
「耳の管理とかか?」
「だから耳の管理って言うな! 盆栽じゃないんだから!」
ハズキが肩を怒らせた。
俺はそんな彼との距離を、もう一歩だけ詰めた。
「一緒に悩めばいいだろ。今までだって、
宿題忘れた時も、変な校則に引っかかった時も、そうしてきたじゃん」 「……」
「お前が人間じゃなくても、俺たちのやり方が変わる理由にはならないよ」
ハズキはしばらく呆然と黙り込んでいたが、
やがて観念したように深い溜め息を吐いた。
「……じゃあ、今日から恋人、ってことでいいの?」
「そうなるな。異論がなければ」
「マジで? 夢じゃない?
俺、実はさっきフェンスに頭打って気絶してない?」
「マジだよ」
確信を得た瞬間、ハズキの様子が劇的に変わった。
「え、ちょ、待って! 待ってだいち!
俺、肝心の告白のキメ台詞まだ言ってないんだけど!」
「さっきのポンコツ談義で十分伝わったよ」
「初デートどうする!? 映画? それともお互いの種族の歴史を学ぶ博物館!?」
「落ち着けって。お前、情緒が迷子すぎる」
その時だった。
ハズキの頭頂部から「ぽんっ」と小気味よい音がしそうな勢いで、
三角形の毛むくじゃらの耳が勢いよく飛び出した。
「……おい、出てるぞ」
「え、嘘!? やべっ!」
慌てて両手で押さえにかかるハズキだったが、耳は意思を持っているかのようにパタパタと動き、一向に引っ込む気配がない。
「あー、もう! 嬉しいと勝手に出ちゃう仕様なんだよこれ!」
「仕様が雑すぎんだろ」
お互いの顔を見合わせ、どちらからともなく吹き出した。
夜の学校、立入禁止の静寂を切り裂くように、
二人の笑い声が屋上に響き渡る。
ただ、少しだけ特別で、ひどく賑やかな恋が始まっただけだ。
たぶん、明日からも、この先も、騒がしい日々は続くのだろう。
俺はそんな予感を心地よく感じながら、ハズキの頭の上で所在なげに揺れる耳に、そっと指先で触れた。
「……っ、引っ張るなよ! 敏感なんだから!」
「引っ張らないよ。……たぶん」
「たぶん!? 今、たぶんって言ったろ!」
屋上の境界線の上で、二人の影はどこまでも明るく重なっていた……
《完》
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