『恋のアラカルト:BL・超短編集』~どの恋が好き?~

るみ乃。

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『神様、お願い!恋させて!!』

第3章 願いのその先で、恋は叶う~恋は願いの外側で芽吹く~

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 世界には、願いが叶う瞬間というものがある。
 ただし、それは願った本人が思い描いた通りとは、
 ちょっとだけ違う形でやってくることが多い。

 放課後の校舎裏。
 春風が、コンクリートの隙間をすり抜けてくる。

 ユウは、フェンスの前で立ち尽くしていた。
 胸の奥で、何かがドキドキ跳ねている。
 それが緊張なのか、覚悟なのか、本人にもまだよくわからない。

 視線の先には、白髪の少年……神様。
 人間の姿を借りたその神は、いつも通りクールな顔で、
 ユウの少し後ろに立っている。

 二人の距離は、腕一本分ほど。
 近いようで、まだ踏み込めない絶妙な距離感。

 ユウは、最近気づき始めていた。
 無意識に神様の姿を探してしまうこと、
 声をかけられなくても、
 そこに“いる”だけで妙に安心する自分がいることに。

 一方で神様も察していた。
 ユウは、誰かに恋をしようとしているわけではなく、
 すでに「誰か」を想ってしまっていることに。
 その相手が誰か
 答えは明白なのに、神様はあえて口にしなかった。

「……今日、なんで呼び出したか分かります?」
 ユウの声は、ほんの少し震えていた。
 逃げ道を探すみたいに、視線が揺れる。

 神様は肩をすくめる。
「さあ。君はいつも唐突だな」

 その軽い言葉に、ユウは苦笑する。
「逃げられない」と腹をくくった表情だった。

 告白の準備、それは何日も前から始まっていた。
 ノートに書いては消し、消しては書き、
 鏡の前で赤面して練習して、布団に突っ伏して。
 そのすべてを、神様は見ていた。

「俺……最初は、恋愛したくて願ったんです」
 ユウは正直に言葉を紡ぐ。
「彼女がほしいとか、青春したいとか、そんなんで……」

 神様は、黙って聞いている。
 その沈黙が、ユウを少しだけ前に押す。

「でも今は、違うねん」

 風が一瞬、強く吹いた。
 桜の花びらがふわりと舞い、二人の間を横切る。

「俺、あんたとおる時間が、一番落ち着くんです」

 それは、告白の前段階。
 でももう後戻りはできない。

 神様は、ほんの一瞬だけ目をそらす。
 茶目っ気の裏に隠してきた感情が、そっと揺れる。

 この恋は―願いの契約には含まれていない。
 だからこそ、奇跡ではなく、選択になる。
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