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【閑話】きりかぶの上で(ラファ×ギル)

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 いまだ晴れない濃い霧の中――。

 結局、ジークの姿が見えなくなってまもなく、ラファエルたちも(ラファエルがギルベルトを引きずるようにして)自ら場所を変えた。




「ねぇギル……ジークには何があるんですか?」

 ラファエルは優しく問いながら、にこりと微笑んだ。
 微笑みながら、一方で脱がしかけていた服でギルの両腕を後ろ手に縛り上げる。

「いっ……ちょ、お前何してっ……!」

 かと思うと、振りほどこうと身を捩るギルベルトを無視して、ラファエルは相変わらずの笑みを貼り付けたまま、

「聞いているのはこっちです」

 と、次には傍らにあった大きな切り株の上へとその上体を押さえつけた。

 ギルベルトの視界が見事な年輪で埋め尽くされる。膝を折られ、力尽くでうつ伏せられて、腰だけを突き出したような格好になったギルベルトが、焦ったように振り返る。

「いっ……てぇな! マジ、くそどけよ! 手ぇほどけ!!」
「こうでもしないとあなた、ちゃんと話ができないでしょう」
「はぁ?! ざっけんな!! 話くらい普通にできるわ!」
「そうですか? このまま自由にしたら、すぐにでも羽を出して空に逃げるつもりじゃないんですか?」

 今日僕がろくにべないことはあなたも知ってますしね。

 あえて淡々と告げてみたら、肩越しにラファエルを睨んでいたギルベルトが一瞬目を泳がせた。図星だったらしい。

 ラファエルは微かに肩を揺らした。

「まぁ、ちゃんと答えられたら離してあげますから」
「嘘をつけ!」
「心外だなぁ。今までに僕が嘘をついたことがありますか?」
「どの口がっ……」
「知らないんですか? 天使にはそういうルールがあるんです。不用意に嘘をついたら、強制的に堕天させられるんですよ」

 ……それがまず嘘だが。

 けれども、そんなふうに少しばかり真面目に語るだけで、ギルベルトはいとも簡単に信じそうになる。挙句、「じゃあ、あれは俺の勘違いか……」などと反省の色すら浮かべそうになり、「違う、今はそんな場合じゃねぇ!」と慌てて思考を改めた。

 ……あぁ、なんてばかな男可愛いひと

 ラファエルはギルベルトの上半身を押さえつけたまま、笑うような呼気を漏らした。
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