20 / 42
舞う乙女は夜に咲く
2.さよなら、王子様
しおりを挟む
今日も一日が終わった。
紙の山がなくなりひと安心していると、扉が叩かれた。
「どうぞ」
「失礼します。お疲れ様です」
シェリアさんの番さんは、毎日迎えに来ると言っていた。
少しずつ、新しい日常に慣れている。
しかし、今日はまた少し違った。
「トヴァ。お疲れ様です。隣の方は?」
「そうだった。レミアさんの代わりで配属されたグロッサムさん。
ファレンさんと同じです。
一ヶ月、よろしくお願いします。」
「そうです。グロッサムさん。
初めまして。シェリアです。
そして、一ヶ月の期間配属されているファレンさんです。
よろしくお願いします」
「お願いします」
ふと、グロッサムさんが俺を見た。気がした。
三度目の再会は、互いに平服姿で叶った。
「では…シェリア、帰りますか」
「はい。
グロッサムさん、
ファレンさんも出口までよかったら一緒に行きますか?」
「「はい」」
廊下を歩いていると、一昨日の男性が目の先から歩いてきた。
出待ちの男性とは違い、
目を合わせることもなくすれ違う。
門でシェリアさんたちと別れ、
自分も帰ろうとすると、腕を捕まれた。
「あの…ファレンさん。
よかったら、この後、食事、しませんか?」
不安と期待がこめられた瞳が、俺を見つめている。
返事をしようとすると、
近くを歩いていた男女がこちらを向いた。
「姫。王子だけはやめておけ。
気に入られたら、逃げられないって噂だ。
なんなら、今から交ざるか?この女、物好きでさ」
女性の腰に手を回したまま、
見覚えのある男性平然とそう言った。
「遠慮します」
「そうか。さすが一夜姫」
男性は完全に諦めたらしく、俺を見ることはなくなった。
「王子、姫だけはやめてください!
その人は貞操がないと評判で…私が相手をしますから」
男性の腕に抱かれている女性は、
悲鳴をあげるよう声で懇願している。
「お気遣い、ありがとうございます。
ですが、私事へ口出しは無用です」
「王子がお怒りだ。行こう」
男性は無理やり女性を誘導し、移動を始める。
最後の足掻きのように振り向いた。
「待って…王子!
お願いです…私たちの王子でいてください」
しかし、男性が抱き上げた後、耳元で何か言うと、
すっかり大人しくなり、そのまま去っていく。
それの影すら見えなくなると、グロッサムさんの方を向く。
「一応、言い訳をしますが。
確かに貞操はないですが、相手は選んでいます」
「私も、同じです」
俺たちは、顔を合わせて笑った。
「食事、行きますか。
空腹は、冷静さを欠く原因になります」
そう言うと、グロッサムさんは驚いた。
そして、やはり花のように微笑む。
「は、い!よかったら、行きたい店があります。
女性だけでは入りづらくて… お付き合いいただけますか?」
「でしたら、
次回は俺の行きたい店に付き合ってもらえますか?
男性だけだと入りづらい店なので」
「はい!ぜひ。
では、行きましょうか」
そして、楽しそうに、さらりと出された手に驚く。
「あ…ごめんなさい。
いつもの癖で…こうすると、嬉しそうにしているので」
そう言いながら、行き場を失った手が宙で止まっている。
確かに、いかにも女性受けしそうな行動ではある。
そして、王子と言われる理由の一つだろうと思った。
「そうですか。俺は、どちらかというと」
宙にあるままの手をとって、指先を絡める。
するりと滑る滑らかさが心地よい。
「これ…まるで恋人みたいです」
戸惑うような表情に、照れと嬉しさが見えた気がした。
「確かに、誰かが、そう言ってましたね。
ごっこでしたが、
嫌ではなかったので…グロッサムさんが不快でなければ」
「はい。このまま…お店の近くまで歩きたいです」
「ありがとうございます」
そうして、二人で食事を終え、そのまま別れた。
家に帰ると、出迎えた兄さんが驚いている。
「おかえり。珍しいな。食事は?」
「食べました」
「そうか。だったら、俺の部屋へ来ないか?話がある」
「はい」
先導する背を追って、部屋へ入る。
定位置に座ると、じっと兄さんは俺を見た。
「グロッサムさんの気配がするが、さっきまで一緒にいたのか?」
「はい。食事に誘われたので」
「食事だけか」
「はい」
「珍しいな。武踏会の希望を自分から出したとも聞く。
一部の者が"ファレンが初めて希望を出すのは男か、女か"で
賭け事をしていたそうだ。
初めてだと驚いていた受付の一人勝ちだと、言っていた。
「そうですか」
おそらく、あのときの受付だろうと勝手に思う。
驚いていたのも納得だった。
もう終わりかと思ったが、
兄さんが気まずそうに迷っているので、
続きを視線で促した。
「あと、聞いたんだ…姫のこと。宿で会い、
男性と夜の相手だけをすると。有名、らしいな。
気にしたことがなく、今まで知らなかった。
知ろうとしなかった」
なんだ、そんなことか。
と思った。
ついに目を伏せて、暗い表情になる兄さん。
何を気にしているのかが、俺にはわからなかった。
「それが、どうしたんです?」
「悪かった。男同士で…とか、そういうことは思わない。
だが、なにか悩みがあったかもしれないと思うとな。
もっと、気にかけていれば…と悔いている。
自己満足だと分かっている」
「兄さんは、俺のこと十分に助けてくれています。
だから、気にしないでください。
それより、聞きたいことがあります」
「なんだ」
薄暗いままの声が気になるが、そのまま続ける。
「グロッサムさんの食の好みを知っていますか?
次の約束をしたんですが、
俺の好みだけで選ぶのは申し訳ないので」
「あ、ああ…知っている。
そういえば、少し前。
最近できた近所の喫茶店の…パンケーキが美味しいと、言っていた。
ファレンも甘いものは好きだろう」
驚いたまま、
思い出すようにゆっくりと語られた事柄を記憶する。
女性向けの喫茶店は、男性だけだと入りにくい雰囲気がある。
ちょうどいいと思った。
「ありがとう」
「ああ。また何かあれば言え」
兄さんは穏やかな笑みを浮かべて、そう言った。
その表情に安堵する。
「助かります。そろそろ寝たいので、いいですか」
「ああ。話を聞いてくれて、ありがとう。おやすみ」
「おやすみ」
部屋を出ると、自室の前からヒタヒタと音がした。
遠ざかるのを待って、部屋へ入る。
鍵を閉めて、そのまま寝台へ寝そべり、目を閉じた。
翌日。
仕事が終わると、同じように門で上司と別れる。
「グロッサムさん。今日は俺行きたい店へ行く約束です。
いいですか?」
「はい。とても楽しみにしていました」
同じように手を繋ぎ、店に着く。
すると、俺を見た男性がこちらへ近づいてくる。
「へー。姫、男にしか興味ないと思ってた。
ていうか、食事をとるんだな」
「どちら様ですか。失礼します」
気にせず通りすぎようとするが、腕を掴まれる。
「今夜、久しぶりにどう?女は色々と面倒だろ」
「お断りします。離してください」
繋いでいる指先をほどいて、
グロッサムさんに先に店内へ行くよう促した。
腕を振り払い、男性が去ると、店内へ入る。
グロッサムさんを見つけると、急いで席に座る。
「お待たせしました。注文は決まりましたか?」
「はい」
手をあげると、足早に店員がくる。
「私はこちらを…お願いします」
「俺は、こちらをお願いします」
俺は目についた品を注文した。
店員が去ると、
グロッサムさんは嬉しそうな表情で窓の外を見ていた。
「なにか、良いことがありましたか?」
「あ、はい。
ファレンさんが頼んだのが、最後まで迷っていたものだったので。
なんとなく、嬉しくて」
はにかむ笑みでそう言った。
俺の心臓が跳ねた。
「そうですか」
「はい」
視線を窓の向こうへ戻したグロッサムさんは、
相変わらず笑みを浮かべている。
眩しい気がして、同じ方向を向く。
外は、楽しそうに話ながら街を行き交う人々で賑わっている。
少しすると注文した品が揃い、店員が去る。
なんとなく、さっきの言葉を思い出し、
目の前にあるパンケーキの隅を切り分けた。
「よければ、どうぞ」
「いいのですか?」
「迷っていたんですよね」
「ありがとうございます。…ぁ、…美味しい」
思わずこぼれたような笑みと言葉に、見とれた。
はっとした表情の後、手元で銀が優雅に踊る。
それを見ていると、目があった。
「お礼に…よかったら、私のもどうぞ?」
「ありがとうございます。……美味しいですね」
ソースまで食べきり、皿を空にして店を出る。
「あの…これからのご予定は、ありますか?」
「あとは帰るだけです」
「もし、よかったら。もう一軒行きませんか?」
案内されたのは宿だった。
部屋に入って長椅子に座り、少しすると、
受付で注文していたお菓子が運ばれてくる。
それを置くと、店員は足早く部屋を出た。
グロッサムさんは、さっそく食べ始めている。
「これ、最高に美味しいのです。
…ん、美味しい」
「いただきます…美味しいです」
「でしょう?あれが好きなら、おそらく好みかと思って。
よかったです」
終始にこやかなグロッサムさん。
皿とグラスが空になると、
グロッサムさんが俺にもたれかかってくる。
お菓子と一緒に頼んだ葡萄酒のせいか、
グロッサムさんの頬は赤い。
潤んだ瞳が俺を見ながら、
俺の手をつかんで下肢へ誘導する。
「約束まで待てないんですか?」
「約束は、約束です。
今日は、いれないでください」
グロッサムさんは、空いている片手で服を暴くと、
俺の手をすでにぬかるんでいる秘部へ当てる。
「びしょ濡れ、ですね…気持ちいいですか?」
誘いに乗り、当てられた手で濡れているそこを愛撫する。
次々と溢れてくる蜜は、
甘い香りで先へ先へとナカへ誘うようだ。
グロッサムさんの魔力が絡みつく。
自分とよく似た、他人では初めて触れる魔力に驚いた。
「指、いれて…っ、くださ…ぁ!ぅんっ、あ……っ!」
望み通りに指を鎮めると、
奥へ奥へと誘導するように腰が動いている。
しかし、あえて浅いところばかりを刺激する。
物足りなさそうに動く激しくなる腰つきに合わせ、
もう一本指を入れる。
「せっかくですから、少し慣らしておきますか?」
「ぁ…は、い。お願い、しま、す…っ」
グロッサムさんは何度か達しながら、
三本を痛みなく受け入れるようになると、
何かを強請るように俺を見る。
「は…っ、ぁ…ファレンさん」
「なんですか」
「あの、シたい…です。いれないまま、ですけど」
指をくわえているナカがうねって吸いついてくる。
ふと、一度だけしたことがあることを思い出した。
「いいですよ。目を瞑って、ここにうつ伏せてください。
それで、腰をあげて、足はとじてください」
「はい…こう、ですか?」
俺が長椅子から立ち上がると言う通りに動き、
足に蜜を滴らしながら、こちらに秘部を晒すグロッサムさん。
「必ず、動かないでくださいね」
グロッサムさんの魔力と同じくらいの力で避妊魔法をかけながら、
萎えたままの自身をだして無理やり奮わせ、
濡れている足の隙間に差し入れる。
グロッサムさんの魔力は変化しながら俺を飲もうとする勢いで、
常に同じ力になるよう調節が必要だと感じた。
「はい…っ!あ…んぁっ、はいって…る…ん、んんっ!」
「いれていません。が、近い感覚だと思います」
「あ、あっ、……んっ、は…っ、ぅ…んんっ!」
知識だけを頼りに、女性が弱いとされる部位を擦る。
男性に女性の真似をしろと受け入れたことはあるが、
与えるのは初めてだ。
嬌声をあげながら、
腰を動かさないように悶えている様子に安心する。
速度をあげ、わざと水音をさせながら高みへと導く。
「ファレンさ…も、…ぅっ、イかせ、てくださ…ぁ、あ、んぁ…っ」
「どうぞ。イってください」
「は、い…っ、イきま…っ、ぅ、あ、んっ、…んぁあああああ!」
強く速く擦ると、
グロッサムさんは甘く高い声で蜜を散らしながら達した。
刺激しないようにそっと自身を抜く。
「大丈夫ですか?」
「…ぁ、はい。おふろ、いきたいです」
「立てますか?」
「はい…なんとか」
ゆっくりと起き上がると、
グロッサムさんはフラフラとした歩みで、
そのまま風呂場へ向かった。
あとで入ろうと思い、服を脱いでいると、
風呂場から大きな音がした。
「大丈夫ですか?」
「…あ、…は、い」
扉ごしに聞こえる歯切れの悪い返事に焦る。
「失礼します」
「だ、め!今は…ぁ」
扉をあけると、事後のような気配のグロッサムさんがいた。
シャワーから落ちる水に濡れながら、
さっきまで自分の指が埋まっていた秘部には、
グロッサムさんの細い指が埋まっていて、
シャワーのそれとは別の水音がする。
艶のある声は、達しそうな予兆とよく似ている。
「物足りませんでした?」
「ちが…ぅ、の。魔力が、乱れて、体が…ぁ、初めてで…っ」
「どんな風に?」
「ファレンさんが触れたとこ…っ、が、熱くて…っ。
それで…っ、また、ぁ…ほしく、なって」
しだいに水音が激しくなり、
同じくらい呼吸が荒くなっていく。
「見ていますから、イってください」
「はい。見て、ください…っ、ん、んん、ぁあ、ああああん…っ!、…ぁ、は…」
達したばかりでぼんやりと泳ぐ視線が俺を見ている。
「ファレンさん、わたし、女…ですよね?」
「女性ですよ。どこからみても」
不思議な質問だったが、率直に答えた。
すると、グロッサムさんはとても嬉しそうに微笑んだ。
そのまま寝息が聞こえ始める。
冷えてはいけないと思い、
抱き上げて風呂場からベッドへおろす。
毛布をかけて、風呂場へ向かった。
身支度をすませて部屋へもどると、
上半身を起こしたグロッサムさんがこちらを見ていた。
近づくと、恥ずかしそうに目をそらされる。
「ありがとう、ございます」
「いえ。体の具合はどうですか?」
「大丈夫です。鍛えてますから」
儚く微笑むグロッサムさんは、毛布で体を隠しながら俺を見る。
「そうですか。着替えますか?」
「はい」
風呂場の近くに着替えがあったのを思い出す。
「目をとじるので、移動してください」
「ありがとうございます」
足早に向かったグロッサムさん。
着替え終わるのも早く、宿を出ると途中まで見送り、
仮眠寮へ戻った。
紙の山がなくなりひと安心していると、扉が叩かれた。
「どうぞ」
「失礼します。お疲れ様です」
シェリアさんの番さんは、毎日迎えに来ると言っていた。
少しずつ、新しい日常に慣れている。
しかし、今日はまた少し違った。
「トヴァ。お疲れ様です。隣の方は?」
「そうだった。レミアさんの代わりで配属されたグロッサムさん。
ファレンさんと同じです。
一ヶ月、よろしくお願いします。」
「そうです。グロッサムさん。
初めまして。シェリアです。
そして、一ヶ月の期間配属されているファレンさんです。
よろしくお願いします」
「お願いします」
ふと、グロッサムさんが俺を見た。気がした。
三度目の再会は、互いに平服姿で叶った。
「では…シェリア、帰りますか」
「はい。
グロッサムさん、
ファレンさんも出口までよかったら一緒に行きますか?」
「「はい」」
廊下を歩いていると、一昨日の男性が目の先から歩いてきた。
出待ちの男性とは違い、
目を合わせることもなくすれ違う。
門でシェリアさんたちと別れ、
自分も帰ろうとすると、腕を捕まれた。
「あの…ファレンさん。
よかったら、この後、食事、しませんか?」
不安と期待がこめられた瞳が、俺を見つめている。
返事をしようとすると、
近くを歩いていた男女がこちらを向いた。
「姫。王子だけはやめておけ。
気に入られたら、逃げられないって噂だ。
なんなら、今から交ざるか?この女、物好きでさ」
女性の腰に手を回したまま、
見覚えのある男性平然とそう言った。
「遠慮します」
「そうか。さすが一夜姫」
男性は完全に諦めたらしく、俺を見ることはなくなった。
「王子、姫だけはやめてください!
その人は貞操がないと評判で…私が相手をしますから」
男性の腕に抱かれている女性は、
悲鳴をあげるよう声で懇願している。
「お気遣い、ありがとうございます。
ですが、私事へ口出しは無用です」
「王子がお怒りだ。行こう」
男性は無理やり女性を誘導し、移動を始める。
最後の足掻きのように振り向いた。
「待って…王子!
お願いです…私たちの王子でいてください」
しかし、男性が抱き上げた後、耳元で何か言うと、
すっかり大人しくなり、そのまま去っていく。
それの影すら見えなくなると、グロッサムさんの方を向く。
「一応、言い訳をしますが。
確かに貞操はないですが、相手は選んでいます」
「私も、同じです」
俺たちは、顔を合わせて笑った。
「食事、行きますか。
空腹は、冷静さを欠く原因になります」
そう言うと、グロッサムさんは驚いた。
そして、やはり花のように微笑む。
「は、い!よかったら、行きたい店があります。
女性だけでは入りづらくて… お付き合いいただけますか?」
「でしたら、
次回は俺の行きたい店に付き合ってもらえますか?
男性だけだと入りづらい店なので」
「はい!ぜひ。
では、行きましょうか」
そして、楽しそうに、さらりと出された手に驚く。
「あ…ごめんなさい。
いつもの癖で…こうすると、嬉しそうにしているので」
そう言いながら、行き場を失った手が宙で止まっている。
確かに、いかにも女性受けしそうな行動ではある。
そして、王子と言われる理由の一つだろうと思った。
「そうですか。俺は、どちらかというと」
宙にあるままの手をとって、指先を絡める。
するりと滑る滑らかさが心地よい。
「これ…まるで恋人みたいです」
戸惑うような表情に、照れと嬉しさが見えた気がした。
「確かに、誰かが、そう言ってましたね。
ごっこでしたが、
嫌ではなかったので…グロッサムさんが不快でなければ」
「はい。このまま…お店の近くまで歩きたいです」
「ありがとうございます」
そうして、二人で食事を終え、そのまま別れた。
家に帰ると、出迎えた兄さんが驚いている。
「おかえり。珍しいな。食事は?」
「食べました」
「そうか。だったら、俺の部屋へ来ないか?話がある」
「はい」
先導する背を追って、部屋へ入る。
定位置に座ると、じっと兄さんは俺を見た。
「グロッサムさんの気配がするが、さっきまで一緒にいたのか?」
「はい。食事に誘われたので」
「食事だけか」
「はい」
「珍しいな。武踏会の希望を自分から出したとも聞く。
一部の者が"ファレンが初めて希望を出すのは男か、女か"で
賭け事をしていたそうだ。
初めてだと驚いていた受付の一人勝ちだと、言っていた。
「そうですか」
おそらく、あのときの受付だろうと勝手に思う。
驚いていたのも納得だった。
もう終わりかと思ったが、
兄さんが気まずそうに迷っているので、
続きを視線で促した。
「あと、聞いたんだ…姫のこと。宿で会い、
男性と夜の相手だけをすると。有名、らしいな。
気にしたことがなく、今まで知らなかった。
知ろうとしなかった」
なんだ、そんなことか。
と思った。
ついに目を伏せて、暗い表情になる兄さん。
何を気にしているのかが、俺にはわからなかった。
「それが、どうしたんです?」
「悪かった。男同士で…とか、そういうことは思わない。
だが、なにか悩みがあったかもしれないと思うとな。
もっと、気にかけていれば…と悔いている。
自己満足だと分かっている」
「兄さんは、俺のこと十分に助けてくれています。
だから、気にしないでください。
それより、聞きたいことがあります」
「なんだ」
薄暗いままの声が気になるが、そのまま続ける。
「グロッサムさんの食の好みを知っていますか?
次の約束をしたんですが、
俺の好みだけで選ぶのは申し訳ないので」
「あ、ああ…知っている。
そういえば、少し前。
最近できた近所の喫茶店の…パンケーキが美味しいと、言っていた。
ファレンも甘いものは好きだろう」
驚いたまま、
思い出すようにゆっくりと語られた事柄を記憶する。
女性向けの喫茶店は、男性だけだと入りにくい雰囲気がある。
ちょうどいいと思った。
「ありがとう」
「ああ。また何かあれば言え」
兄さんは穏やかな笑みを浮かべて、そう言った。
その表情に安堵する。
「助かります。そろそろ寝たいので、いいですか」
「ああ。話を聞いてくれて、ありがとう。おやすみ」
「おやすみ」
部屋を出ると、自室の前からヒタヒタと音がした。
遠ざかるのを待って、部屋へ入る。
鍵を閉めて、そのまま寝台へ寝そべり、目を閉じた。
翌日。
仕事が終わると、同じように門で上司と別れる。
「グロッサムさん。今日は俺行きたい店へ行く約束です。
いいですか?」
「はい。とても楽しみにしていました」
同じように手を繋ぎ、店に着く。
すると、俺を見た男性がこちらへ近づいてくる。
「へー。姫、男にしか興味ないと思ってた。
ていうか、食事をとるんだな」
「どちら様ですか。失礼します」
気にせず通りすぎようとするが、腕を掴まれる。
「今夜、久しぶりにどう?女は色々と面倒だろ」
「お断りします。離してください」
繋いでいる指先をほどいて、
グロッサムさんに先に店内へ行くよう促した。
腕を振り払い、男性が去ると、店内へ入る。
グロッサムさんを見つけると、急いで席に座る。
「お待たせしました。注文は決まりましたか?」
「はい」
手をあげると、足早に店員がくる。
「私はこちらを…お願いします」
「俺は、こちらをお願いします」
俺は目についた品を注文した。
店員が去ると、
グロッサムさんは嬉しそうな表情で窓の外を見ていた。
「なにか、良いことがありましたか?」
「あ、はい。
ファレンさんが頼んだのが、最後まで迷っていたものだったので。
なんとなく、嬉しくて」
はにかむ笑みでそう言った。
俺の心臓が跳ねた。
「そうですか」
「はい」
視線を窓の向こうへ戻したグロッサムさんは、
相変わらず笑みを浮かべている。
眩しい気がして、同じ方向を向く。
外は、楽しそうに話ながら街を行き交う人々で賑わっている。
少しすると注文した品が揃い、店員が去る。
なんとなく、さっきの言葉を思い出し、
目の前にあるパンケーキの隅を切り分けた。
「よければ、どうぞ」
「いいのですか?」
「迷っていたんですよね」
「ありがとうございます。…ぁ、…美味しい」
思わずこぼれたような笑みと言葉に、見とれた。
はっとした表情の後、手元で銀が優雅に踊る。
それを見ていると、目があった。
「お礼に…よかったら、私のもどうぞ?」
「ありがとうございます。……美味しいですね」
ソースまで食べきり、皿を空にして店を出る。
「あの…これからのご予定は、ありますか?」
「あとは帰るだけです」
「もし、よかったら。もう一軒行きませんか?」
案内されたのは宿だった。
部屋に入って長椅子に座り、少しすると、
受付で注文していたお菓子が運ばれてくる。
それを置くと、店員は足早く部屋を出た。
グロッサムさんは、さっそく食べ始めている。
「これ、最高に美味しいのです。
…ん、美味しい」
「いただきます…美味しいです」
「でしょう?あれが好きなら、おそらく好みかと思って。
よかったです」
終始にこやかなグロッサムさん。
皿とグラスが空になると、
グロッサムさんが俺にもたれかかってくる。
お菓子と一緒に頼んだ葡萄酒のせいか、
グロッサムさんの頬は赤い。
潤んだ瞳が俺を見ながら、
俺の手をつかんで下肢へ誘導する。
「約束まで待てないんですか?」
「約束は、約束です。
今日は、いれないでください」
グロッサムさんは、空いている片手で服を暴くと、
俺の手をすでにぬかるんでいる秘部へ当てる。
「びしょ濡れ、ですね…気持ちいいですか?」
誘いに乗り、当てられた手で濡れているそこを愛撫する。
次々と溢れてくる蜜は、
甘い香りで先へ先へとナカへ誘うようだ。
グロッサムさんの魔力が絡みつく。
自分とよく似た、他人では初めて触れる魔力に驚いた。
「指、いれて…っ、くださ…ぁ!ぅんっ、あ……っ!」
望み通りに指を鎮めると、
奥へ奥へと誘導するように腰が動いている。
しかし、あえて浅いところばかりを刺激する。
物足りなさそうに動く激しくなる腰つきに合わせ、
もう一本指を入れる。
「せっかくですから、少し慣らしておきますか?」
「ぁ…は、い。お願い、しま、す…っ」
グロッサムさんは何度か達しながら、
三本を痛みなく受け入れるようになると、
何かを強請るように俺を見る。
「は…っ、ぁ…ファレンさん」
「なんですか」
「あの、シたい…です。いれないまま、ですけど」
指をくわえているナカがうねって吸いついてくる。
ふと、一度だけしたことがあることを思い出した。
「いいですよ。目を瞑って、ここにうつ伏せてください。
それで、腰をあげて、足はとじてください」
「はい…こう、ですか?」
俺が長椅子から立ち上がると言う通りに動き、
足に蜜を滴らしながら、こちらに秘部を晒すグロッサムさん。
「必ず、動かないでくださいね」
グロッサムさんの魔力と同じくらいの力で避妊魔法をかけながら、
萎えたままの自身をだして無理やり奮わせ、
濡れている足の隙間に差し入れる。
グロッサムさんの魔力は変化しながら俺を飲もうとする勢いで、
常に同じ力になるよう調節が必要だと感じた。
「はい…っ!あ…んぁっ、はいって…る…ん、んんっ!」
「いれていません。が、近い感覚だと思います」
「あ、あっ、……んっ、は…っ、ぅ…んんっ!」
知識だけを頼りに、女性が弱いとされる部位を擦る。
男性に女性の真似をしろと受け入れたことはあるが、
与えるのは初めてだ。
嬌声をあげながら、
腰を動かさないように悶えている様子に安心する。
速度をあげ、わざと水音をさせながら高みへと導く。
「ファレンさ…も、…ぅっ、イかせ、てくださ…ぁ、あ、んぁ…っ」
「どうぞ。イってください」
「は、い…っ、イきま…っ、ぅ、あ、んっ、…んぁあああああ!」
強く速く擦ると、
グロッサムさんは甘く高い声で蜜を散らしながら達した。
刺激しないようにそっと自身を抜く。
「大丈夫ですか?」
「…ぁ、はい。おふろ、いきたいです」
「立てますか?」
「はい…なんとか」
ゆっくりと起き上がると、
グロッサムさんはフラフラとした歩みで、
そのまま風呂場へ向かった。
あとで入ろうと思い、服を脱いでいると、
風呂場から大きな音がした。
「大丈夫ですか?」
「…あ、…は、い」
扉ごしに聞こえる歯切れの悪い返事に焦る。
「失礼します」
「だ、め!今は…ぁ」
扉をあけると、事後のような気配のグロッサムさんがいた。
シャワーから落ちる水に濡れながら、
さっきまで自分の指が埋まっていた秘部には、
グロッサムさんの細い指が埋まっていて、
シャワーのそれとは別の水音がする。
艶のある声は、達しそうな予兆とよく似ている。
「物足りませんでした?」
「ちが…ぅ、の。魔力が、乱れて、体が…ぁ、初めてで…っ」
「どんな風に?」
「ファレンさんが触れたとこ…っ、が、熱くて…っ。
それで…っ、また、ぁ…ほしく、なって」
しだいに水音が激しくなり、
同じくらい呼吸が荒くなっていく。
「見ていますから、イってください」
「はい。見て、ください…っ、ん、んん、ぁあ、ああああん…っ!、…ぁ、は…」
達したばかりでぼんやりと泳ぐ視線が俺を見ている。
「ファレンさん、わたし、女…ですよね?」
「女性ですよ。どこからみても」
不思議な質問だったが、率直に答えた。
すると、グロッサムさんはとても嬉しそうに微笑んだ。
そのまま寝息が聞こえ始める。
冷えてはいけないと思い、
抱き上げて風呂場からベッドへおろす。
毛布をかけて、風呂場へ向かった。
身支度をすませて部屋へもどると、
上半身を起こしたグロッサムさんがこちらを見ていた。
近づくと、恥ずかしそうに目をそらされる。
「ありがとう、ございます」
「いえ。体の具合はどうですか?」
「大丈夫です。鍛えてますから」
儚く微笑むグロッサムさんは、毛布で体を隠しながら俺を見る。
「そうですか。着替えますか?」
「はい」
風呂場の近くに着替えがあったのを思い出す。
「目をとじるので、移動してください」
「ありがとうございます」
足早に向かったグロッサムさん。
着替え終わるのも早く、宿を出ると途中まで見送り、
仮眠寮へ戻った。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【完結済】25億で極道に売られた女。姐になります!
satomi
恋愛
昼夜問わずに働く18才の主人公南ユキ。
働けども働けどもその収入は両親に搾取されるだけ…。睡眠時間だって2時間程度しかないのに、それでもまだ働き口を増やせと言う両親。
早朝のバイトで頭は朦朧としていたけれど、そんな時にうちにやってきたのは白虎商事CEOの白川大雄さん。ポーンっと25億で私を買っていった。
そんな大雄さん、白虎商事のCEOとは別に白虎組組長の顔を持っていて、私に『姐』になれとのこと。
大丈夫なのかなぁ?
【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜
来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、
疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。
無愛想で冷静な上司・東條崇雅。
その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、
仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。
けれど――
そこから、彼の態度は変わり始めた。
苦手な仕事から外され、
負担を減らされ、
静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。
「辞めるのは認めない」
そんな言葉すらないのに、
無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。
これは愛?
それともただの執着?
じれじれと、甘く、不器用に。
二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。
無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。
※この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる