この現代にリアルファンタジー持ち込むな。

うなきのこ

文字の大きさ
1 / 3

吸血鬼がいる。

しおりを挟む

 突然だが吸血鬼という存在は知っているだろうか?
 吸血鬼とは読んでわかる通り血を吸う鬼、つまり化け物。名前の由来は食事が血だからで美味しい血にありつくとその生き物の血を吸い尽くし殺してしまうというところから。特に好みの味なのが人間の血らしい。適度な量と質と食べやすさで化け物に殺された人間は数え切れない程いたんだ。

 害悪な化け物は殺してしまえ、根絶やしにしろ、と先祖たちはそれはそれは奮闘したんだがその化け物には殺そうと思ってもなかなか死なないという特徴があってな。
 そんな厄介な化け物を排除するには十字架や銀、ニンニクといったものが有効なのだとか。これらを突き止めるのに何度挑んだのだろな。その年月と犠牲は計り知れない。
 当時はそれなりの数の化け物がいてそれを駆逐する業者もいた。死ぬ可能性もあったからその分給料は良いが世界中に出張しなきゃならんし、語学力と忍耐力が必要で狭き門だったらしい。
 その後、一般常識として知られた吸血鬼対策の銀の十字架で一般人が、特にクリスチャンが知らず知らずのうちに何百体もの吸血鬼を成敗したのだとか。

 現代では吸血鬼は全滅したと伝えられていて空想上の生き物だったと知られているな。

 もし現代に吸血鬼がいて出会ってしまったら、真っ先に胸元から銀の十字架のペンダントを見せてさっさと死んでもらうなりどこかに行ってもらうなりして頂けるように銀の十字架は持ち歩いてるんだ。昔にいわゆる厨二病をこじらせて買ったちょっと高めの良い奴があるからな。
 なんだかずっと捨てられなくておっさんになった今でも俺のお守りになっている。俺はクリスチャンでは無いんだけどな。どちらかと言うと仏教徒。ま、血を吸われたら生きていけないし、と少しだけ吸血鬼にロマンを感じて持ってるだけとも言える。
 さて、この純銀製の十字架はさぞ効果があることだろう。吸血鬼にな。

 効果が…。

 さぞや…。

 あるって言ってくれ。


「……っんで効かねぇんだっ!」
「う~ん。慣れ、ですねぇ」
「クソがっ」
「クソではなく吸血鬼ですよ、幹彦さん。」
「名前を呼ぶなっゾワゾワする!というかなぜ名前を知っている!表札なんてないぞ…?」
「何故でしょうね」
 目の前に吸血鬼がいる。
 胸元にしまってあった銀製の十字架を取り出すも怖がる素振りがない。
 拝啓。どこかのご先祖さま。吸血鬼には銀や十字架が効くというのは伝え間違えですか?いや、慣れと言っていたから効いた時もあったのだろうが。どういうことだよ教えてくれ。敬具。


「……ニンニクは効くのか?」
 開き直ってみた。防御反応かもしれない。
「ニンニク、美味しいですよね」
 食べてた。食べられるのか。そもそも俺も吸血鬼にニンニクって本当に効くのだろうかと思ったことはある。銀や十字架とは系統が違うしな。食べるのか。

「……吸血鬼は血しか飲まないって聞いたが」
「血は主食で人間が食べるようなものは副菜みたいなものですね」

 舌なめずりしてらっしゃる。こちとら心臓バックバクなんだが。
 とはいえ質問に答えてくれるあたり和解できそうな気がする。

 どうにかして俺が食べられるという結末は避けなければ。

「好みの味ってあるんだろ?俺は医者に不摂生は良くないと年に1回、健康診断の時に言われるんだ。絶対美味しくない血だぞ」

 不摂生になってしまうのは仕方ない。うちはブラックなんだ。健康診断もやらせるし業務的にはギリギリグレーに近いからまだマシな企業な方ではあるとは思うが。

「年に1回しか言われないのなら健康ではあるということでしょう?じゃなければその不摂生のせいで入院しているでしょうから。それに不摂生だと言うなら私好みの味に変えることもできますから、むしろ嬉しいですよ」

 あぁ…墓穴を掘るってこういうことを言うのだな。会社員を30年以上もやってきて初めてじゃないか。
 会社員を30年…。

 どうにかして逃れようと考えている間、にんまりと笑う吸血鬼に身震いするが俺は絶対食べられたくない。まだやりたいことはそれなりにあるんだ。

「おれは50も手前のおじさんだぞ!?こんなおじさんの血なんて絶対ドロドロだろ!周りはみんな胃もたれにやられたり血圧計やら血液検査で引っかかってるんだ!」

「幹彦さんは引っかかってないみたいですよ?ほら」

 吸血鬼はいつの間にか俺の健康診断書を持っていて俺に該当欄を見せる。血圧は高めだが特筆するほどでもないライン。

「で、でも」
「諦めて食べられてくださいね。まずは味見から…」
「ちょ。ちょお!まてまてまてまてっ!おっさんが若いイケメンに押し倒されるとこなんて誰が得するんだ!やめろっいいかげん離れろ!」
「ん、この姿勢の押し倒したまま質疑応答が始まったので何も思っていないのかと思ってました。それに私はあなたよりうんと年上なので若くは無いですよ?顔は確かに時代関係なくかっこいいと言われるような造形ですね。整形する者も居る中、わたしはずっと天然ものですよ?」
「どうでもいい!顔近づけんな!やめろ!」



 その後、吸血鬼との押し問答を何とか耐え抜きある程度話が通じるおかげか、なんとか家から追い出すことに成功した。
 奴はその後は不法侵入してくることもなく一日を終えた。


 が、ほっとしたのもつかの間の翌日。
「何故いる」
「幹彦さんが迎え入れてくれましたよ?」
「いつ!?」
「深夜3時頃ですかね」
 全く記憶にございません。

 ダイニングにある椅子へ座って勝手にコーヒーを飲んでるイケメンが居るがこれは本当に俺が招き入れたのか。どこかの文献か漫画か小説かに、名前を呼ばれて返事をしてしまったら鍵をかけていたとしても家に入り込まれるのだと見た気がする。裏を返せば返事をしなければ入れないわけだが。最初に家にはいられた時は宅配便だと思っちまったんだよ。うるせぇ。
「警察案件…いや吸血鬼にはバチカンか?機能してんのか」
 俺はを追い出す算段を考えていた。

 ちなみにおとぎ話になりつつある目の前の吸血鬼を吸血される前になぜ本物の吸血鬼だと受け入れているのかについてだが。

 先日見かけたからだ。吸血現場を。
 いやぁ、あの時は首を噛みちぎる系(?)の殺人現場かと思って通報したんだけど警察が着く頃には跡形もなく消えてて、警察にはイタズラか薬物やってないかって俺の方が疑われた。解せん。

 まあ兎にも角にも目の前の吸血鬼をどうにかするのが最優先…。いや、会社に行くのが最優先。
「幹彦さんの留守は預かるのでご安心を。まずはご飯食べましょう?」
「………」
 やっぱ知らない間に薬物でもやってんのカナ?少し目を離した隙に食事が用意されている。
「ほら、早くしないと電車に乗り遅れてしまいますよ」
「…はぁ。」
 食べるのを躊躇ったがどうやら部屋にある食料で作ったらしく、それはつまり俺の金ってことで。食べ物を粗末にするのも憚られる。
 俺は諦めて吸血鬼の作った食事に手をつけた。
「…うまいな」
「おや、それは良かった。幹彦さんの好みに作っていこうと思って居るので遠慮なく意見を」
「居座る気か」
「勿論。味見程度ならまだしも今はしっかり食事吸血してしまうと倒れてしまいそうですから。どうせなら健康体にしてから最高に美味しい状態で頂こうかと」
「つぶさに説明どうも。相手するのも疲れてきた」
「それはそれは。」

 はぁ。バチカンってどこだっけ……。





しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

美しき父親の誘惑に、今宵も息子は抗えない

すいかちゃん
BL
大学生の数馬には、人には言えない秘密があった。それは、実の父親から身体の関係を強いられている事だ。次第に心まで父親に取り込まれそうになった数馬は、彼女を作り父親との関係にピリオドを打とうとする。だが、父の誘惑は止まる事はなかった。 実の親子による禁断の関係です。

仕方なく配信してただけなのに恋人にお仕置される話

カイン
BL
ドSなお仕置をされる配信者のお話

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

雄牛は淫らなミルクの放出をおねだりする

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

捜査員達は木馬の上で過敏な反応を見せる

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

後輩が二人がかりで、俺をどんどん責めてくるー快楽地獄だー

天知 カナイ
BL
イケメン後輩二人があやしく先輩に迫って、おいしくいただいちゃう話です。

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

処理中です...