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第4章
勇者達へ説明 2
しおりを挟むナギア side
静まり返った部屋にタイミングよくやって来たグリディーナは周りを見渡した後、明らかに様子のおかしい勇者達を不思議に思い質問をしてきた。
「話は済んだのですか?
それと、これの状況は?...」
「うーん、話したのですが、内容に驚いたのか全く反応しなくなっちゃいましたね...」
「どんな言い方をしたのですか?」
「いや、ただ異空間の女神と協力して帰還ゲート作ってるから時間かかるくらいしか言ってないです」
「...そういえば、元王女様を取り調べて今までの罪を吐いてもらったわ」
「え?...あの...」
「元王女様は自分から「奴隷になってこの街の為に死ぬまで働く」と言い出したから、清掃用奴隷に決まったわ」
「...そうですか。報告ありがとうございます...」
完全に僕の話をスルーして話を勧めてしまった。
何故か込み上げてくる悲しい感情を抑えながら僕はグリディーナさんの話をちゃんと聞き始めた。
「次の王はお偉いさん達が会議とか開いて決めようとしてるみたいだけど、私が最終決定権を任されているから、意思をしっかり持つ王を探すわ」
「操り人形みたいなのが王になったら大変ですもんね。
色々してもらいありがとうございます」
「もう、本当に大変よ...
あんた達の指名手配を解除と事件の真相を公開、王が決まるまでとはいえ、仕事も沢山あって辛すぎるわ...」
「...任せっぱなしにしてしまいすみません。
影を数体送りますので、お願いします.」
「ありがとう、私はそろそろ仕事に戻るわ。
帰還方法が見つかったそうですし、兵士長にも伝えときます」
グリディーナはある程度、現在の状況を説明したあと仕事に戻ってしまった。
手伝いの影を送るのは当たり前として、治安が悪化しないように街全体の見張りでもしようかね。
さて...いつまで勇者達はボーとしてるんだ?
もし、敵が襲撃してきた場合対応出来ないんじゃないかな?
「ほら!いつまで脳の処理が終わらないの?
...面倒臭いから魔法を使うか」
勇者達の脳に軽く干渉し情報処理のスキルを発動させると、次々と勇者達は元に戻り始めた。
「...あっ、ボーとしてしまいました。すみません」
「ねぇねぇ、そんなにボーとするなんてわざとだよね!?」
「違いますよ!だって、神様と協力してる感じの事を聞いたら誰だって驚きますよ!」
「うんうん、そうかそうか...あの状態で襲われてたら簡単に殺られてるだろうから、脳の処理速度を上げる修行をしないとね...他の勇者達も強制参加ね。
さすがにこんな事で驚かれていたら、この先が不安しか感じないからね。」
笑顔で言っているつもりなのに、白羅君達の青ざめて震え上がるのを目の前で見た他の勇者達がつられるように不安そうな顔をした。
「この事は後で良いか...
さっきの話の続きで、元の世界に帰るまで1年程の期間があるんだけど、残りたい人はいる?
異世界から地球に向けて帰る場合、こっちの異世界の同じ時間軸で帰ってもらわないと、こっちの異世界に来た時の時間帯に帰すことは出来ないんだ。
だから、こちらとしては全員同じタイミングで帰ってもらいたい」
帰りたいか帰りたくないか...そんな事を聞くと勇者達はそれぞれの反応を見せた。
・帰るのは当たり前だ!という表情
・迷うな~という表情
・やりたいこと出来てねぇ!という表情
・この異世界に残りたいという表情
・話を理解していないような表情
と様々だった。
「俺は残りたい!まだ、やってないことが沢山あるし、異世界来たのに森で遭難して帰るなんて嫌だ!」
「俺も異世界ハーレムをまだ......はっ!
エルフやダークエルフ、獣人に妖精を見てないから帰りたくない!」
突然声を上げたのは、森で遭難した勇者トリオの1人と、自分から1人で旅を始めた勇者の1人だった。
「じゃあ、帰れるようになるまでの間にやりたい事をやっちゃおうか。
確か、獣人に会いたいとか言っていたから、明日にでも獣人国の国に行こうか」
「え?...あっ、ありがとうございます!
(...何で、俺達が獣人に会いたいって知ってるんだ?)」
「丁度良いから言っとくね。
異世界ハーレムとか考えている人に言っとくけど、ただの下心から相手の人生を滅茶苦茶にしない方がいいよ?
当たり前だけど、相手はゲームのNPCや小説のような登場人物とは違う。
何かの出会いで結ばれるのは構わないけど、今のところ1人もいないね...」
異世界ハーレムを狙っていた勇者達の1部は僕の言葉に元気がなくなり、最後の一言が心に来たのか「うっ...」とか声が漏れていた。
「あと異世界小説に憧れを持つのは良いと思うけど、全ての異世界が小説の内容と同じと思っていると予想外の出来事に対応出来なくなるから注意ね。
僕は勇者達全員にはちゃんと帰ってもらうつもりでいるからね。本当にこの世界に来たい場合は地球でしっかり人生を終えてから来なよ
...僕はあんまり偉そうには言えないけどね」
勇者達はナギアの言葉をしっかりと聞いていく中、「地球でしっかり人生を終えてから来なよ」というセリフに一瞬驚いた。そして、ナギアの最後の発言を聞いた時、一部の勇者達はナギアの正体を察したのだった...
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