【完結R18】三度目の結婚~江にございまする

みなわなみ

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夜中に目覚めて

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 口の中がほんのりと甘い。
 私は……
 ……あぁ、また母上を探したのか。

 ん? 私は、誰の胸の中にいる?

……うっ、秀忠殿? えっ、どうして? なんか抱かれているけど……。

 やっぱり、頬がふっくらしてかわいい。

 知らずと秀忠殿の頬に手が伸びた刹那、手首を掴まれた。

「…くっ……」

 手首を掴んだ秀忠殿のほうが、痛そうな声をあげる。
 そういえば、怪我をしてましたね。
 「ふぅ」と一息ついた秀忠殿が、怒ったように尋ねてきた。

「大事ないのですか?」
「はい」
「母上を探しておられました」
「申し訳ありませぬ」
「言うておいてくだされば、気をつけました」
「……はい…」

 怒っておられる……いや、これが哀しんでおられるというやつか?

「あの……」
「なんです?」
「気味悪いと思われなかったのですか?」
「気味悪い?」
「母上を探す私を」
「……べつに」
「母上を探している間のことを、私は覚えておりませぬ」
「よかった」
「よかった?」
「辛いことなど、思い出さぬほうがよい。覚えてなくてよい」

 涙が溢れた。不器用なのだ、この方は。言葉足らずで。
 震える肩を秀忠殿が抱き寄せ、髪に口づけてくれた。

 夫婦になれるのかしら……

 目を閉じて待つ。
 目を閉じて、待っている。

 …………

 ん? ゴロン? なんか隣に寝っ転がった?

 そっと目を開けてみると、秀忠殿は天井を睨んでいる。

「あなたさま?」

 秀忠殿が、急にこちらを向く。唇が今にもふれあいそうで、ドキドキした。
 え? どうしたの? そんなにジッと見なくても。
 私は、何となくいたたまれなくて目を伏せてしまった。

「私は、まだ女子とまぐおうたことがない」

 (え? なんて?)

 私は、無遠慮に秀忠殿をマジマジと見つめてしまった。

 (嘘でしょう?)

「物珍しいか。そうだろうな。嫁取りした大名家の嫡男が、まだそのようなことを知らぬなど……」
 秀忠殿は、また天井を見上げ、ふっと溜め息をついた。

「えっ…あの……私が嫁いできてからも…?」
「あなたが嫁いできているのに、なにゆえ他の女子に手を出さねばならんのだ」

 秀忠殿が口を尖らせている。見えるのは、ぼんやりとした影だけど。
 いや、そうじゃない。

「されど……その……あの……」
「なんですか?」
「あの…私とは夫婦ではございませんでした」
「そうです!」

 ん? 不機嫌そうな声だけど、これも哀しんでいるのかしら? 本当に怒ってる? 
 
「その間もお側に誰もおらなんだと?」
「私はいつも隣で寝ていたでしょう?」
「……けれど、江戸へ行かれたことも……」
「だから?」
「太閤殿下やお義父上ちちうえ様は戦場いくさばにも女子を連れていかれたと……」
「私も同じだと?」
「いえ、あの……」

 ずっと天井を向いていた秀忠殿が、急に私の方を向きました。
 近い……近いんですけど……
 でもかわいい! そうか、まだ少年おぼこだったのね。それでこんなにも不器用だったのか。

「……嬉しゅうございまする…」

 そう口にすると、私の手は、知らずに秀忠殿の躯を優しく包みました。
 この方を男にしたい。

「私がお教えいたしまする」
「それは嫌じゃ」
「はぁ?」

 私は思わず身を離します。
 どうして?

「…手順はわかっておる。本は読んだゆえ」

 秀忠殿は大真面目な声ですが、私は宮城野に見せられた草紙を思い出して、クスリと笑ってしまいました。

「何がおかしい」
「いえ」
「私を笑うておるのだろう」

 あ、まずい。拗ねてる。違います。

「そうではありませぬ。私も嫁ぐたびに、宮城野からそのような草紙を見せられたのを思い出したのでございます」
「女子もあのようなものを見るのか?」
「いつも片目で見ておりました」
「そうか」

 今度は二ヤニヤ笑いながら私を見つめていますね? 少年おぼこなのに!

「笑うておいでですね! けれど、私はそのあと子を生みました!」
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