デリヘル呼んだら幼馴染がやってきた件

伊吹咲夜

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 麗が帰ったあと、女性のデリヘルを呼……ぶことはしなかった。
 
「どうしようかな」

 勃起したモノが鎮まってくれない。このままホテルを出るのはちょっと恥ずかしい状態だ。
 かといってデリヘルを呼ぶ気にもなれない。
 そうなると手段はひとつだ。

 ファスナーを下ろすのもキツいくらいに腫れあがったモノを解放し、ベッドに腰掛けた。
 いつものように竿の真ん中に右手を当て、尖端に向かって擦り始めた。

「ん……、ふぅ、はぁ……」

 妄想しながら、モノを擦る。カリとスジを刺激するようにゆっくり小さく擦っていく。

「あ、あぁ、んんっ……」

 本当ならばこのあたりで臨界に達しイクはずだった。
 でも今日は臨界にまでも達していない。
 原因は分かっている。

「麗……」

 さっきまで麗がズボン越しに触っていた刺激が思い出されて、自分でシている刺激では物足りなかった。
 そっと胸をなぞる指先の刺激が、ほんのり湿った薄い唇の感触が、思い出されて仕方がなかった。

 妄想の内容はすっかり麗のことにすり替わっていた。
 女性のように綺麗な顔に、男性にしては高めのハスキーボイス。女性のような顔からは想像できない整った筋肉質な身体。

「麗、うらら……」

 いつしか俺は麗が指でなぞっていたところを、同じようになぞっていた。
 同じように緩やかに優しく、触れるか触れないかのタッチで。
 胸をなぞっていた指は、モノへと伸びる。

 妄想の中の麗が、さっきの続きを始めていた。
 麗の手が直にモノに触れる。冷たい指先が鈴口を撫で、溢れた液をカリに塗りつける。
 指は掌に変わる。
 グチュ、グチュとカリと包み込みながら竿を擦る。
 萎えかけたモノはみるみる元気を取り戻し、限界まで膨れ上がった。

「あっ、あっ、ダメっ、うらら、い……くっ!」

 声もベッドを汚すことを気にすることなく、勢いよく精液を発射させる。
 手から溢れた精液は、俺の太腿とシーツをしっかりと濡らした。

「う、らら……」

 虚しさというよりちょっとした満足感を抱きながら、そのままベッドに横たわり眠ってしまった。



 麗との再会から二週間。もう一度麗に会いたくてまたデリヘル店に連絡を入れたが、ちょうどその日麗は休みだったため会うことは叶わなかった。

「当たり前だけど、毎日出勤しているわけじゃないよな」

 風俗といえども休みなしで働かせたら違法になるだろうし。

「……迷惑だろうか」

 俺が会いたいからといって、『客』という立場を利用して麗を呼び出すのは迷惑だろうか。
 連絡先を交換しないまま麗が帰っていったのも、俺とはもう会いたくないという意思だったのだろうか。

「でも、麗の売り上げにもなるし、一回くらいならいいよな?」

 この間とは別のラブホテルの一室で、スマホ画面とにらめっこしながら自問自答した。
 また電話をしていなかったらどうしようと思いつつ、意を決して店に電話を入れた。
 三コール目で店に電話は繋がり、今度はちゃんと麗を指名することができた。

「ご指名ありがとうございまー……、あれ? 聡志?」
「やあ」

 何気ない風を装っているが、ガチガチに緊張しているのが隠せていない笑顔で手を振って迎える。
 首を傾げながらも麗は部屋の中に入り、あの白いコートを脱いでハンガーにかけた。

「また間違ったわけじゃないよ、ね? 指名だし」
「間違ってないよ。確信犯」
「なに、オレに抱いて欲しくなった?」
「ち、ちげーし! れ、連絡先聞いてなかったし、もう少し……麗と話したかったから」
「それだけ?」
「それだけ……」

 恥ずかしさで消え入りそうなってしまった声でなんとか伝えると、麗はあからさまにガックリと肩を落とした。

「麗?」
「ちぇー。わざわざ指名してまで呼んでくれたっていうから、期待しちゃったじゃないか。なーんだ」
「なーんだ、って……。今日までかなり悩んだんだぞ! あの時連絡先交換しなかったのは、俺ともう会いたくないからだったんじゃ、とか」
「あー。そういえば盛り上がっちゃって、連絡先のことすっかり忘れてたわ」
「……」

 もしかしたら俺は変な気を回し過ぎたのか? と落ち込んだ。

「じゃ、今日は忘れる前に交換しておこう。ほらスマホ出して」

 そう言って麗は自分のスマホを俺の前に差し出して『ほらほら』と促す。
 ワイシャツのポケットに入れていたスマホを慌てて取り出し、麗の前に差し出すと、麗はそれを奪ってあれこれと操作した。

「はい、オレの連絡先登録しておいたよ。これでいつでも話せるよ」
「ああ、ありがとう」

 スマホを受け取り、電話帳とSNSに麗の連絡先が追加されていることを確認すると、再びワイシャツのポケットにスマホをしまった。
 こうもあっさりと連絡先を交換できてしまうとは思わなかったから、拍子抜けしてしまった。

「はあぁ~」
「どうした?」
「いや、緊張の糸が切れた」
「なにそれ」

 クスリと笑って麗はまた前のように俺の隣に腰掛けると、首を傾げて聞いてきた。

「今日は? またショートでいい?」
「いや、もう少し長い時間で。この間は出させちゃったし、お詫びもかねて」
「ほーんと聡志は真面目だな。昔っから優等生だよな」
「それを言うなら麗もだろう。先生方の心象はいいし、勉強も運動もできるし。絵に描いたような優等生だったよな」
「表向きだけな」

 面白くなさそうに眉を顰める。
 そんなことを言われても俺の知っている麗は真面目そのものだったし、噂でも不良と付き合っているなんて話も聞いたことがなかった。

「表向きだけでも、そんな麗はみんなの憧れだったよ」

 そう、明るくて人気者の麗を俺は羨ましく思っていた。俺も、麗に憧れるやつらのひとりだった。
 麗に憧れて、嫌われたくなくて、隣にいても笑われない人間になりたいと思って、努力してきた。

「またまた~。聡志のほうが人気者だったじゃないか。ほら、美術部の山本とか……」

 自分のことは棚に置き、麗は俺のことを話し始めた。
 美術部に所属していた同級生に、放課後のたび部室に連れて行かれたこと。他校との試合になると野球部の助っ人に駆り出されていたこと。資料整理が必要になると、必ず先生が助けを求めにきていたこと。
 俺自体が忘れていたことまで、つらつらと麗は語り続ける。
 なんでこいつはここまで記憶力がいいんだ。

「そんなことよりさ、麗」
「ん?」
「お前、親父さんと一緒に海外に行っていたんじゃなかったのかよ。いつこっちに戻ってきたんだよ」
「行ったよ。行って、五年くらいはあっちで過ごしたかなぁ。そのあと単身で戻ってきた」
「単身って。こっちの会社任されたってこと?」

 麗は御曹司だ。
 中学三年の夏、父親の会社の海外進出に伴って引っ越していった。
 そこから今まで音信不通でいた。てっきり海外の大学を卒業後、そのまま父親の会社を継いで海外で活躍しているものだと思っていた。

 だから、日本にある会社を任されているのだとばかり思っていた。

「いや? 親からは縁を切られた。捨てられたって言ったほうが正確かな?」
「は? いや、だって。お前、ひとり息子で、跡取りで……。まさかゲイだからって理由で……」
「違うよ。それがさー笑えることに、親父に愛人がいてさ。その息子ってのがオレよりも年上で、かなり優秀でさ」
「笑えることにって……。全然笑えねーって!」

 もう十年近く経っているから本人にとっては笑い話にまで昇華しているのかもしれないが、初耳の俺には全然笑えない。
 愛人に隠し子。
 昔の昼ドラのテンプレのような展開って本当にあるんだ、と呆れるしかない。

「で、その腹違いの兄ってのが大学院を卒業したのと同時に、『お前は用なしだ』って親父から家から追い出された。母親は、追い出される二年前に病気で亡くなったよ」
「お前、それでよかったのかよ。あんなに頑張ってたのに。会社継がなきゃいけないからって、勉強でも私生活でも頑張ってたのに」
「聡志……」

 少しだけ悲し気な顔をしたが、またさっきと同じようなニコニコとした笑顔に戻って言った。

「それで良かったんだって、今は思えている。あのまま親父の会社を言われるがままに継いでいたら、オレは感情を殺した冷酷な人間になっていただろうし」
「だから、デリヘルしてるのか」

 俺が眉を顰めると、麗は首を横に振った。

「違うよ。最初に言ったように、興味があったからだよ。あの家を出る時、『生活費』として相当なお金も貰ったから、身体を売ってまでお金を手に入れなくてはいけないくらいに困っているわけじゃない。それに他にもちゃんとした仕事もしているしね」
「だったら」

 なんで、という言葉を麗は『ストップ』と手を差し出して遮った。

「オレがいいって言ってるんだからいいんだよ。デリヘルやってるおかげで、聡志に再会できたんだしさ」

 チュッと俺の頬にキスをする。

「ね、聡志。連絡先を交換してのに、わざわざこんな場所で話しをする必要ってある?」
「え?」
「防音のホテルに二人きり。時間もまだまだあるし、この間の続き、しない?」
「続きって」
「分かってるくせに」

 クスリと笑って、今度は唇にキスをした。
 柔らかい唇が触れた途端、ドキリと心臓が跳ね上がる。
 思い出すまいと抑え込んでいた衝動が、腹の奥底のほうからムクリと起き上がる。

「ほら、もうドキドキいってる。もっと触れて欲しくて、もっと感じさせて欲しくて身体が興奮し始めている」
「麗、俺は」
「ゲイじゃないって言いたいんだろう? ゲイじゃなくたって、男に性的に興奮してもいいじゃない。オレに興奮してよ聡志。オレに欲情して、イッて欲しい」

 チュッチュッ、と続けてキスをする。
 優しい色の瞳で見つめてはまたキスをする。その瞳を見つめ返すだけで俺の心臓は鼓動を増す。
 ドキドキドキ……。
 甘いときめきが全身を駆け巡る。

「俺、男性との経験なくって。どうやっていいのか分からない」
「大丈夫、オレに任せて」

 大丈夫、ともう一度言うと麗は俺のシャツを脱がし始めた。
 最初のときと同じような丁寧でいて素早い手付きで、ボタンを外す。
 あっという間に露わになった胸に、しなやかな指を這わす。

「あっ……」
「綺麗な肌。惹き込まれる」

 指が唇に変わる。
 湿った唇は胸のあちこちにキスをし、硬くなりはじめた乳首を咥えた。

「んんっ!」
「ああ、やっぱり聡志って敏感だ。ちょっと咥えたくらいでこの反応。じゃあ、こんなことしたらどうなっちゃうんだろうね?」
「んあっ!」

 咥えられた乳首が軽く咬まれる。
 歯で乳首を潰される感触が、ビリリと脳へ伝わっていく。嫌ではない、痺れる感じ。
 何度も繰り返し咬まれる行為は、下半身も痺れさせていく。

 このまま弄りたい……。麗が見ている前でもいい、モノを握って擦りたい。

「あ、ああん……。は……ああっ……」
「息が上がってきたね。そういえば、ここは変わってないのかな」
「ひあっ」

 背中に回された指が、背中を撫でる。
 つつつー、と真ん中を下った指は、ゆっくりとまんべんなく背中を撫でた。
 昔から背中を触られるのが弱かった。
 クラスメイトから不意打ちに背中を撫でられて、裏返った声を出しては笑われていたものだった。

「ここも、弱かったよね」

 ふっ、と耳に息をかける。
 ゾクゾクっとしたものが背中を走り、声を上げるのは何とか我慢したが、思わずのけ反ってしまった。

「知ってる? くすぐったいっていうのと気持ちいいのって、同じ感覚なんだよ。くすぐったいのを超えると、性的に気持ち良く感じるようになるんだ」
「う……そ、だ」
「嘘じゃないよ? ほら、背中を撫でられているだけなのに、もう勃起してる。ズボン越しなのに、ハッキリと分かるくらいにね」

 そう言って麗はズボンの上から俺のモノを撫でる。
 布越しに撫でられる手が、やけに感じる。
 勃起しているせいだけでなく、麗に触られているという意識が変に感じさせていた。

「や、う、うらら……。そ、そこ、触らな……」
「じゃあ触らないでいる? 顔は『もっと』って言ってるよ?」

 いつの間にか半開きになっていた唇を、麗は指でなぞった。何度もなぞって、口の中にその指を挿し込み、ぐるりと撫でまわした。

「ん……」
「キスしたい? 舌が指を絡めてきてるよ?」
「キス、したい」

 うわごとのように呟くと、麗は挿し込んでいた指を素早く抜き取り、強く唇を押し当てた。
 唇を貪るキスからの、強引なディープキス。
 ねじ込まれた舌は激しく口の中を攻めてくる。
 息もつけないほどのディープキスで口の周りは濡れていく。零れる涎に麗はまるで気にすることなく、唇を貪り続ける。

「は……あ。う、らら……」
「さとし、オレ、もう我慢できない」

 乱れた息で麗は言う。
 見上げた麗の顔は、女性的なパーツでありながら雄そのものだった。『獣』という表現が相応しいのかもしれない。
 雄を纏った麗は、完全に雄となったモノをズボン越しに擦りつけてきた。
 俺以上に勃起して硬くなったモノが熱い。
 麗もまた、出したくて仕方がないのが分かる。

「大丈夫、優しくするから」

 俺の返事を待たず、麗は俺のズボンに手を掛け、あっという間に脱がせた。
 正常な頭の状態の俺だったら『手慣れてやがる』とか思っただろうが、その時は朦朧とした意識で為されるがままでいた。
 脱がされて露わになった尻に、麗の手が触れる。そしてツプリ、と予告もなく指が本来入ってはいけない場所へ侵入してきた。

「いや、ぁ……」
「痛くしないから。そのまま力を抜いて」
「怖い」
「怖くないから大丈夫」

 ツプ、ツプ、と指が出し入れされる。
 麗の言うとおり痛くはない。痛くはないが、違和感はある。
 先っちょだけだった指は、段々奥へと入ってくる。ツプツプからヌップヌップへと変わっていく。
 そしてその指の動きは出し入れではなく、円を描くように変わっていく。
 穴が掻き混ぜられていく。
 違和感でしかなかったその動きが、徐々に気持ち良くなっていく。

「ふぁ……」
「こっちも感度がよかったみたい。解してるだけなのに、だいぶ感じてる」
「ほぐ、す?」
「もう少し柔らかくなったら挿れてあげるからね。それまでお互い我慢だよ」

 そう言う麗の息は荒い。
 本当は今すぐにでも挿れてしまいたいのを、グッと我慢しているのだろう。

 指は円を描きながら奥へ入り込む。

「もう三本入った。もう少し解してからと思ったけど、オレがもう限界」
「うらら?」

 入っていた指の感触が消える。
 その代わり、指なんか比べものにならないなにか・・・が穴にあてがわれた。

「聡志、いくよ」
「え、ちょっと待って、まだ心の準備が……」

 先の濡れたソレが穴の中に入りかけた。



 ピピピピ! ピピピピ! ピピピピ! ピピピピ!



 覚えのあるこの音。まさかと思いたかったが、麗の顔を見て『やはり』と確信した。

「……またかよ」 

 大きな溜息とともに麗が呟く。
 ムクリと身体を起こすと、腕を引いて俺の身体も起こしてくれた。

「オレ、厄年じゃなかったはずなんだけどなぁ」
「そういうこともあるさ」

 苦笑いしながら答えるが、この絶妙なタイミングはわざとなんじゃないかと思えてしまうほどだ。
 心の準備ができていないとは言ったが、若干残念な気持ちがなくもなかった。
 
 麗はまたテキパキと服を整えると、壁に掛けたコートを羽織って出ていこうとした。

「あ、待って。お金」
「いいよ」
「『いいよ』じゃないよ。今日はちゃんと払うって言っただろう」

 俺は素っ裸のままベッドから飛び降り、鞄の中から財布を取り出して数枚の一万円札を取り出した。

「ちゃんと料金表見てなかったから、指名料と合わせていくらになるのか分からないから」
「多いよ」
「多い分はチップだと思って取っておいて」
「それでも」

 一万円札を俺に突き返そうとしたところで、今度はアラームと違う音が鳴った。

「あ、やべ。ドライバーから連絡きた。急いで戻らないと」
「忘れ物あったら連絡してやるよ、ほら行ったいった」
「ああ悪い。またな」

 鞄を掴むと麗は俺の渡したお金をその中に無造作に入れ、慌ただしく出ていってしまった。

「なんだかなぁ」

 一気に静かになった部屋で、俺も小さく溜息をついた。
 そして今日も、勃起させられたまま放置されたモノを自分で慰める羽目になった。
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