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魔力ってそこまで大事ですか?
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前世と同じく…いや、それ以上に表情筋が固い顔、闇の使い手かと疑われるくらい真っ黒なロングの髪、ハイライトの入ってない瞳。全てが悪役令嬢になる為に揃い合わさったと言っても過言ではないだろう。そんな悪役令嬢、ミーシャの幼少期(7歳)に何故か転生してしまった私だが別に破滅フラグをへし折ろうとは思わない。何故ならば私のすぐ横には鑑賞対象が居るから。
「えぇと、何をなさっておるのですか?」
「・・・アンリ様を見てます」
私の部屋のソファーに座って静かに読書してるアンリに自身の顔を肌と肌がぶつかりそうなくらい近付ける。そうでもしないとアンリの美しい顔をちゃんと目に焼き付けられないから。
そんな私にアンリは心底呆れた様に溜息を吐いた後、読んでいた本を閉じて私に向き直った。
「僕の顔ばかり見てなくて貴女も少しは自分磨きをした方が良い。確か貴女は貴族の中の平民でしたね。少しは魔力上げを頑張った方が宜しいのではないですか?」
何とも耳の痛くなる話をする人だ。貴方にはデリカシーと言うものがないのか。
「・・・そんな事言っちゃって良いんですか?いつか痛い目見ますよ?」
含みのある言い方をすればアンリは表情を曇らせて「どう言う事ですか?」と聞いてきたが無視してやった。
私は元はこの世界の悪役令嬢であってヒロインやアンリ達と最終戦で戦うラスボスだった。あの日味わった屈辱を彼等に同じ様に味わす為能力を得てもう一度ヒロイン達の前に立ち塞がるのだ。私には能力なんて必要ないしヒロインとの恋路を邪魔しようとは思わないけど、魔力上げを急かすなら取り返しのつかない事になっても良いって解釈させて貰うわ。
「・・・はぁ。貴女のたまに全てを見透かしてる様な瞳は何なんですか。」
アンリはこめかみを抑えてひとつ溜息を溢すと私のさっきの言葉がどこか引っ掛かったのか、もう本を読む事を止め、アンリは腕を組んで瞑想していた。
・・・・・アンリが私の言ったことに真剣になって考えてくれてる。それだけで私の心は満たされてく気がした。
暫く目を瞑って何か真剣に考えてたアンリだったが、やっと一つの答えに辿り着いたのか瞼をゆっくりと開いた。その瞬間、アンリの空色の瞳と私の瞳がぶつかって一瞬ドキッとしたが表情筋の固い私の表情にアンリが気付く筈もなく、ただ冷たく自分の意見を述べるだけだった。
「やはり、少しは魔力上げを頑張った方が宜しいのではないでしょうか?」
まさか、ずっとその事を考えてたと言うのか。暫く考えた挙げ句、やはり魔力上げをしろとはどう言うつもりだ。
私はついムッと頬を膨らませてそっぽを向いた。
「15歳になったら貴族学園に通う事になる。そうなったら貴女と僕は離れ離れですね。」
え、それって・・・。
貴族学園はⅠ、Ⅱ、Ⅲ組の3グループで構成されてある。魔力も剣術もピカイチの天才しか入れないⅠ組、魔力や剣術がそこそこのⅡ組、どちらも普通以下Ⅲ組である。殆どがⅡ組、Ⅲ組のどちらかに入る事になるのだ。勿論、ヒロインと攻略対象者達は強力な魔力の持ち主だからⅠ組であり、私は何の能力も持っていないからⅢ組になる事間違い無しだ。
・・・・・つまりアンリはこう言いたいのだろう。僕と離れ離れになりたくなければ頑張って特訓してくださいと。
アンリ……。
「学園に通っても私の側に居てくれるんですか?」
「・・・相変わらず貴女の頭はお花畑のようですね。」
貴方の方こそ相変わらず口の悪い。でもそう言うとこも好きです。
でも、そっか・・・。今は彼の側に好きなだけ居れるけど学園に入ったらそうもいかないものね。ヒロインとの出会いもあるし。アンリはヒロインに心奪われてヒロインにばかり構う様になる。そうなったら私は邪魔な存在の悪役令嬢に戻ってしまうんだ。いつかはそうなる運命であっても、私は出来るだけ永く彼の側に居たい。
「・・・私、魔力の特訓を致します。」
「やっとその気になってくれたのですね。でしたら僕もお手伝い致しますよ。」
私が魔力の特訓をすると言ったら、さっきまで嫌味な顔しかしなかったアンリが優しい笑みを浮べた。ここにきて初めて見る笑顔が特訓の事なのは嫌だなぁとは思うがアンリと離れるのはもっと嫌な事だから黙って頷く事にした。こう言う時は感情を読み取れない顔をしてて良かったと思う。
「・・・特訓は致しますがその前にひとつ宜しいですか?」
立ち上がって直ぐ様庭へ向かおうとするアンリに手を挙げて制止を掛けた。アンリは一瞬ムスッとするがすぐに笑顔を取り繕って「何か?」といつもより少し低い声質で聞いてきた。優しい紳士を演じてる様だが全く隠しきれてない感がハンパない。これは演技をする必要があるのだろうか。いや、今はそんな事どうでも良い。折角アンリがその綺麗な瞳で私を見つめてくれてるんだ。早く用件を言わなくては失礼にあたるだろう。
私は魔力の特訓をする前にどうしてもアンリにお願いしたい事があるのだ。顔が美しくて声がとても良いアンリに適してるお願いが。
私はアンリの服の袖を掴んで背伸びをするとアンリの顔に自身の顔を近付けて言った。
「ミーシャ、応援してるよ…と言ってください。」
アンリは私の名前を呼んでくれたことがない。いつも君とか、貴女とかだ。だからこの機会に呼んでもらおうと思ったのだがなんだろう。この場全体を包み込む様な冷え切った空気は。
「・・・・巫山戯てるのですか?」
「っ、!ふ、巫山戯てなどないです!私は至って真剣です。その優しくイケヴォな声でミーシャ、愛してるよと言ってください!」
「さっきと違うセリフになっていますが。」
アンリは私が巫山戯てると思ってる様だけど私はいつだってガチ、本気だ。この作品のキャラに出会ったら絶対に名前を呼んで貰うと心に誓ったのだ。・・・本名じゃないのか残念だけど。
さぁ、いつでもどうぞと両手を広げて待っていると、アンリは苦虫を噛み締めた様な表情をした後、すぐに逃亡しようと部屋の窓を開け出したから逃げれないように後ろからがっしりとしがみ付いた。
「離れてください、貴女の心配をした僕が浅はかでした。」
「やはり私の心配をしてくれてたんですね。…好きです。名前を呼んでください。」
「・・・人の話を聞いてます?」
アンリは離れろと言って暴れてるが私は離す気などない。アンリが私の名前を呼んでくれるまでは。
さっさと諦めたら良いのに。子供の力など男だろうが女だろうが大して変わらないから振り切れる筈がない。私の思った通り、暫く暴れていたアンリは体力の限界が来たのか急に力が抜けた様に大人しくなった。
私とのこのやり取りも疲れてる筈なのに絶対に私の言う通りにしようとしないアンリにやむを得ず最終手段を使うことにした。
「御令嬢を本気にさせるのも貴族である御曹司の役目ですよ。」
そう言った瞬間、アンリの肩が跳ねた気がした。ほんと、アンリは単純だから助かる。
「・・・み、ミーシャ…お、オウエンシテマス。」
少々カタコトだが許す事にしよう。
やる気チャージもした事だし私も少しは本気を出すことにしようかな。未だ放心状態のアンリを置いて私は一足先に庭へと向かった。
*****
私は剣を握って風を斬る様に振り回していた。魔法よりもこっちの方が向いてる気がする。そう実感が湧くくらい剣さばきはみるみるうちに上達していった。側らで見ていたアンリもこれには驚き称賛の声をあげた。
「これは素晴らしいです。貴女は剣を握った事がないとお聞きしましたが…。」
アンリは私の剣の扱い方を見て本当に初心者なのか疑心を抱いてる様だった。
流石はラスボスとして現れるぐらいだ。ミーシャは元々覚えるのが早い隠れ天才なのか剣を握ったらすぐにどうすれば良いのか分かってしまった。一度握ったら剣の握り方、振り方全てが身体に染み込んでる気がしたのだ。
「・・・まぁ、剣術はどうにかなるとして問題は魔力ですね。」
続いて魔力の特訓に移ろうとしていたその時だった・・・・・。
突如こちらに近付いてくる足音が聞こえた。それと慌てた数名の声も聞こえる。何事かと暫し音のする方を見つめていると水色の髪に翡翠色の瞳をした私達ぐらいの男の子がこちらをジッと見つめていた。
あっ、この子もしかして・・・。
「・・・・・リオン?」
ボソリと呟いた筈の言葉はちゃんと目の前の男の子に伝わってる様で男の子は私の言葉に太陽の様に眩しい笑顔を浮かべていた。
「えぇと、何をなさっておるのですか?」
「・・・アンリ様を見てます」
私の部屋のソファーに座って静かに読書してるアンリに自身の顔を肌と肌がぶつかりそうなくらい近付ける。そうでもしないとアンリの美しい顔をちゃんと目に焼き付けられないから。
そんな私にアンリは心底呆れた様に溜息を吐いた後、読んでいた本を閉じて私に向き直った。
「僕の顔ばかり見てなくて貴女も少しは自分磨きをした方が良い。確か貴女は貴族の中の平民でしたね。少しは魔力上げを頑張った方が宜しいのではないですか?」
何とも耳の痛くなる話をする人だ。貴方にはデリカシーと言うものがないのか。
「・・・そんな事言っちゃって良いんですか?いつか痛い目見ますよ?」
含みのある言い方をすればアンリは表情を曇らせて「どう言う事ですか?」と聞いてきたが無視してやった。
私は元はこの世界の悪役令嬢であってヒロインやアンリ達と最終戦で戦うラスボスだった。あの日味わった屈辱を彼等に同じ様に味わす為能力を得てもう一度ヒロイン達の前に立ち塞がるのだ。私には能力なんて必要ないしヒロインとの恋路を邪魔しようとは思わないけど、魔力上げを急かすなら取り返しのつかない事になっても良いって解釈させて貰うわ。
「・・・はぁ。貴女のたまに全てを見透かしてる様な瞳は何なんですか。」
アンリはこめかみを抑えてひとつ溜息を溢すと私のさっきの言葉がどこか引っ掛かったのか、もう本を読む事を止め、アンリは腕を組んで瞑想していた。
・・・・・アンリが私の言ったことに真剣になって考えてくれてる。それだけで私の心は満たされてく気がした。
暫く目を瞑って何か真剣に考えてたアンリだったが、やっと一つの答えに辿り着いたのか瞼をゆっくりと開いた。その瞬間、アンリの空色の瞳と私の瞳がぶつかって一瞬ドキッとしたが表情筋の固い私の表情にアンリが気付く筈もなく、ただ冷たく自分の意見を述べるだけだった。
「やはり、少しは魔力上げを頑張った方が宜しいのではないでしょうか?」
まさか、ずっとその事を考えてたと言うのか。暫く考えた挙げ句、やはり魔力上げをしろとはどう言うつもりだ。
私はついムッと頬を膨らませてそっぽを向いた。
「15歳になったら貴族学園に通う事になる。そうなったら貴女と僕は離れ離れですね。」
え、それって・・・。
貴族学園はⅠ、Ⅱ、Ⅲ組の3グループで構成されてある。魔力も剣術もピカイチの天才しか入れないⅠ組、魔力や剣術がそこそこのⅡ組、どちらも普通以下Ⅲ組である。殆どがⅡ組、Ⅲ組のどちらかに入る事になるのだ。勿論、ヒロインと攻略対象者達は強力な魔力の持ち主だからⅠ組であり、私は何の能力も持っていないからⅢ組になる事間違い無しだ。
・・・・・つまりアンリはこう言いたいのだろう。僕と離れ離れになりたくなければ頑張って特訓してくださいと。
アンリ……。
「学園に通っても私の側に居てくれるんですか?」
「・・・相変わらず貴女の頭はお花畑のようですね。」
貴方の方こそ相変わらず口の悪い。でもそう言うとこも好きです。
でも、そっか・・・。今は彼の側に好きなだけ居れるけど学園に入ったらそうもいかないものね。ヒロインとの出会いもあるし。アンリはヒロインに心奪われてヒロインにばかり構う様になる。そうなったら私は邪魔な存在の悪役令嬢に戻ってしまうんだ。いつかはそうなる運命であっても、私は出来るだけ永く彼の側に居たい。
「・・・私、魔力の特訓を致します。」
「やっとその気になってくれたのですね。でしたら僕もお手伝い致しますよ。」
私が魔力の特訓をすると言ったら、さっきまで嫌味な顔しかしなかったアンリが優しい笑みを浮べた。ここにきて初めて見る笑顔が特訓の事なのは嫌だなぁとは思うがアンリと離れるのはもっと嫌な事だから黙って頷く事にした。こう言う時は感情を読み取れない顔をしてて良かったと思う。
「・・・特訓は致しますがその前にひとつ宜しいですか?」
立ち上がって直ぐ様庭へ向かおうとするアンリに手を挙げて制止を掛けた。アンリは一瞬ムスッとするがすぐに笑顔を取り繕って「何か?」といつもより少し低い声質で聞いてきた。優しい紳士を演じてる様だが全く隠しきれてない感がハンパない。これは演技をする必要があるのだろうか。いや、今はそんな事どうでも良い。折角アンリがその綺麗な瞳で私を見つめてくれてるんだ。早く用件を言わなくては失礼にあたるだろう。
私は魔力の特訓をする前にどうしてもアンリにお願いしたい事があるのだ。顔が美しくて声がとても良いアンリに適してるお願いが。
私はアンリの服の袖を掴んで背伸びをするとアンリの顔に自身の顔を近付けて言った。
「ミーシャ、応援してるよ…と言ってください。」
アンリは私の名前を呼んでくれたことがない。いつも君とか、貴女とかだ。だからこの機会に呼んでもらおうと思ったのだがなんだろう。この場全体を包み込む様な冷え切った空気は。
「・・・・巫山戯てるのですか?」
「っ、!ふ、巫山戯てなどないです!私は至って真剣です。その優しくイケヴォな声でミーシャ、愛してるよと言ってください!」
「さっきと違うセリフになっていますが。」
アンリは私が巫山戯てると思ってる様だけど私はいつだってガチ、本気だ。この作品のキャラに出会ったら絶対に名前を呼んで貰うと心に誓ったのだ。・・・本名じゃないのか残念だけど。
さぁ、いつでもどうぞと両手を広げて待っていると、アンリは苦虫を噛み締めた様な表情をした後、すぐに逃亡しようと部屋の窓を開け出したから逃げれないように後ろからがっしりとしがみ付いた。
「離れてください、貴女の心配をした僕が浅はかでした。」
「やはり私の心配をしてくれてたんですね。…好きです。名前を呼んでください。」
「・・・人の話を聞いてます?」
アンリは離れろと言って暴れてるが私は離す気などない。アンリが私の名前を呼んでくれるまでは。
さっさと諦めたら良いのに。子供の力など男だろうが女だろうが大して変わらないから振り切れる筈がない。私の思った通り、暫く暴れていたアンリは体力の限界が来たのか急に力が抜けた様に大人しくなった。
私とのこのやり取りも疲れてる筈なのに絶対に私の言う通りにしようとしないアンリにやむを得ず最終手段を使うことにした。
「御令嬢を本気にさせるのも貴族である御曹司の役目ですよ。」
そう言った瞬間、アンリの肩が跳ねた気がした。ほんと、アンリは単純だから助かる。
「・・・み、ミーシャ…お、オウエンシテマス。」
少々カタコトだが許す事にしよう。
やる気チャージもした事だし私も少しは本気を出すことにしようかな。未だ放心状態のアンリを置いて私は一足先に庭へと向かった。
*****
私は剣を握って風を斬る様に振り回していた。魔法よりもこっちの方が向いてる気がする。そう実感が湧くくらい剣さばきはみるみるうちに上達していった。側らで見ていたアンリもこれには驚き称賛の声をあげた。
「これは素晴らしいです。貴女は剣を握った事がないとお聞きしましたが…。」
アンリは私の剣の扱い方を見て本当に初心者なのか疑心を抱いてる様だった。
流石はラスボスとして現れるぐらいだ。ミーシャは元々覚えるのが早い隠れ天才なのか剣を握ったらすぐにどうすれば良いのか分かってしまった。一度握ったら剣の握り方、振り方全てが身体に染み込んでる気がしたのだ。
「・・・まぁ、剣術はどうにかなるとして問題は魔力ですね。」
続いて魔力の特訓に移ろうとしていたその時だった・・・・・。
突如こちらに近付いてくる足音が聞こえた。それと慌てた数名の声も聞こえる。何事かと暫し音のする方を見つめていると水色の髪に翡翠色の瞳をした私達ぐらいの男の子がこちらをジッと見つめていた。
あっ、この子もしかして・・・。
「・・・・・リオン?」
ボソリと呟いた筈の言葉はちゃんと目の前の男の子に伝わってる様で男の子は私の言葉に太陽の様に眩しい笑顔を浮かべていた。
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