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幼馴染みが可愛すぎて辛いです
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リオンがアンリに物凄い剣幕で決闘を申し込んだ次の日、私は一人部屋に閉じ籠もって頭を抱えていた。
まさかあのリオンが誰かに危ない勝負事を挑む日が来るなんて。しかも相手が戦略戦が得意で剣の扱いに長けてるアンリなら尚更だ。
決闘のルールはこうだ。基本、勝負は剣を使うがもしもの場合、魔法も使って良いらしい。だけど予測の出来ない能力は使ったら駄目な事になってる。剣や魔法を駆使して戦う何とも貴族らしいやり方だけどこの勝負、最初から結果なんて分かりきってるような・・・。リオンは確かに強い。だけどアンリはそれ以上だ。果たしてアンリに勝てるのか…。はぁ、不安だわ・・・。
「何が不安ですか。凄くわくわくしてた癖に」
「・・・アンリ様。」
どうやらさっきの事は全て口から滑り出ていた様で横に居るアンリに指摘されてしまった。てか、何時から居たの。全く気配を感じられなかったけど。
「明日から貴女に会いに来ることが難しそうなので一応顔を見に来てあげたんですよ。」
え、わざわざ私の顔を…?そっかー、アンリは私の存在を忘れないでくれたんだ。アンリの家からここまでは結構掛かる筈なのに自分からこうやって足を運んでくれるくらいには私の事を考えてくれてるって事だよね。
ふふっ、嬉しい・・・・・・・・・・ん?
「い、今なんて言いました?」
「はぁ。貴女の人の話を聞かないのにも慣れてしまいました。・・・顔を見に来てあげたと言ったんです。」
「い、いえ、その前です。」
私からしたらその言葉も重要だしもっと聞いてたいけどそれよりももっと重要で、私の命にも関わるようなそんな言葉が聞こえた気がするんだけど。
「・・・嗚呼、明日から貴女に会いに来ませんので。」
「どどどどうして!!」
私は知らないうちにアンリの迷惑になる様な事を!?
・・・・・そんなの全く心当たりがないっ!!
私がやった事と言えば夜中、アンリの寝顔を見る為アンリの邸宅に忍び込んだり、朝早くから剣の素振りを頑張ってるアンリの手助けになる様、ミーシャ特製魔蛇《ディーメンスネーク》粉末を入れたドリンクを作ってあげたり、最近寝不足気味だと言っていたからこの地に伝わる都市伝説を話してあげたりもした。
そんな時、アンリはいつでもにこやかだった。時々アンリの身体が震えていたけどあれは感動のあまり泣きそうなのを堪えてただけだと思う。
だから決して私はアンリに嫌われてない筈っ!!
じゃあアンリはどうして私に会えないと言うのか。その答えを知りたく、私はジッとアンリの言葉を待った。
「リオンと契約を結んだんですよ。この勝負に区切りがつくまで貴女との関わりを断つと。」
私の事は名前で呼んでくれないのにリオンの事は名前で呼ぶのね。てか、契約って・・・。
「も、もしかしてそれを承諾したんですか?」
ずっと側に居てくれるんじゃなかったの?しかも何で勝手に決めちゃうかなぁ…。
不機嫌さを隠さないで頬を膨らませながらアンリを睨み付けるけどそれをものともせずにアンリは冷たく醒めた笑顔を私に向けてきた。
「何か問題でも?別に貴女とは婚約をしてる訳ではありませんし構わないでしょう?それに、貴女だって幼馴染みと一緒に居れた方が嬉しいでしょうし。」
あっ、その表情初めて見たかも。
馬鹿にしてる時でも呆れてる時でも見たことがない表情・・・。
アンリはそれだけ言うと一瞬で私に興味を無くしたかの様に背を向けてドアの方へ歩き出す。
私はそんなアンリに声を掛けられずにポカンと口を開いたままアンリの後ろ姿を眺めていた。
やっと動けたのはアンリが部屋を出てそのまま邸宅を出た後だ。
窓からアンリの様子を伺う。呼ぼうと思えば呼掛けられる距離だけどきっとアンリは振り向いてくれないだろう。
アンリは何か怒ってた様だけどリオンに何か言われたのかな。だったらリオンのとこに行くのが賢明か。
・・・早くリオンのとこに行って問い質してやらなければならない。その次いでにリオンの顔を拝もう。
そう、あくまでも次いでだ。本来の目的はアンリの事なのだから。
だから治まれー…胸の高鳴り!!
この時胸に手を置いて目を瞑る私をバッチリと見た侍女達が「お嬢様が物思いに耽けてるわ」「仕方無いわよ、だって王子達がお嬢様を取り合ってるんだもの」「まぁ、お嬢様は罪深いお方ね」など、好き勝手言ってる事を私は知らない。
*****
「ミーシャお嬢様、良くお越し下さいました。」
リオンの邸宅に行くと執事のハロルドさんが出迎えてくれた。リオンに似て優しそうな人だ。眼鏡の奥の瞳が私を見てにこりと微笑んだ。
「坊っちゃんに用でしたね。少々お待ち頂いても宜しいですか?」
「・・・急ぎの用ではないのでゆっくりで大丈夫です。」
そう口では言ってみるけど本当は今か今かとリオンに会えるのを待ち望んでいた。そうとは知らないハロルドさんが「ミーシャ様は謙虚なお方ですね」だなんて柔らかく微笑んでくるものだからいたたまれない。
私はハロルドさんにリオンの部屋に通された。本当は居間で待つ様に言われたのだが私がリオンの部屋に行きたいとゴリ押したのだ。それをわざわざ言いにハロルドさんはリオンが居ると言う場所に出向いてくれた。
ごめんなさい、私の我儘で。
嫌な顔ひとつせずに家の中を動き回るハロルドさんに心の中で謝罪した。
暫し待っていると軈てハロルドさんが戻ってきた。どうやらリオンの許可が出たらしい。リオンは『ミーシャちゃんが僕の家に!?ミーシャちゃんなら勿論部屋に来てくれて良いよ!嗚呼でも、ちょっと部屋散らかってるかもしれない!ミーシャちゃんに嫌われたらどうしよ~!』と、不安がりながらも許可を出してくれたらしい。ハロルドさんはそんなリオンの事を話しながらクスクスと笑って「ほんと、ミーシャ様は愛されてますね」と言った。
えぇ、本当です。それはもう羨ましいくらい…。
まぁ、私ですけど!!
ゲーム画面内でミーシャの事を一途に思ってるリオンに惹かれた。それと同時にどんなに酷い事をしても愛されてるミーシャが羨ましかったのだ。でも今ミーシャは私。これから学園に通ってヒロインに出会うまでの間リオンを独り占め出来るの!めんなさい、リオンファンの皆さん。私今、とっても幸せです!
そんな事を考えてるとあっという間にリオンの部屋へと着いた。アンリの部屋には入った(侵入した)ことあるけどリオンの部屋に入った事はない為、何気に緊張する。リオンは部屋が散らかっていたら私に嫌われると思ってる様だけど寧ろ好印象です。あのいつも冷静(ミーシャ関連以外)でなんでも完璧にこなす貴族様が実は片付けがロクに出来ないなんて親近感が湧くだけなのだから。
ハロルドさんがゆっくりと部屋のドアを開けると私はその中に通されるのだが…その場に広がる光景を見て私は息を呑んで硬直してしまう事になる。
「・・・あの、此処は本当にリオンの部屋ですか?」
確実に此処なのだが、一応確認せずには居られなかった。
「えぇ。左様で御座います。」
やはり此処で間違ってない様だ。だけどリオンは散らかってるって言ってたじゃない。なのに、これはなんだ!
私が通されたリオンの部屋はホコリひとつもないくらいピカピカで机の上も本棚の中もちゃんと整理整頓されていた。アンリの部屋なんて机の上に本が山積みに置かれていたと言うのに。
「こちらの方はとても丁重に灑掃《さいそう》してるんですね」
客人が来ると分かってすぐに掃除したのだろうか。もしそうならなんて手際が良すぎるんだろう。私の部屋も掃除して欲しいくらいだ。魔法の練習で手初めにコップを浮かして見たけどコップはコトコトと音を立てるだけで浮く気配が見当たらなかった。それだけならまだ良いのだがそのコップがテーブルから滑り落ちて大きな音を立てて割れた時は流石の私も表情が崩れそうになるくらい慌てたものだ。だけどそれに屈せず何度も浮かすことを試みる内に私の部屋は硝子の破片だらけになってしまった。何度も私の部屋から硝子の割れる音が聞こえてくるから心配になったのだろう。数名の侍女が私の様子を伺いに来てくれたけど部屋に広がる光景をみた後、全員顔面漂白になっていた。
あれは本当に申し訳なかったと思ってる。急いで片付けようと大慌ての侍女達を私は側で見守ることしか出来なかった。だって、私も片付けようと近付いたら「お嬢様は危ないので離れてください」だなんて言われたのだ。手伝わせてくれない分、物凄い罪悪感に襲われた。
はぁ、令嬢も楽じゃないわね。
「ミーシャ様に褒めて頂けたら坊っちゃんも大喜びでしょう。」
・・・・・なんでリオンが嬉しがるんだろうだなんてボッーと聞いていた私にハロルドさんはまさかの爆弾発言をしてきた。
「こちらのお部屋はリオン坊っちゃん自ら清掃してるんです。」
「・・・え?」
なんと、この広い部屋をリオン本人がやってると言うのだ。
リオンが綺麗好きなんて初耳だけど驚くのはこれだけではなかった。
「ミーシャ様、坊っちゃんが此方に向かってる様ですのでそれまで寛いでお待ちください。」
そう言ってハロルドさんが持ってきたのはハーブの良い香りが漂う紅茶と色とりどりの可愛らしいクッキーだった。
「とても良い香りですね」
カップを持って一口飲んでみると優しい甘さが口全体に広がった。これはとてもリラックス出来る。
クッキーもとてもサクサクで美味しすぎる。是非紅茶を淹れた方とクッキーを作った方に会いたいくらいだ。
「どちらもとても美味しいです。因みにこちらを作った方は?」
「ふっ、ミーシャ様がとても御存じの方ですよ。」
あっ、優しい表情…。ハロルドさんが優しい笑みを向ける時って確か・・・。
その時、此方に近付いてくる足音に気付いた。しかも爆音だ。その足音がこちらの部屋の前で止まったと思ったら勢い良くドアが開いた。
「み、ミーシャちゃ~ん!」
その足音は案の定、リオンだった。
「もう、ミーシャちゃん!来るなら来るって言ってよ!それだったら用事なんて作らなかったのに!」
リオンは頬を膨らませて怒ってる様だけど全く怖くない。寧ろ可愛いだけだから止めておいた方が良いと思う。
「あれっ、それは……。」
いつの間にか怒ることを止めたリオンはキョトン顔で私の目の前の物、クッキーを見ていた。
もしかしてリオンも食べたいのだろうか。
しかしそれはみるみる内に険しい表情へと変わった。
「ちょっと、ハロルド!これはまだ試作品って言ったでしょ!?しかもなんでミーシャちゃんに渡してるの!?」
・・・・・まさか、このクッキーはリオンが作ったの?
驚きのあまり、クッキーを凝視する私にハロルドさんが紅茶もリオンが淹れたと言ってきた。それに更に驚く事になるのだが…。
・・・私の幼馴染み、女子力高すぎない?
リオンに今思うことはそれだけだった。
「はぁ、折角ミーシャちゃんには完成度の高い物をあげたかったのになぁ~」
「それは申し訳御座いませんでした。ですが、ミーシャ様はとても喜んでいましたよ?」
『ね?』とハロルドさんは顔だけをこちらに向けてウィンクをしてきた。嗚呼、私にリオンのご機嫌をとらせるつもりなのだろうか。
まぁ、美味しかったのは本当だしね。
「うん、とても美味しかった。リオンは上手だね。」
そう言ったらピクッとリオンの肩が軽く跳ねた。
「ほ、ほんと?」
リオンは瞳を輝かせながら私を見ると何度も味の感想を聞いてくる。その度に頷く私にリオンは顔が綻んでいた。
うん、可愛い。
私と同じ気持ちなのか、ハロルドさんもリオンを見て頬が緩んでいた。
ハロルドさんは本当にリオンが好きなんだ。リオンの話をする時、リオンに接する時、いつだって優しい笑い方をする。
・・・なんか、負けた気がするなぁ。
「それで、ミーシャちゃん。わざわざ僕のとこに来たって事は何か用があったんじゃないの?」
ハッ!そ、そうだった。とても素晴らしいおもてなしとリオンの笑顔にやられて全て忘れるとこだった。
7歳とは思えない程、真面目な顔つきで私を見つめるリオンに向き直る。
「コホンッ、リオンのとこに来たのはね・・・」
私はひとつ咳払いをしてゆっくりと話し出した。
まさかあのリオンが誰かに危ない勝負事を挑む日が来るなんて。しかも相手が戦略戦が得意で剣の扱いに長けてるアンリなら尚更だ。
決闘のルールはこうだ。基本、勝負は剣を使うがもしもの場合、魔法も使って良いらしい。だけど予測の出来ない能力は使ったら駄目な事になってる。剣や魔法を駆使して戦う何とも貴族らしいやり方だけどこの勝負、最初から結果なんて分かりきってるような・・・。リオンは確かに強い。だけどアンリはそれ以上だ。果たしてアンリに勝てるのか…。はぁ、不安だわ・・・。
「何が不安ですか。凄くわくわくしてた癖に」
「・・・アンリ様。」
どうやらさっきの事は全て口から滑り出ていた様で横に居るアンリに指摘されてしまった。てか、何時から居たの。全く気配を感じられなかったけど。
「明日から貴女に会いに来ることが難しそうなので一応顔を見に来てあげたんですよ。」
え、わざわざ私の顔を…?そっかー、アンリは私の存在を忘れないでくれたんだ。アンリの家からここまでは結構掛かる筈なのに自分からこうやって足を運んでくれるくらいには私の事を考えてくれてるって事だよね。
ふふっ、嬉しい・・・・・・・・・・ん?
「い、今なんて言いました?」
「はぁ。貴女の人の話を聞かないのにも慣れてしまいました。・・・顔を見に来てあげたと言ったんです。」
「い、いえ、その前です。」
私からしたらその言葉も重要だしもっと聞いてたいけどそれよりももっと重要で、私の命にも関わるようなそんな言葉が聞こえた気がするんだけど。
「・・・嗚呼、明日から貴女に会いに来ませんので。」
「どどどどうして!!」
私は知らないうちにアンリの迷惑になる様な事を!?
・・・・・そんなの全く心当たりがないっ!!
私がやった事と言えば夜中、アンリの寝顔を見る為アンリの邸宅に忍び込んだり、朝早くから剣の素振りを頑張ってるアンリの手助けになる様、ミーシャ特製魔蛇《ディーメンスネーク》粉末を入れたドリンクを作ってあげたり、最近寝不足気味だと言っていたからこの地に伝わる都市伝説を話してあげたりもした。
そんな時、アンリはいつでもにこやかだった。時々アンリの身体が震えていたけどあれは感動のあまり泣きそうなのを堪えてただけだと思う。
だから決して私はアンリに嫌われてない筈っ!!
じゃあアンリはどうして私に会えないと言うのか。その答えを知りたく、私はジッとアンリの言葉を待った。
「リオンと契約を結んだんですよ。この勝負に区切りがつくまで貴女との関わりを断つと。」
私の事は名前で呼んでくれないのにリオンの事は名前で呼ぶのね。てか、契約って・・・。
「も、もしかしてそれを承諾したんですか?」
ずっと側に居てくれるんじゃなかったの?しかも何で勝手に決めちゃうかなぁ…。
不機嫌さを隠さないで頬を膨らませながらアンリを睨み付けるけどそれをものともせずにアンリは冷たく醒めた笑顔を私に向けてきた。
「何か問題でも?別に貴女とは婚約をしてる訳ではありませんし構わないでしょう?それに、貴女だって幼馴染みと一緒に居れた方が嬉しいでしょうし。」
あっ、その表情初めて見たかも。
馬鹿にしてる時でも呆れてる時でも見たことがない表情・・・。
アンリはそれだけ言うと一瞬で私に興味を無くしたかの様に背を向けてドアの方へ歩き出す。
私はそんなアンリに声を掛けられずにポカンと口を開いたままアンリの後ろ姿を眺めていた。
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アンリは何か怒ってた様だけどリオンに何か言われたのかな。だったらリオンのとこに行くのが賢明か。
・・・早くリオンのとこに行って問い質してやらなければならない。その次いでにリオンの顔を拝もう。
そう、あくまでも次いでだ。本来の目的はアンリの事なのだから。
だから治まれー…胸の高鳴り!!
この時胸に手を置いて目を瞑る私をバッチリと見た侍女達が「お嬢様が物思いに耽けてるわ」「仕方無いわよ、だって王子達がお嬢様を取り合ってるんだもの」「まぁ、お嬢様は罪深いお方ね」など、好き勝手言ってる事を私は知らない。
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「ミーシャお嬢様、良くお越し下さいました。」
リオンの邸宅に行くと執事のハロルドさんが出迎えてくれた。リオンに似て優しそうな人だ。眼鏡の奥の瞳が私を見てにこりと微笑んだ。
「坊っちゃんに用でしたね。少々お待ち頂いても宜しいですか?」
「・・・急ぎの用ではないのでゆっくりで大丈夫です。」
そう口では言ってみるけど本当は今か今かとリオンに会えるのを待ち望んでいた。そうとは知らないハロルドさんが「ミーシャ様は謙虚なお方ですね」だなんて柔らかく微笑んでくるものだからいたたまれない。
私はハロルドさんにリオンの部屋に通された。本当は居間で待つ様に言われたのだが私がリオンの部屋に行きたいとゴリ押したのだ。それをわざわざ言いにハロルドさんはリオンが居ると言う場所に出向いてくれた。
ごめんなさい、私の我儘で。
嫌な顔ひとつせずに家の中を動き回るハロルドさんに心の中で謝罪した。
暫し待っていると軈てハロルドさんが戻ってきた。どうやらリオンの許可が出たらしい。リオンは『ミーシャちゃんが僕の家に!?ミーシャちゃんなら勿論部屋に来てくれて良いよ!嗚呼でも、ちょっと部屋散らかってるかもしれない!ミーシャちゃんに嫌われたらどうしよ~!』と、不安がりながらも許可を出してくれたらしい。ハロルドさんはそんなリオンの事を話しながらクスクスと笑って「ほんと、ミーシャ様は愛されてますね」と言った。
えぇ、本当です。それはもう羨ましいくらい…。
まぁ、私ですけど!!
ゲーム画面内でミーシャの事を一途に思ってるリオンに惹かれた。それと同時にどんなに酷い事をしても愛されてるミーシャが羨ましかったのだ。でも今ミーシャは私。これから学園に通ってヒロインに出会うまでの間リオンを独り占め出来るの!めんなさい、リオンファンの皆さん。私今、とっても幸せです!
そんな事を考えてるとあっという間にリオンの部屋へと着いた。アンリの部屋には入った(侵入した)ことあるけどリオンの部屋に入った事はない為、何気に緊張する。リオンは部屋が散らかっていたら私に嫌われると思ってる様だけど寧ろ好印象です。あのいつも冷静(ミーシャ関連以外)でなんでも完璧にこなす貴族様が実は片付けがロクに出来ないなんて親近感が湧くだけなのだから。
ハロルドさんがゆっくりと部屋のドアを開けると私はその中に通されるのだが…その場に広がる光景を見て私は息を呑んで硬直してしまう事になる。
「・・・あの、此処は本当にリオンの部屋ですか?」
確実に此処なのだが、一応確認せずには居られなかった。
「えぇ。左様で御座います。」
やはり此処で間違ってない様だ。だけどリオンは散らかってるって言ってたじゃない。なのに、これはなんだ!
私が通されたリオンの部屋はホコリひとつもないくらいピカピカで机の上も本棚の中もちゃんと整理整頓されていた。アンリの部屋なんて机の上に本が山積みに置かれていたと言うのに。
「こちらの方はとても丁重に灑掃《さいそう》してるんですね」
客人が来ると分かってすぐに掃除したのだろうか。もしそうならなんて手際が良すぎるんだろう。私の部屋も掃除して欲しいくらいだ。魔法の練習で手初めにコップを浮かして見たけどコップはコトコトと音を立てるだけで浮く気配が見当たらなかった。それだけならまだ良いのだがそのコップがテーブルから滑り落ちて大きな音を立てて割れた時は流石の私も表情が崩れそうになるくらい慌てたものだ。だけどそれに屈せず何度も浮かすことを試みる内に私の部屋は硝子の破片だらけになってしまった。何度も私の部屋から硝子の割れる音が聞こえてくるから心配になったのだろう。数名の侍女が私の様子を伺いに来てくれたけど部屋に広がる光景をみた後、全員顔面漂白になっていた。
あれは本当に申し訳なかったと思ってる。急いで片付けようと大慌ての侍女達を私は側で見守ることしか出来なかった。だって、私も片付けようと近付いたら「お嬢様は危ないので離れてください」だなんて言われたのだ。手伝わせてくれない分、物凄い罪悪感に襲われた。
はぁ、令嬢も楽じゃないわね。
「ミーシャ様に褒めて頂けたら坊っちゃんも大喜びでしょう。」
・・・・・なんでリオンが嬉しがるんだろうだなんてボッーと聞いていた私にハロルドさんはまさかの爆弾発言をしてきた。
「こちらのお部屋はリオン坊っちゃん自ら清掃してるんです。」
「・・・え?」
なんと、この広い部屋をリオン本人がやってると言うのだ。
リオンが綺麗好きなんて初耳だけど驚くのはこれだけではなかった。
「ミーシャ様、坊っちゃんが此方に向かってる様ですのでそれまで寛いでお待ちください。」
そう言ってハロルドさんが持ってきたのはハーブの良い香りが漂う紅茶と色とりどりの可愛らしいクッキーだった。
「とても良い香りですね」
カップを持って一口飲んでみると優しい甘さが口全体に広がった。これはとてもリラックス出来る。
クッキーもとてもサクサクで美味しすぎる。是非紅茶を淹れた方とクッキーを作った方に会いたいくらいだ。
「どちらもとても美味しいです。因みにこちらを作った方は?」
「ふっ、ミーシャ様がとても御存じの方ですよ。」
あっ、優しい表情…。ハロルドさんが優しい笑みを向ける時って確か・・・。
その時、此方に近付いてくる足音に気付いた。しかも爆音だ。その足音がこちらの部屋の前で止まったと思ったら勢い良くドアが開いた。
「み、ミーシャちゃ~ん!」
その足音は案の定、リオンだった。
「もう、ミーシャちゃん!来るなら来るって言ってよ!それだったら用事なんて作らなかったのに!」
リオンは頬を膨らませて怒ってる様だけど全く怖くない。寧ろ可愛いだけだから止めておいた方が良いと思う。
「あれっ、それは……。」
いつの間にか怒ることを止めたリオンはキョトン顔で私の目の前の物、クッキーを見ていた。
もしかしてリオンも食べたいのだろうか。
しかしそれはみるみる内に険しい表情へと変わった。
「ちょっと、ハロルド!これはまだ試作品って言ったでしょ!?しかもなんでミーシャちゃんに渡してるの!?」
・・・・・まさか、このクッキーはリオンが作ったの?
驚きのあまり、クッキーを凝視する私にハロルドさんが紅茶もリオンが淹れたと言ってきた。それに更に驚く事になるのだが…。
・・・私の幼馴染み、女子力高すぎない?
リオンに今思うことはそれだけだった。
「はぁ、折角ミーシャちゃんには完成度の高い物をあげたかったのになぁ~」
「それは申し訳御座いませんでした。ですが、ミーシャ様はとても喜んでいましたよ?」
『ね?』とハロルドさんは顔だけをこちらに向けてウィンクをしてきた。嗚呼、私にリオンのご機嫌をとらせるつもりなのだろうか。
まぁ、美味しかったのは本当だしね。
「うん、とても美味しかった。リオンは上手だね。」
そう言ったらピクッとリオンの肩が軽く跳ねた。
「ほ、ほんと?」
リオンは瞳を輝かせながら私を見ると何度も味の感想を聞いてくる。その度に頷く私にリオンは顔が綻んでいた。
うん、可愛い。
私と同じ気持ちなのか、ハロルドさんもリオンを見て頬が緩んでいた。
ハロルドさんは本当にリオンが好きなんだ。リオンの話をする時、リオンに接する時、いつだって優しい笑い方をする。
・・・なんか、負けた気がするなぁ。
「それで、ミーシャちゃん。わざわざ僕のとこに来たって事は何か用があったんじゃないの?」
ハッ!そ、そうだった。とても素晴らしいおもてなしとリオンの笑顔にやられて全て忘れるとこだった。
7歳とは思えない程、真面目な顔つきで私を見つめるリオンに向き直る。
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