耳も尾もない異端の王

よっちゃん

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森の赤子、世界を観る

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意識が浮上した瞬間、アルトは理解する。

(……これは……転生だ)

名前も年齢も思い出せない。
だが二つだけ確かだった。

――自分は人間だった。
――ここは人間の世界ではない。

視界には巨大な木々、湿った土、異形の影――獣人たち。
「……耳がない」「尾も……」
嫌悪と軽蔑の声が、空気を震わせる。

誰も抱き上げない。助ける気配もない。
ただ――“処分する前の確認”。

アルトは冷静だった。恐怖はなかった。

(……見えている)

空気の流れ、魔力の脈動、世界の歪み――すべて線や回路のように認識できる。

(……書き換えられる)

赤子の指先が土に触れた瞬間、森の一角の魔力循環が整う。
荒れていた土地が自然に豊かに見える。

「……?」
獣人たちが顔を見合わせる。
だが、理解できない。奇跡ではなく、必然として修正されていることに――。

(生き延びよう)

アルトは泣かなかった。静かに世界を観測し続けた。
小さな手で、少しずつ「生きる理由」を定義していく――。
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