押しつけられた身代わり婚のはずが、最上級の溺愛生活が待っていました

cheeery

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彼と共に……

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「あの時……声をかけてくれたのが、凰条さまですか?」

「ああそうだ。あの時はキミの本当の名前を知ることが出来なかったが……俺が縁談を申し込んだのは澪……キミの方で間違いはない」

ハッキリと告げられた言葉。
まっすぐに心に入ってきて私は嬉しくなった。

でも言わなくちゃいけないことがある。

「嬉しかったです……凰条さまが気づいてくれて……でも、私は劣等生です。凰条さまと一緒になることは出来ません」

「なぜ?」

「お姉様の方が全て優れています。社交性もあるし、知性も品性も全て備わっております。私は、どこかに嫁げるような人間ではありません。この度はこのような形になってしまい本当に申し訳ありませんでした」

深く頭を下げた。

凰条さまは私と零お姉様を見てどう思っただろう。

今はこんな風に言ってくれているけれど、私が劣等生であると知ったら縁談の話しなんて持ち掛けなければ良かったと思っただろう。

元々、幸せになることなんて望んではいけなかったんだ。

「俺にはキミが劣っているようには見えない。なぜそんなに自分を卑下するんだ?」

だって……っ。
ずっとそう言われてきたから。

劣等性と呼ばれて、そう扱われてきた。

私は生まれてくるべき子どもじゃなかったから……。

じわりと涙が滲む。
泣いてはいけない。

私は必死に自分に言い聞かせた。

「じゃあ言い方を変えよう」

そう言って凰条さまは私の手をとった。

「俺は御堂澪さん。キミに縁談を申し込みたかった。そしてキミがやってきた。何も問題はない。そうだろう?」

「でも……」

「キミじゃなきゃ俺は縁談は申し込まなかった。澪……」

優しく名前を呼んで愛おし気に私を見つめる。

「俺と結婚して欲しい」

 「……っ」

息を呑む。
まさか、こんな言葉を聞く日が来るなんて。

驚きと、込み上げる感情に胸がいっぱいになっていく。

「……凰条さま……」

名前を呼んだ瞬間、視界が滲んだ。

涙が、溢れる。

「どうして泣くんだ?」

彼はとても優しい声で尋ねた。

「ごめんなさい……っ、嬉しくて」

手の甲で慌てて拭おうとするけれど、溢れてくる涙は止まらなかった。

すると凰条さん私の目から流れ出る涙を指ですくった。

「それなら良かった」

ずっと、零お姉様の代わりだった私。
姉の影に隠れて、家の中でも外でも誰にも気にされなかった私。

そんな私を、凰条さまは見つけてくれた。

「あの……っ、一つだけ聞かせてください……」
「なんだ?」

「どう、して今日……私じゃないと分かったんですか?」

あの時だけじゃない。
ピアノを弾いた時も私だと特定するのは周りにとっては難しいことだった。

「どうしてだろうな。でも今日会って……全然違って見えた。これから先、何度会ったとしても、キミと彼女のことを間違えることはないといいきれるよ」

「凰条さま……」

ずっと苦しくて辛かった。
そんな人生から彼が手をとって引き上げてくれた。

はじめて今、幸せだと思えた。
私を見つけだして、私を選んでくれた人……。

「私も、凰条さまとこれから一緒に歩んでいきたい……」

素直な気持ちを口にすると、凰条さまは言った。

 「嬉しいよ、澪……でも凰条さまなんて堅い呼び方はやめてくれ。一真と呼んでくれないか?」

「いいのでしょうか……?」

遠慮がちに尋ねると、一真さんは嬉しそうに頷いた。

「俺がそう呼んで欲しいんだ」
「はい……分かりました」

私は照れくさくなりながらもしっかりと頷いた。

「もう呼んでしまっているが、俺も澪と呼んでも?」

「もちろんです」

今まで自分のことを澪と呼んでくれる人はいなかった。

お父様やお母様にも呼ばれたことは数え切れるだけ。

「澪……」

一真さんは愛おし気に目を細めこちらを見る。

強く吐き出された名前の呼び方じゃなくて、優しくて包み込んでくれるような呼び方だった。

嬉しい……。
これから一真さんと関係を縮めていきたい。

一真さんの知らないところや、好きなところをたくさん知っていきたい。

 今日、自分も幸せになってもいいんだと希望が見いだせた日になった。


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