押しつけられた身代わり婚のはずが、最上級の溺愛生活が待っていました

cheeery

文字の大きさ
38 / 43

ふたりでの生活

しおりを挟む



それから一通り家の中を見てまわると、一真さんは言った。

「食器とか細かいものはまだそろってないから、次の週末に買いにいってもいいな」

「はい、行きたいです!」

私が頷くと、一真さんは愛おし気に私を見つめ、抱きしめる。

「か、一真さん……?」

「嬉しいものだな。やはり……キミとここで暮らしていけるなんて」

「私もとても幸せです」

「今はまだ仮住まいだから、将来、キミが家を立てたいと思うならそれもいいなと思ってる。その時はふたりの希望に沿った家を建てていこう」

一真さんは優しく微笑んだ。

「はい……」

 それから買い物に出かけ、この日の夕飯は私が作ることになった。

「本当にいいのか?無理しなくてもいいんだぞ?今日は新生活のはじまりで疲れもあるかもしれない」

「いえ、私が作りたいんです……今まで一真さんにはしてもらってばかりだったから……」

「そうか、それなら。キミの手料理が食べられるのは楽しみだ」

料理を作りながら、一真さんは私のいるキッチンに立って後ろから作るところを見ていた。

「あ、あの一真さん……座っててテレビ見て待っていてもいいんですよ?」

「澪が作ってくれているのに、じっと待ってるなんて落ち着かない」

「でもずっと見られたら恥ずかしいです」

私は顔を赤く染めて言うと、それならと一真さんは作った料理の洗い物をしてくれた。
キッチンに旦那さんと一緒に立っているなんて夢みたい。

小さな頃に憧れた家族像。
一真さんとなら幸せな家庭を作っていけそうだって分かって希望が溢れてしまう。

「これから澪はどうしたい?」

洗い物をしながら一真さんがたずねる。
私は今まで家の仕事を継ぐという名目で家に閉じ込められ家の手伝いをしてきた。

そんな自分に今できることは少ないかもしれないけれど、一真さんにあやかりっぱなしの生活を送るのは嫌なんだ。

「私も……自分に出来ることを探して働きたいと思っています」

「そうか……」

ずっと自分は何も出来ないと思っていた。

でもその言葉を一真さんが否定してくれた。

出来ないんじゃない。
そう思わされていただけだと。

だったら今から進んでみるのも遅くないんじゃないかと思ったんだ。

「このままだと一真さんに甘えっぱなしになってしまうと思うんです……だから自分もやれることを探していきたい」

「キミはそう言うんじゃないかと思ってた。今までやりたいこともロクにさせてもらえなかっただろう。自分の好きなものを押し殺すことがあったかもしれない。これからは澪が思うように自由にやって欲しいと俺も思ってる」

「一真さん……っ」

ちょうど洗い物が終わったのか、一真さんは水を止めた。

「ちょうどキミに提案しようと思っていたことがあるんだ」

そう言うと、どこかに行ってしまった。

しばらくすると何かの資料を持ってこちらに戻ってくる。

私もちょうど料理がひと段落ついたところで、手を洗うとダイニングテーブルに移動した。

「これは……?」

「今度うちで和服の販売を行うことになっているんだ」

凰条家はメインが自動車なものの色んな会社と提携を結んでいて、様々なジャンルのビジネスに挑戦している。

「和服……ですか」

カタログにはキレイなデザインの和服がたくさん載っていた。

「海外に向けて展開していきたいと考えているんだ。既存の和を感じるものから、流行を取り入れたものまで開発したいと思ってる。庭に植えてあった花を見て思ったが、キミはとても色彩感覚や、センスがいい。だからぜひ意見を聞かせてほしい」

「私なんかがいいんでしょうか?」

「また“なんか”と言ったな」

「あっ」

私は思わず口をつぐんだ。

もうクセになっているのかもしれない。
私なんかと思うのが。

「ご、ごめんなさい」

一真さんに呆れられるんじゃないかと不安になった時、彼は優しい口調で言った。

「俺は澪に頼みたい。澪の意見が欲しい。澪が出来ること、澪にしか出来ないことはたくさんあるはずだ」

まっすぐに迷いなく答えてくれる一真さんに、気持ちが晴れた。

はやくこのクセから抜けないと。そのためにも、私は自分に自信を付けることは必要だ。

「……やらせてください!」

私は元気よく返事をした。

「ああ、よろしく頼む」
 
それからご飯にしようということになり、広々としたダイニングテーブルに私は作った料理を並べた。

今日の夕飯はハンバーグだ。

「これ、澪が作ったのか!?」

「はい……お口に合うが分かりませんが」

自分の手料理を誰かに食べてもらうのは初めてだった。
毎回料理は、お手伝いさんで私は掃除や洗い物が役割になっていたから。

手を出すと怒られるし、私が作ったものは家族の誰にも食べてもらえなかったから。

美味しいって思ってくれるかな……。

不安になる。
一真さんに変な料理を食べさせるわけにもいかないし……。

ふたりでイスに座ると、一真さんは丁寧に手を合わせた。

「いただきます」

一真さんがそう告げると、スープをひと口すくって、口に運ぶ。

「ポタージュか、美味しい……」

ジャガイモをつぶして、作ったポタージュ。
一真さんは感心するようにつぶやいた。

良かった……。

そしてサラダを食べた後にすぐにメインのハンバーグを口にする。

すると彼が嬉しそうに微笑んだ。

「こんな料理が食べられるなんて幸せだな」
「それは言い過ぎです……一真さん」

「そんなこともないぞ?キミは料理も出来るんだな」

「初めてです……人に振舞ったのは……最初に振舞ったのが一真さんで良かった」

だって一番食べて欲しいと思う人だから。
一真さんはそれからも「美味しい」と言いながら綺麗に完食してくれた。

「あの、もし良かったら……一真さんがお仕事の日も作らせていただけませんか?」

さっきの和服のプロデュースは最初は家でオンラインで出来る仕事だと聞いた。

それならきっと時間もあるし、また一真さんの喜ぶ顔が見られるなら、私はすごく嬉しい。

「帰ってきたら、澪の作る料理が待ってるなんて俺はかなり贅沢だな。早く帰りたくなってしまうかもしれない」

「ふふ……作って欲しいものがあったら言ってくださいね」

 「ありがとう、澪。キミと出会えて良かった」

一真さんはそう言うと、ちゅっと私のおでこにキスを落とした。

それから洗い物をしようと立ち上がったけれど、一真さんは私にソファーで休むようにと言って聞いてくれなかった。

「一真さんにさらせるなんて出来ません」

「これくらいはやらせてくれ。美味しい食事を振舞ってもらったんだ。当然のことだよ」

「ありがとうございます」

それから一真さんは洗い物だけじゃなくハーブティーを入れてくれた。

ふたりでそれを飲みながら、また話をして笑って。
たくさん、ふたりきりの時間を楽しんだ。

こんな幸せな時間が毎日続くんだ。

毎日幸せを感じて……私ってすごく贅沢な存在なんじゃないかと思った。


それから私たちはお風呂に入ることにした。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ヤンデレ旦那さまに溺愛されてるけど思い出せない

斧名田マニマニ
恋愛
待って待って、どういうこと。 襲い掛かってきた超絶美形が、これから僕たち新婚初夜だよとかいうけれど、全く覚えてない……! この人本当に旦那さま? って疑ってたら、なんか病みはじめちゃった……!

ハイスぺ幼馴染の執着過剰愛~30までに相手がいなかったら、結婚しようと言ったから~

cheeery
恋愛
パイロットのエリート幼馴染とワケあって同棲することになった私。 同棲はかれこれもう7年目。 お互いにいい人がいたら解消しようと約束しているのだけど……。 合コンは撃沈。連絡さえ来ない始末。 焦るものの、幼なじみ隼人との生活は、なんの不満もなく……っというよりも、至極の生活だった。 何かあったら話も聞いてくれるし、なぐさめてくれる。 美味しい料理に、髪を乾かしてくれたり、買い物に連れ出してくれたり……しかも家賃はいらないと受け取ってもくれない。 私……こんなに甘えっぱなしでいいのかな? そしてわたしの30歳の誕生日。 「美羽、お誕生日おめでとう。結婚しようか」 「なに言ってるの?」 優しかったはずの隼人が豹変。 「30になってお互いに相手がいなかったら、結婚しようって美羽が言ったんだよね?」 彼の秘密を知ったら、もう逃げることは出来ない。 「絶対に逃がさないよ?」

婚活をがんばる枯葉令嬢は薔薇狼の執着にきづかない~なんで溺愛されてるの!?~

白井
恋愛
「我が伯爵家に貴様は相応しくない! 婚約は解消させてもらう」  枯葉のような地味な容姿が原因で家族から疎まれ、婚約者を姉に奪われたステラ。  土下座を強要され自分が悪いと納得しようとしたその時、謎の美形が跪いて手に口づけをする。  「美しき我が光……。やっと、お会いできましたね」  あなた誰!?  やたら綺麗な怪しい男から逃げようとするが、彼の執着は枯葉令嬢ステラの想像以上だった!  虐げられていた令嬢が男の正体を知り、幸せになる話。

婚約者は冷酷宰相様。地味令嬢の私が政略結婚で嫁いだら、なぜか激甘溺愛が待っていました

春夜夢
恋愛
私はずっと「誰にも注目されない地味令嬢」だった。 名門とはいえ没落しかけの伯爵家の次女。 姉は美貌と才覚に恵まれ、私はただの飾り物のような存在。 ――そんな私に突然、王宮から「婚約命令」が下った。 相手は、王の右腕にして恐れられる冷酷宰相・ルシアス=ディエンツ公爵。 40を目前にしながら独身を貫き、感情を一切表に出さない男。 (……なぜ私が?) けれど、その婚約は国を揺るがす「ある計画」の始まりだった。

腹黒外科医に唆された件~恋人(仮)のはずが迫られています~

有木珠乃
恋愛
両親を亡くし、二人だけの姉妹になった一ノ瀬栞と琴美。 ある日、栞は轢き逃げ事故に遭い、姉の琴美が務める病院に入院することになる。 そこで初めて知る、琴美の婚約者の存在。 彼らの逢引きを確保するために利用される栞と外科医の岡。 「二人で自由にならないか?」を囁かれて……。

兄みたいな騎士団長の愛が実は重すぎでした

鳥花風星
恋愛
代々騎士団寮の寮母を務める家に生まれたレティシアは、若くして騎士団の一つである「群青の騎士団」の寮母になり、 幼少の頃から仲の良い騎士団長のアスールは、そんなレティシアを陰からずっと見守っていた。レティシアにとってアスールは兄のような存在だが、次第に兄としてだけではない思いを持ちはじめてしまう。 アスールにとってもレティシアは妹のような存在というだけではないようで……。兄としてしか思われていないと思っているアスールはレティシアへの思いを拗らせながらどんどん膨らませていく。 すれ違う恋心、アスールとライバルの心理戦。拗らせ溺愛が激しい、じれじれだけどハッピーエンドです。 ☆他投稿サイトにも掲載しています。 ☆番外編はアスールの同僚ノアールがメインの話になっています。

イケメンエリート軍団??何ですかそれ??【イケメンエリートシリーズ第二弾】

便葉
恋愛
国内有数の豪華複合オフィスビルの27階にある IT関連会社“EARTHonCIRCLE”略して“EOC” 謎多き噂の飛び交う外資系一流企業 日本内外のイケメンエリートが 集まる男のみの会社 そのイケメンエリート軍団の異色男子 ジャスティン・レスターの意外なお話 矢代木の実(23歳) 借金地獄の元カレから身をひそめるため 友達の家に居候のはずが友達に彼氏ができ 今はネットカフェを放浪中 「もしかして、君って、家出少女??」 ある日、ビルの駐車場をうろついてたら 金髪のイケメンの外人さんに 声をかけられました 「寝るとこないないなら、俺ん家に来る? あ、俺は、ここの27階で働いてる ジャスティンって言うんだ」 「………あ、でも」 「大丈夫、何も心配ないよ。だって俺は… 女の子には興味はないから」

治療係ですが、公爵令息様がものすごく懐いて困る~私、男装しているだけで、女性です!~

百門一新
恋愛
男装姿で旅をしていたエリザは、長期滞在してしまった異国の王都で【赤い魔法使い(男)】と呼ばれることに。職業は完全に誤解なのだが、そのせいで女性恐怖症の公爵令息の治療係に……!?「待って。私、女なんですけども」しかも公爵令息の騎士様、なぜかものすごい懐いてきて…!? 男装の魔法使い(職業誤解)×女性が大の苦手のはずなのに、ロックオンして攻めに転じたらぐいぐいいく騎士様!? ※小説家になろう様、ベリーズカフェ様、カクヨム様にも掲載しています。

処理中です...