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138話 四席と五席

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 魔法の実技訓練が続いていく。
 やはり、一組目と二人組の成績が基準となっている。
 二人組と同程度の結果を残す者が多く、一組目よりも悪い結果を残す者は少ない。
 ゴーレム停止までの平均的な所要時間は百六十秒、打ち込み魔法数は二十といったところだ。
 そんな中――

「次はこの俺達が参加するぜ」

「ふふん。わたくし達の華麗な魔法を見せて差し上げますわ」

 一組の少年少女が名乗りを上げた。
 この王立学園に通っていることから分かるように、彼らももちろん貴族だ。
 そして実技訓練の講義を受けているだけあり、攻撃魔法も得意としている。

「おおっ! 実技魔法四席と五席の出番か!」

「これは見ものだぞ!」

 周囲から歓声が上がる。
 何十人もの生徒が存在するなかで、学年四位と五位に位置するペアだ。
 これまでの参加者よりも洗練された攻撃魔法に期待できるだろう。
 そんな彼らは、何故かゴーレムではなく別の方へ向かう。

「お前達の天下もこれまでさ。俺達のペアがトップを取るからな」

「ふふん。調子に乗って訓練を怠っている者達に、わたくし達が負けるはずありませんもの。わたくし達の魔法を、そこでじっくりと見ているがいいですわ」

 二人組がそう言い放つ。
 彼らの視線の先にいるのは、同じく二人組の少年少女。
 オスカーとイザベラであった。

「うふふ。それはそれは、楽しみなことですわね」

「ええ。どれほど実力を上げているか、見せてもらいましょう」

 余裕の笑みを浮かべて、イザベラとオスカーがそう言う。
 学年の主席と次席はこちらの二人だ。
 三席と四席からはライバル視されているのだが、イザベラとオスカーの眼中にはない。
 そもそもイザベラに至っては、この二人の名前すら覚えているか怪しいところがあった。
 そんな舌戦を繰り広げつつも、二人組がゴーレムに対峙する。

「全てを焼き尽くす炎よ、我が敵を滅ぼせっ! 【ファイアーランス】!」

「天空を揺るがす轟雷よ、我が敵を穿ち貫け。【サンダーボルト】!」

 二人の魔法が発動し、ゴーレムへと直撃する。

「おぉ……」

「やっぱり凄いな……」

「さすがは学年四位と五位のペア……」

 周囲が感嘆の声を上げる。
 その威力は、これまでの生徒達とは比べ物にならないほどに強力だ。
 そして、圧倒的に短い時間と少ない手数でゴーレムを停止させた。

「そこまで! 所要時間五十秒、打ち込み魔法数八。素晴らしい結果だ!」

 講師が声高らかに告げる。

「やったぜ!」

「やりましたわ!」

 二人は嬉しさを爆発させながらハイタッチを交わしていた。
 まるで、これで学年主席と次席の座を得ることができたと言わんばかりの喜びようである。
 実際、彼らほどの実力があれば、例年であれば首席と次席の座を得ていたことは間違いない。
 だが、彼らにとって不幸なことに、この第二学年にはイザベラとオスカーがいる。

「どうだ? 俺達の完璧な魔法は?」

「怖気づいて、今からでも棄権してくれても構いませんことよ? あなた達に勝ち目は万に一つもないのですから」

 イザベラとオスカーに向かって、二人は挑発的な言葉を投げかけたのだった。
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