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139話 下等な末端貴族

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 魔法の実技訓練で、首席と次席でペアを組んだイザベラとオスカー。
 それに対し、四席と五席が対抗心を燃やしている。
 二人は自信満々に宣言した通り、これまでで一番良いタイムを出して、ゴーレムを停止させた。

「さすがは学年四位と五位のペアだな……」

「うん。あのレベルになると、もう才能の差を感じてしまうよね……」

「ああ。あいつらは別格だよな」

 周囲の生徒が囁き合う。
 しかし、イザベラとオスカーの表情は変わらない。
 その様子を見て、二人が言う。

「ふふん。わたくし達の魔法を見て、少しは身の程を知ったかしら?」

「どうやら呆然自失としているようだな。これなら、次のテストでは追い抜けそうだ」

 二人は、イザベラとオスカーが動揺していると決めつけた。
 自分達の素晴らしい魔法を目の当たりにして、冷静でいられるはずがないのだ。
 事実、前回までのイザベラやオスカーの魔法と比べれば、今回の彼らの魔法は同等か少し上のように思えた。

「ふん……。下等な末端貴族共が、何か勘違いしているようですね」

「ええ。まったく、この程度の魔法で何を騒いでおられるのか……。身の程を弁えていただきたいものですわね」

 オスカーとイザベラがそう言い放つ。
 オスカーは伯爵家の跡取り息子、イザベラは侯爵家の令嬢だ。
 貴族ばかりが通う王立学園の中でも、彼らの身分は高い方だった。
 なお、四席と五席の実家の爵位は、それぞれ男爵家と準男爵家である。

「なっ!? なんですって!?」

「もう一度言ってみろ!」

 四席と五席が激昂する。
 自分たちを侮辱されたと感じたらしい。
 それに、この王立学園には各人の実家の爵位には触れないというルールがある。
 こうしてあからさまに爵位を持ち出して侮蔑するのは、本来はあるべきことではない。

「いいでしょう。ならば、もっと分かりやすく教えて差し上げます。……先生、早く始めてください」

「そうですわね。時間の無駄ですもの」

 オスカーとイザベラは講師にそう促したのだった。
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