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155話 フレッドとアリシアの密約

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 アリシアの軽口に対して、フレッドが彼女を睨み臨戦態勢を取る。
 今の彼であれば、か弱い女生徒を殺すことなど容易い。
 だが――

「怖いですわねぇ。そんなに睨まないでくださいよ。ちょっとした冗談ではありませんか」

 アリシアが飄々とした感じでそう言う。
 彼女は第二学年においてイザベラやオスカーに続く実力者であり、学年第三席となっている。
 いくら第一学年首席のフレッドとは言え、一方的な勝ちを収められる相手ではない。

「チッ」

 フレッドは盛大に舌打ちをした。
 かつての心優しい少年はもういない。
 闇の瘴気の影響は、これほどまでに大きいのだ。

「それで、僕に何か用なのか? 話があるなら、さっさと済ませてくれ」

「分かりました。では単刀直入に……」

 アリシアが怪しげな表情でフレッドに耳打ちする。
 かつての彼女は、純真無垢な少女だった。
 珍しい光魔法の才を見出され、母親の生活を楽にするために入学を決意したのだ。
 入学後に苛められていたところをイザベラに助けられてからは、彼女に心酔するようになった。
 やや行きすぎなところもあったものの、基本的には清廉潔白で純朴な少女であることに変わりはなかった。
 そんな彼女も、闇の瘴気の影響により人格に異変が生じている。

「……は?」

 アリシアの言葉を受けて、フレッドは呆けたような顔をする。

「ふふ。いい案でしょう?」

「だ、だがさすがにそれは――」

「迷う余地がありますか? このままでは、イザベラ様とエドワードの奴との結婚は避けられません。それはあなたにとっても不本意な結末なのでしょう? ならば、やるしかありませんよ」

「…………分かった」

 こうして、アリシアとフレッドの間でとある密約が交わされたのだった。
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