上 下
35 / 99

35話 強敵スキルトレーニング・エル

しおりを挟む
 桃色青春高校は、地区大会の1回戦で大草原高校に勝利を収めた。
 6対5の大接戦であった。
 そして、その数日後――

「ここが大草原高校か……」

 龍之介は、大草原高校のグラウンドを訪れていた。
 高校名通り、周囲には広大な草原が広がっている。
 野球だけでなく、様々なスポーツで利用することができそうだ。

「草刃エルさんはどこかな? とりあえず、適当に歩いて探してみるか……」

 そう言ってグラウンドを進む龍之介。
 しかし、周囲に人影はない。

「呼び出しておいて不在? いや、さすがにそれはないか。部室でミーティングでもやっているのかもしれないな」

 龍之介はそう考え、グラウンドに併設された部室へ向かう。
 2099年の今、多くのスポーツが男女混合となっている。
 スポーツ医学が発展し、男女の身体能力差が縮まったためだ。
 大草原高校にも、草刃エルを始めとした女子部員が在籍している。

「部室は……ここか」

 龍之介は、部室のドアを開けた。
 すると――

「ふぉおおおっ!? り、龍之介殿!?」

「あっ……着替え中だったか……」

 そこには、下着姿のエルの姿があった。
 彼女の手には野球のユニフォームが握られている。
 どうやら、着替えの真っ最中だったようだ。

「ふむ……。ムッチリとしつつも、意外に引き締まった肉体。さすが、草刃さんだな……」

「ちょっ!? そ、そんなにジロジロと見ないでほしいでござるぅ……!!」

 エルは頬を真っ赤に染め、両腕で胸を隠しながら恥ずかしそうに俯く。
 彼女は小太りでオタクっぽい外見をしているものの、やはり乙女だ。
 今は草を生やす余裕もないらしい。

「すまない。まさか着替えているとは思わなくて……」

 龍之介は慌てて頭を下げる。
 しかし、その視線はエルの肢体に向けられたままだ。

「は、早く出て行ってほしいでござ――」

「草刃さんって、毛深いんだな……」

「っ!!?? ど、どこを見ているでござるか!? レディに失礼でござるよ!!」

「あ、すまん。つい本音が出てしまった。しかし、決してアソコの話ではないぞ? 俺が言っているのは、あくまで足の話さ。スネあたりは処理しているみたいだが、太ももあたりの処理が甘い」

「ふ、ふひっ!? 余計なお世話でござる!!」

 エルがほほを膨らませて怒る。
 そして、龍之介の身体を部室の外まで押し出しそうとした。

「まったくもう! せっかく、龍之介殿に少しばかりのアドバイスをしようと思ったのに……。台無しでござるよ!!」

「え? そうだったのか?」

「そうでござる! 拙者たち大草原高校を下したからには、2回戦などで負けてもらっては困るでござるからな! だから、広大な草原を活かした走塁術を教えようと思ったのに……」

「そうだったのか……。それは悪いことをしたな」

 エルの言葉に、龍之介が謝罪する。
 それから、彼は少し考えてから口を開いた。

「じゃあ、少しだけ時間をもらえないか?」

「む? それはもちろん構わぬでござるが……その前に龍之介殿は、部室から出ていくべきでござる」

「どうして?」

「拙者が着替え中だからでござる! 龍之介殿が先ほどからチラチラと拙者の体を見ていることぐらい、分かっているでござるよ!? だから、早く出ていくでござる!!」

「ああ、なるほど。そういうことか」

 龍之介は、ようやく状況を理解した。
 しかし彼は動かない。

「細かいことはいいじゃないか。俺と草刃さん――いや、俺とエルの仲だろう?」

「は、はぁ!? どんな仲でござるか!?」

「熱い魂を分かち合う、バッテリー……的な? ほら、ピッチャーとキャッチャーだしさ」

「ただの知り合いでござる!! 龍之介殿の思考回路は、いったいどうなっているのでござるか!? そもそも、高校野球では転校したら1年間は試合に出れないでござる!! 拙者と龍之介殿がバッテリーを組むことはあり得ないでござるよ!!」

 エルは顔を真っ赤にして叫ぶ。
 だが、龍之介は引かない。

「何も、試合に出ることが全てじゃないさ。ほら、俺と魂のバッテリーを組むのは嫌か? 俺は草刃さんのことを高く評価しているし、尊敬しているんだが……」

「うっ……。そ、それは嬉しいでござるが……!!」

 エルが口籠る。
 彼女は、龍之介の強引さに戸惑いつつも惹かれ始めていた。

「じゃあ、とりあえず相棒としてエルの無駄毛を処理してやるよ。太もものな」

「!? ちょ、ちょっと待つでござる!! どうしてそのような話に!?」

「細かいことはいいじゃないか。俺とエルの仲だろう?」

「もう、それしか言えなくなってしまったでござるか!?」

 龍之介は、強引にエルを部室のベンチに寝かせる。
 そして、そのままエルの身体に手を伸ばした。

「やっ……! り、龍之介殿! 本当にやめっ……!!」

「じっとしていろ」

「はぅ……あ、あっ……!」

 エルの抵抗が弱々しい。
 彼女の太ももには、既に龍之介の手が這い回っていた。

「さて、こんなこともあろうかと最新型のカミソリとシェービングクリームを持参してきた。俺は紳士だからな。しっかりとツルツルにしてやるぜ。太ももをな」

「っ……!! け、結構でござる!! もう満足でござるからぁ……!!」

 エルは抵抗しようとするが、龍之介の力には敵わない。
 そして、そのまま彼女の太ももはツルツルになったのだった。
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

あなたならどう生きますか?両想いを確認した直後の「余命半年」宣告

現代文学 / 連載中 24h.ポイント:3,081pt お気に入り:37

田舎で師匠にボコされ続けた結果、気づいたら世界最強になっていました

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:1,469pt お気に入り:582

疑う勇者 おめーらなんぞ信用できるか!

uni
ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:1,185pt お気に入り:248

異世界ゆるり紀行 ~子育てしながら冒険者します~

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:44,989pt お気に入り:35,289

モブなのに巻き込まれています ~王子の胃袋を掴んだらしい~

恋愛 / 完結 24h.ポイント:560pt お気に入り:14,241

トラブルに愛された夫婦!三時間で三度死ぬところやったそうです!

現代文学 / 連載中 24h.ポイント:1,888pt お気に入り:34

処理中です...