7 / 11

7話 怨霊サリーナちゃん

しおりを挟む
 俺は白銀草の採取のために、森に入っている。
 黒毒草もついでに手に入れた。
 瘴気を呼び寄せる性質を持つ毒草である。

 肝心の白銀草がなかなか規定量に達しなかったので、森のやや奥にまで入り込んでいる。
 途中から、白銀草の生えているところが強く光るという謎の現象が起きたので、夢中で採取しまくっていたところだ。

「さあて。もうリュックもパンパンだし、薄暗くなってきたし。そろそろ帰るか」

 夜の森は危険だ。
 本当は、薄暗くなる前に帰る予定だったが。
 少し調子に乗ってしまった。

 まあ、大きな問題はないはず。
 と思ったがーー。

「ぎいぃっ!」

 ゴブリンが俺の正面に姿を表す。

「ゴブリンか。1匹くらい、俺の敵ではない」

 俺は剣を油断なく構える。
 そして、魔法の詠唱を開始する。

「揺蕩う炎の精霊よ。契約によりて我が指示に従え。火の弾丸を生み出し、我が眼前の敵を滅せよ。ファイアーバレット!」

 炎の弾がゴブリンを襲う。

「ぎゃうっ!」

 ゴブリンに炎の弾が直撃し、やつはあっさりと息絶えた。

「ふん。所詮は低級だし、この程度だろうな」

 俺は討伐証明部位を剥ぎ取るため、ゴブリンの死体に近づく。
 少し油断していたのだろうか。

「ぎゃいぃっ!」

「う……!?」

 魔物の声とともに、俺の体に衝撃が走る。
 俺はバランスを崩し、よろける。

「な、何だ!?」

 俺は元いた場所から少し距離を取り、周囲を見て状況を確認する。

「ぎゃおっ!」

「ぎいいぃっ!」

 複数体のゴブリンだ。
 正面、左右、そして後方。
 どうやら、囲まれてしまっているようだ。
 最初の1体だけではなかったということか。

「くっ。これはマズイ……」

 1対1ならともかく、ゴブリンの群れを俺1人で相手にするのは厳しい。
 それに、先ほど攻撃を受けたダメージもある。
 肩辺りがズキズキと痛む。
 骨は折れていないだろうが、そこそこの内出血はしていそうだ。

「なんとか突破をーー」

 俺は思考を巡らせる。
 しかし、ゴブリンたちは悠長に待ってはくれなかった。

「ぎゃおっ!」

「ぎいいゃっ!」

 ゴブリンたちが棍棒で殴りかかってくる。
 多勢に無勢だ。
 逃亡や反撃はおろか、防ぎ切ることすら厳しい。

「ぐ……。が……」

 俺は四方をゴブリンに囲まれ、タコ殴りにされる。
 突破口がない。

 俺は、ここまでなのだろうか。
 自分の力を過信して、冒険者として父上を見返そうとしたのが間違いだったのか。
 無難に街で働いていれば……。

 あるいは、出発前に話しかけてきた先輩冒険者たちの言うことを聞いておけば……。
 絡んでくるような雰囲気ではあったが、実際には単なるアドバイスをしようとしてくれていた可能性もある。

 もしくは、白銀草を規定量採取した時点でさっさと撤収していれば……。

「たらればを言っても仕方がない。俺は生きて……帰るんだ……」

 殴られすぎて、意識が朦朧としてきた。
 何かないか、何か……。

「ダーリン、しっかりして! ……ポケットの中の黒毒草を飲むのよ!」

 何やら声が聞こえる。
 昨晩の就寝中、冒険者ギルドでチンピラに絡まれているとき、そして先ほどの採集中にも聞いたような気がする。
 少女の声だ。

「幻聴か……。わざわざ自分で毒を飲んでも仕方がないだろうに……」

 かなり厳しい状況だとはいえ、自殺はしたくない……。

「いいから飲むのよ! 私を信じて!」

「ええい! こうなりゃ一か八かだ!」

 俺はゴブリンたちにタコ殴りにされながらも、なんとかポケットから黒毒草を取り出して自分の口に放り込む。
 苦い。
 マズイ。
 舌がピリピリする。

 黒毒草は、毒を持っているのだ。
 その上、瘴気を呼び寄せる効果を持つ。
 人体にとって、百害あって一利なしとはこのことだ。

「うう……。やっぱり、早まったか……? 黒毒草の毒がこれほど強いとは……」

 もはや体もろくに動かせない。
 毒がさっそく回り始めたようだ。
 ゴブリンから受けているダメージもあるだろう。

 俺が全てを諦め、目を閉じようとしたときーー。

「うふふふふ。ついに、私のお出ましよ! 瘴気をたっぷりもらって、怨霊サリーナちゃん、華麗に参上!」

 何やらハイテンションな少女の声が聞こえる。
 声だけでわかる。
 かわいい少女だ。

 この期に及んで、また幻聴か。
 俺の脳は、ずいぶんとお花畑だったらしい。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

真祖竜に転生したけど、怠け者の世界最強種とか性に合わないんで、人間のふりして旅に出ます

難波一
ファンタジー
"『第18回ファンタジー小説大賞【奨励賞】受賞!』" ブラック企業勤めのサラリーマン、橘隆也(たちばな・りゅうや)、28歳。 社畜生活に疲れ果て、ある日ついに階段から足を滑らせてあっさりゲームオーバー…… ……と思いきや、目覚めたらなんと、伝説の存在・“真祖竜”として異世界に転生していた!? ところがその竜社会、価値観がヤバすぎた。 「努力は未熟の証、夢は竜の尊厳を損なう」 「強者たるもの怠惰であれ」がスローガンの“七大怠惰戒律”を掲げる、まさかのぐうたら最強種族! 「何それ意味わかんない。強く生まれたからこそ、努力してもっと強くなるのが楽しいんじゃん。」 かくして、生まれながらにして世界最強クラスのポテンシャルを持つ幼竜・アルドラクスは、 竜社会の常識をぶっちぎりで踏み倒し、独学で魔法と技術を学び、人間の姿へと変身。 「世界を見たい。自分の力がどこまで通じるか、試してみたい——」 人間のふりをして旅に出た彼は、貴族の令嬢や竜の少女、巨大な犬といった仲間たちと出会い、 やがて“魔王”と呼ばれる世界級の脅威や、世界の秘密に巻き込まれていくことになる。 ——これは、“怠惰が美徳”な最強種族に生まれてしまった元社畜が、 「自分らしく、全力で生きる」ことを選んだ物語。 世界を知り、仲間と出会い、規格外の強さで冒険と成長を繰り広げる、 最強幼竜の“成り上がり×異端×ほのぼの冒険ファンタジー”開幕! ※小説家になろう様にも掲載しています。

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

S級クラフトスキルを盗られた上にパーティから追放されたけど、実はスキルがなくても生産力最強なので追放仲間の美少女たちと工房やります

内田ヨシキ
ファンタジー
[第5回ドラゴンノベルス小説コンテスト 最終選考作品] 冒険者シオンは、なんでも作れる【クラフト】スキルを奪われた上に、S級パーティから追放された。しかしシオンには【クラフト】のために培った知識や技術がまだ残されていた! 物作りを通して、新たな仲間を得た彼は、世界初の技術の開発へ着手していく。 職人ギルドから追放された美少女ソフィア。 逃亡中の魔法使いノエル。 騎士職を剥奪された没落貴族のアリシア。 彼女らもまた、一度は奪われ、失ったものを、物作りを通して取り戻していく。 カクヨムにて完結済み。 ( https://kakuyomu.jp/works/16817330656544103806 )

追放された最強ヒーラーは、美少女令嬢たちとハーレム生活を送る ~公爵令嬢も義妹も幼馴染も俺のことを大好きらしいので一緒の風呂に入ります~

軽井広@北欧美少女 書籍化!
ファンタジー
白魔道師のクリスは、宮廷魔導師団の副団長として、王国の戦争での勝利に貢献してきた。だが、国王の非道な行いに批判的なクリスは、反逆の疑いをかけられ宮廷を追放されてしまう。 そんなクリスに与えられた国からの新たな命令は、逃亡した美少女公爵令嬢を捕らえ、処刑することだった。彼女は敵国との内通を疑われ、王太子との婚約を破棄されていた。だが、無実を訴える公爵令嬢のことを信じ、彼女を助けることに決めるクリス。 クリスは国のためではなく、自分のため、そして自分を頼る少女のために、自らの力を使うことにした。やがて、同じような境遇の少女たちを助け、クリスは彼女たちと暮らすことになる。 一方、クリスのいなくなった王国軍は、隣国との戦争に負けはじめた……。

貴族に無茶苦茶なことを言われたのでやけくそな行動をしたら、戦争賠償として引き抜かれました。

詰んだ
ファンタジー
エルクス王国の魔法剣士で重鎮のキースは、うんざりしていた。 王国とは名ばかりで、元老院の貴族が好き勝手なこと言っている。 そしてついに国力、戦力、人材全てにおいて圧倒的な戦力を持つヴォルクス皇国に、戦争を仕掛けるという暴挙に出た。 勝てるわけのない戦争に、「何とか勝て!」と言われたが、何もできるはずもなく、あっという間に劣勢になった。 日を追うごとに悪くなる戦況に、キースへのあたりがひどくなった。 むしゃくしゃしたキースは、一つの案を思いついた。 その案を実行したことによって、あんなことになるなんて、誰も想像しなかった。

無能と追放された俺の【システム解析】スキル、実は神々すら知らない世界のバグを修正できる唯一のチートでした

夏見ナイ
ファンタジー
ブラック企業SEの相馬海斗は、勇者として異世界に召喚された。だが、授かったのは地味な【システム解析】スキル。役立たずと罵られ、無一文でパーティーから追放されてしまう。 死の淵で覚醒したその能力は、世界の法則(システム)の欠陥(バグ)を読み解き、修正(デバッグ)できる唯一無二の神技だった! 呪われたエルフを救い、不遇な獣人剣士の才能を開花させ、心強い仲間と成り上がるカイト。そんな彼の元に、今さら「戻ってこい」と元パーティーが現れるが――。 「もう手遅れだ」 これは、理不尽に追放された男が、神の領域の力で全てを覆す、痛快無双の逆転譚!

転生したら領主の息子だったので快適な暮らしのために知識チートを実践しました

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
不摂生が祟ったのか浴槽で溺死したブラック企業務めの社畜は、ステップド騎士家の長男エルに転生する。 不便な異世界で生活環境を改善するためにエルは知恵を絞る。 14万文字執筆済み。2025年8月25日~9月30日まで毎日7:10、12:10の一日二回更新。

《レベル∞》の万物創造スキルで追放された俺、辺境を開拓してたら気づけば神々の箱庭になっていた

夏見ナイ
ファンタジー
勇者パーティーの雑用係だったカイは、魔王討伐後「無能」の烙印を押され追放される。全てを失い、死を覚悟して流れ着いた「忘れられた辺境」。そこで彼のハズレスキルは真の姿《万物創造》へと覚醒した。 無から有を生み、世界の理すら書き換える神の如き力。カイはまず、生きるために快適な家を、豊かな畑を、そして清らかな川を創造する。荒れ果てた土地は、みるみるうちに楽園へと姿を変えていった。 やがて、彼の元には行き場を失った獣人の少女やエルフの賢者、ドワーフの鍛冶師など、心優しき仲間たちが集い始める。これは、追放された一人の青年が、大切な仲間たちと共に理想郷を築き、やがてその地が「神々の箱庭」と呼ばれるまでの物語。

処理中です...