9 / 11
9話 冒険者ギルドへ報告
しおりを挟む
サリーナを連れて、ローグイラの街に帰還した。
怨霊であるサリーナは、宙に浮きながら俺に付いてきている。
いや、憑いてきていると言ったほうが正しいか。
彼女の顔はかわいい。
しかし、周囲にはおどろおどろしい瘴気が渦巻いている。
俺は長年の慣れのおかげか結構平気だが、普通の人なら忌避感を覚えるのではなかろうか。
俺はそんなことを考えつつ、サリーナとともに街中を進む。
「……? みんな、サリーナに反応していないな?」
「うふふふふ。そりゃそうだよ。普通の人は、私を知覚できない。知覚できるのは、テイマーとしての才能がある人か、聖魔法の才能がある人ぐらいだろうね」
テイマーの才能がある人といえば、父上や弟のエドガーあたりだろうか。
聖魔法の才能がある人は、知人にはいないな。
……いや、1人いたか。
聖光教会で聖女見習いとしてがんばっている、あいつが。
俺は、あいつにあいさつもできないまま伯爵家を追放されてしまった。
落ち着いたら、顔ぐらいは出しておきたいところだ。
「なるほどなあ。みんなには、サリーナは見えないわけか」
「うん。だから……。あんまり、しゃべんないほうがいいかもね? ほら、みんなダーリンのことを見ているよ?」
サリーナの言葉を受けて、俺は周囲の状況を確認する。
道行く人が、俺のことを変なやつを見る目で見ている。
そうか。
普通の人はサリーナを知覚できない。
つまり、俺は虚空としゃべっている頭のおかしいやつに見えているわけだ。
これはマズイ。
「(ぐぬっ。気をつけることにしよう)」
俺はそうつぶやき、足早にその場を後にした。
目指すは、冒険者ギルドである。
--------------------------------------------------
「よう。銀月草の採取依頼を完了した。処理を頼む」
俺は冒険者ギルドにて、受付嬢にそう依頼をする。
「承知しました。では、所定量の銀月草をカウンターに出してください」
俺はリュックから銀月草を取り出すために、まずはリュックをカウンター上に置く。
リュックはパンパンだ。
結構重くて、少し疲れた。
それを見て、受付嬢が言葉を続ける。
「ふふっ。それにしても、ずいぶんといろいろと採取したみたいですね? 銀月草以外でも、買い取れるものがあれば買い取りますよ?」
「え? いや、このリュックの中身はほとんど銀月草だが。……よっと」
俺はリュックをひっくり返すようにして、中にパンパンに詰めていた銀月草をカウンター上にぶちまける。
「な!? ま、まさかこれだけの銀月草をお一人で?」
「ああ、もちろんだ」
「す、すばらしい採取勘をお持ちですね。これは有望な新人が来たものです。なかなかの金額になると思いますよ」
受付嬢がそう言って、処理を進めていく。
とりあえず、依頼は達成となるだろう。
成功報酬をもらえるし、ランクアップ査定もプラスになるはず。
「そうそう。採取中に襲ってきたゴブリンがいたから、返り討ちにしておいた。討伐証明部位を持ち帰ってきたので、こちらもついでに処理を頼む」
俺はゴブリンの討伐証明部位をカウンター上に並べる。
合計で、10匹分以上はある。
受付嬢は白銀草のほうの処理を進めながら、口を開く。
「おや、ゴブリンですか。単独のゴブリンは、初級冒険者にとってはそこそこおいしい獲物ですね。経験も積めますし、討伐報酬もそこそこですし。アルフさんは、単独行動のゴブリンに遭遇できてラッキーでしたね」
ここで、受付嬢がようやく白銀草のほうの処理をひと段落させ、ゴブリンの討伐証明部位のほうへ視線を移す。
「……って、えええええ!? 1匹だけじゃなかったのですか!? ひい、ふう、みい……。10匹以上の群れを討伐されたのですか? お一人で!?」
受付嬢が驚きながらそう言う。
「ああ、俺1人でやったぞ。これぐらい、どってことないさ」
厳密に言えば、サリーナの力のおかげだが。
しかし、彼女は俺のテイマーとしての力に惹かれて俺に憑いている様子だ。
ある意味では、彼女の力も俺の力と言っていいだろう。
「そ、そうですか……。これは、とんでもない有望新人ですね。さっそく、Dランク昇格の申請をしておきます!」
受付嬢がそう言う。
登録初日で、Dランクへ昇格できそうだ。
父上たちを見返すために、いいスタートを切れたと言っていいだろう。
白銀草とゴブリン討伐の報酬を受け取り、俺は受付から立ち去ろうとする。
そのときーー。
「おうおう、調子に乗ってんじゃねえぞゴラア!」
「ギャハハハハ! 昼間は腹痛で見逃してやったが、今度こそは容赦しねえぜ。覚悟しな!」
2人組の男からそう声を掛けられた。
昼間に絡んできた、あの2人組だ。
さあて。
今度は、どうしたものか。
怨霊であるサリーナは、宙に浮きながら俺に付いてきている。
いや、憑いてきていると言ったほうが正しいか。
彼女の顔はかわいい。
しかし、周囲にはおどろおどろしい瘴気が渦巻いている。
俺は長年の慣れのおかげか結構平気だが、普通の人なら忌避感を覚えるのではなかろうか。
俺はそんなことを考えつつ、サリーナとともに街中を進む。
「……? みんな、サリーナに反応していないな?」
「うふふふふ。そりゃそうだよ。普通の人は、私を知覚できない。知覚できるのは、テイマーとしての才能がある人か、聖魔法の才能がある人ぐらいだろうね」
テイマーの才能がある人といえば、父上や弟のエドガーあたりだろうか。
聖魔法の才能がある人は、知人にはいないな。
……いや、1人いたか。
聖光教会で聖女見習いとしてがんばっている、あいつが。
俺は、あいつにあいさつもできないまま伯爵家を追放されてしまった。
落ち着いたら、顔ぐらいは出しておきたいところだ。
「なるほどなあ。みんなには、サリーナは見えないわけか」
「うん。だから……。あんまり、しゃべんないほうがいいかもね? ほら、みんなダーリンのことを見ているよ?」
サリーナの言葉を受けて、俺は周囲の状況を確認する。
道行く人が、俺のことを変なやつを見る目で見ている。
そうか。
普通の人はサリーナを知覚できない。
つまり、俺は虚空としゃべっている頭のおかしいやつに見えているわけだ。
これはマズイ。
「(ぐぬっ。気をつけることにしよう)」
俺はそうつぶやき、足早にその場を後にした。
目指すは、冒険者ギルドである。
--------------------------------------------------
「よう。銀月草の採取依頼を完了した。処理を頼む」
俺は冒険者ギルドにて、受付嬢にそう依頼をする。
「承知しました。では、所定量の銀月草をカウンターに出してください」
俺はリュックから銀月草を取り出すために、まずはリュックをカウンター上に置く。
リュックはパンパンだ。
結構重くて、少し疲れた。
それを見て、受付嬢が言葉を続ける。
「ふふっ。それにしても、ずいぶんといろいろと採取したみたいですね? 銀月草以外でも、買い取れるものがあれば買い取りますよ?」
「え? いや、このリュックの中身はほとんど銀月草だが。……よっと」
俺はリュックをひっくり返すようにして、中にパンパンに詰めていた銀月草をカウンター上にぶちまける。
「な!? ま、まさかこれだけの銀月草をお一人で?」
「ああ、もちろんだ」
「す、すばらしい採取勘をお持ちですね。これは有望な新人が来たものです。なかなかの金額になると思いますよ」
受付嬢がそう言って、処理を進めていく。
とりあえず、依頼は達成となるだろう。
成功報酬をもらえるし、ランクアップ査定もプラスになるはず。
「そうそう。採取中に襲ってきたゴブリンがいたから、返り討ちにしておいた。討伐証明部位を持ち帰ってきたので、こちらもついでに処理を頼む」
俺はゴブリンの討伐証明部位をカウンター上に並べる。
合計で、10匹分以上はある。
受付嬢は白銀草のほうの処理を進めながら、口を開く。
「おや、ゴブリンですか。単独のゴブリンは、初級冒険者にとってはそこそこおいしい獲物ですね。経験も積めますし、討伐報酬もそこそこですし。アルフさんは、単独行動のゴブリンに遭遇できてラッキーでしたね」
ここで、受付嬢がようやく白銀草のほうの処理をひと段落させ、ゴブリンの討伐証明部位のほうへ視線を移す。
「……って、えええええ!? 1匹だけじゃなかったのですか!? ひい、ふう、みい……。10匹以上の群れを討伐されたのですか? お一人で!?」
受付嬢が驚きながらそう言う。
「ああ、俺1人でやったぞ。これぐらい、どってことないさ」
厳密に言えば、サリーナの力のおかげだが。
しかし、彼女は俺のテイマーとしての力に惹かれて俺に憑いている様子だ。
ある意味では、彼女の力も俺の力と言っていいだろう。
「そ、そうですか……。これは、とんでもない有望新人ですね。さっそく、Dランク昇格の申請をしておきます!」
受付嬢がそう言う。
登録初日で、Dランクへ昇格できそうだ。
父上たちを見返すために、いいスタートを切れたと言っていいだろう。
白銀草とゴブリン討伐の報酬を受け取り、俺は受付から立ち去ろうとする。
そのときーー。
「おうおう、調子に乗ってんじゃねえぞゴラア!」
「ギャハハハハ! 昼間は腹痛で見逃してやったが、今度こそは容赦しねえぜ。覚悟しな!」
2人組の男からそう声を掛けられた。
昼間に絡んできた、あの2人組だ。
さあて。
今度は、どうしたものか。
0
あなたにおすすめの小説
S級クラフトスキルを盗られた上にパーティから追放されたけど、実はスキルがなくても生産力最強なので追放仲間の美少女たちと工房やります
内田ヨシキ
ファンタジー
[第5回ドラゴンノベルス小説コンテスト 最終選考作品]
冒険者シオンは、なんでも作れる【クラフト】スキルを奪われた上に、S級パーティから追放された。しかしシオンには【クラフト】のために培った知識や技術がまだ残されていた!
物作りを通して、新たな仲間を得た彼は、世界初の技術の開発へ着手していく。
職人ギルドから追放された美少女ソフィア。
逃亡中の魔法使いノエル。
騎士職を剥奪された没落貴族のアリシア。
彼女らもまた、一度は奪われ、失ったものを、物作りを通して取り戻していく。
カクヨムにて完結済み。
( https://kakuyomu.jp/works/16817330656544103806 )
無能と追放された俺の【システム解析】スキル、実は神々すら知らない世界のバグを修正できる唯一のチートでした
夏見ナイ
ファンタジー
ブラック企業SEの相馬海斗は、勇者として異世界に召喚された。だが、授かったのは地味な【システム解析】スキル。役立たずと罵られ、無一文でパーティーから追放されてしまう。
死の淵で覚醒したその能力は、世界の法則(システム)の欠陥(バグ)を読み解き、修正(デバッグ)できる唯一無二の神技だった!
呪われたエルフを救い、不遇な獣人剣士の才能を開花させ、心強い仲間と成り上がるカイト。そんな彼の元に、今さら「戻ってこい」と元パーティーが現れるが――。
「もう手遅れだ」
これは、理不尽に追放された男が、神の領域の力で全てを覆す、痛快無双の逆転譚!
《レベル∞》の万物創造スキルで追放された俺、辺境を開拓してたら気づけば神々の箱庭になっていた
夏見ナイ
ファンタジー
勇者パーティーの雑用係だったカイは、魔王討伐後「無能」の烙印を押され追放される。全てを失い、死を覚悟して流れ着いた「忘れられた辺境」。そこで彼のハズレスキルは真の姿《万物創造》へと覚醒した。
無から有を生み、世界の理すら書き換える神の如き力。カイはまず、生きるために快適な家を、豊かな畑を、そして清らかな川を創造する。荒れ果てた土地は、みるみるうちに楽園へと姿を変えていった。
やがて、彼の元には行き場を失った獣人の少女やエルフの賢者、ドワーフの鍛冶師など、心優しき仲間たちが集い始める。これは、追放された一人の青年が、大切な仲間たちと共に理想郷を築き、やがてその地が「神々の箱庭」と呼ばれるまでの物語。
聖女として召還されたのにフェンリルをテイムしたら追放されましたー腹いせに快適すぎる森に引きこもって我慢していた事色々好き放題してやります!
ふぃえま
ファンタジー
「勝手に呼び出して無茶振りしたくせに自分達に都合の悪い聖獣がでたら責任追及とか狡すぎません?
せめて裏で良いから謝罪の一言くらいあるはずですよね?」
不況の中、なんとか内定をもぎ取った会社にやっと慣れたと思ったら異世界召還されて勝手に聖女にされました、佐藤です。いや、元佐藤か。
実は今日、なんか国を守る聖獣を召還せよって言われたからやったらフェンリルが出ました。
あんまりこういうの詳しくないけど確か超強いやつですよね?
なのに周りの反応は正反対!
なんかめっちゃ裏切り者とか怒鳴られてロープグルグル巻きにされました。
勝手にこっちに連れて来たりただでさえ難しい聖獣召喚にケチつけたり……なんかもうこの人たち助けなくてもバチ当たりませんよね?
追放された私の代わりに入った女、三日で国を滅ぼしたらしいですよ?
タマ マコト
ファンタジー
王国直属の宮廷魔導師・セレス・アルトレイン。
白銀の髪に琥珀の瞳を持つ、稀代の天才。
しかし、その才能はあまりに“美しすぎた”。
王妃リディアの嫉妬。
王太子レオンの盲信。
そして、セレスを庇うはずだった上官の沈黙。
「あなたの魔法は冷たい。心がこもっていないわ」
そう言われ、セレスは**『無能』の烙印**を押され、王国から追放される。
彼女はただ一言だけ残した。
「――この国の炎は、三日で尽きるでしょう。」
誰もそれを脅しとは受け取らなかった。
だがそれは、彼女が未来を見通す“預言魔法”の言葉だったのだ。
「お前の戦い方は地味すぎる」とギルドをクビになったおっさん、その正体は大陸を震撼させた伝説の暗殺者。
夏見ナイ
ファンタジー
「地味すぎる」とギルドをクビになったおっさん冒険者アラン(40)。彼はこれを機に、血塗られた過去を捨てて辺境の村で静かに暮らすことを決意する。その正体は、10年前に姿を消した伝説の暗殺者“神の影”。
もう戦いはこりごりなのだが、体に染みついた暗殺術が無意識に発動。気配だけでチンピラを黙らせ、小石で魔物を一撃で仕留める姿が「神業」だと勘違いされ、噂が噂を呼ぶ。
純粋な少女には師匠と慕われ、元騎士には神と崇められ、挙句の果てには王女や諸国の密偵まで押しかけてくる始末。本人は畑仕事に精を出したいだけなのに、彼の周りでは勝手に伝説が更新されていく!
最強の元暗殺者による、勘違いスローライフファンタジー、開幕!
「男のくせに料理なんて」と笑われたけど、今やギルドの胃袋を支えてます。
柊
ファンタジー
「顔も頭も平凡で何の役にも立たない」とグリュメ家を追放されたボルダン。
辿り着いたのはギルド食堂。そこで今まで培った料理の腕を発揮し……。
※複数のサイトに投稿しています。
(完結)魔王討伐後にパーティー追放されたFランク魔法剣士は、超レア能力【全スキル】を覚えてゲスすぎる勇者達をザマアしつつ世界を救います
しまうま弁当
ファンタジー
魔王討伐直後にクリードは勇者ライオスからパーティーから出て行けといわれるのだった。クリードはパーティー内ではつねにFランクと呼ばれ戦闘にも参加させてもらえず場美雑言は当たり前でクリードはもう勇者パーティーから出て行きたいと常々考えていたので、いい機会だと思って出て行く事にした。だがラストダンジョンから脱出に必要なリアーの羽はライオス達は分けてくれなかったので、仕方なく一階層づつ上っていく事を決めたのだった。だがなぜか後ろから勇者パーティー内で唯一のヒロインであるミリーが追いかけてきて一緒に脱出しようと言ってくれたのだった。切羽詰まっていると感じたクリードはミリーと一緒に脱出を図ろうとするが、後ろから追いかけてきたメンバーに石にされてしまったのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる