純心パラドックス

櫻木 いづる

文字の大きさ
7 / 11

恋は盲目

しおりを挟む
 ★☆★☆

「嫉妬……するくらい、好きだ」
 そう、日向はハッキリと言葉にした。
 その気持ちが嬉しくて、けれど同時に自分がズルい人間であることを僕は自覚していた。今を逃したら……この機会を逃したら、もうきっと二度とないだろう。
 たとえ再び日向おとうとに嫌われてしまったとしても、今のこの言葉を利用したいと、邪な願望を抱いた。
(僕だって、日向と同じなんだよ)
 口には出さないまま、僕は優しく日向を抱きしめる。
(僕だって、ずっと惹かれてた)
 自分とは違い、きちんと人を拒絶できる強さを持った日向おとうと
 自分にはない、持つことを諦めたその姿。
 強さを宿した瞳が、声が、姿が何より格好良くて羨ましかった。
 時折、劣等感と嫉妬を生み出すことはあったけれど――それを上回るほどの愛しさがあった。
 いつからだったかなんて、憶えていない。
 恋は盲目、とは良く言ったものだけれど、気づいた時には好きだった。
 羨望や憧憬といったそんな感情すべてを捏ねくり回していく内に、好きになっていた。
(でも……)
 自分なんかが、日向を好きになったことが、申し訳なくて……上手く言葉に出来ない罪悪感に苛まれた。だから言葉にしないまま、せめて手の届く範囲のうちは精一杯愛そうと決めていた。
 こうして喧嘩をする前までは――日向が離れて行く直前までは。
 ずっと恋焦がれた。ずっとずっと愛おしくて、けれどそんな感情を日景あにとして抱いてはいけないと押さえ込んでいた。
「日向も、同じだったんだ」
 でも、それももう必要ないのかも知れない。
 好きになった理由は違う。
 思っていたことも違う。
 それでも、こうして好きでいてくれたことが何よりも嬉しくて、抑えようのない感情が膨らんで、シャボン玉のようにパチンと音を立てて弾けた。

「日向」

 涙でクシャクシャに濡れた顔をもう一度拭ってから、僕はそっと日向を抱きしめた。
 もう手放したくないと、そう願いながら。
「日向のこと、もっと教えて」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完】君に届かない声

未希かずは(Miki)
BL
 内気で友達の少ない高校生・花森眞琴は、優しくて完璧な幼なじみの長谷川匠海に密かな恋心を抱いていた。  ある日、匠海が誰かを「そばで守りたい」と話すのを耳にした眞琴。匠海の幸せのために身を引こうと、クラスの人気者・和馬に偽の恋人役を頼むが…。 すれ違う高校生二人の不器用な恋のお話です。 執着囲い込み☓健気。ハピエンです。

幸せな復讐

志生帆 海
BL
お前の結婚式前夜……僕たちは最後の儀式のように身体を重ねた。 明日から別々の人生を歩むことを受け入れたのは、僕の方だった。 だから最後に一生忘れない程、激しく深く抱き合ったことを後悔していない。 でも僕はこれからどうやって生きて行けばいい。 君に捨てられた僕の恋の行方は…… それぞれの新生活を意識して書きました。 よろしくお願いします。 fujossyさんの新生活コンテスト応募作品の転載です。

キミがいる

hosimure
BL
ボクは学校でイジメを受けていた。 何が原因でイジメられていたかなんて分からない。 けれどずっと続いているイジメ。 だけどボクには親友の彼がいた。 明るく、優しい彼がいたからこそ、ボクは学校へ行けた。 彼のことを心から信じていたけれど…。

後宮の男妃

紅林
BL
碧凌帝国には年老いた名君がいた。 もう間もなくその命尽きると噂される宮殿で皇帝の寵愛を一身に受けていると噂される男妃のお話。

執着

紅林
BL
聖緋帝国の華族、瀬川凛は引っ込み思案で特に目立つこともない平凡な伯爵家の三男坊。だが、彼の婚約者は違った。帝室の血を引く高貴な公爵家の生まれであり帝国陸軍の将校として目覚しい活躍をしている男だった。

悪役Ωは高嶺に咲く

菫城 珪
BL
溺愛α×悪役Ωの創作BL短編です。1話読切。 ※8/10 本編の後に弟ルネとアルフォンソの攻防の話を追加しました。

彼は罰ゲームでおれと付き合った

和泉奏
BL
「全部嘘だったなんて、知りたくなかった」

伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい

マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。 最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡) 世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。

処理中です...