【本編完結】おもてなしに性接待はアリですか?

チョロケロ

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第六話 ぐだぐだな性接待が、今始まる!

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 お皿を洗い終えるとシロベニアさんを洗面所まで連れて行き、歯を磨いてもらった。
 それから僕の寝室に案内し、ベッドで寝てもらうようお願いした。
 すると、またそこでも一悶着があった。

「私がベッドをお借りしたら、ネリルさんはどこで寝るんですか?」
「居間のソファで寝ます」

 この発言に、シロベニアさんが異議を唱えたのだ。
 宿を借りる分際でベッドなんて申し訳ない! 私がソファで寝ます! と主張してきかないのだ。
 これには僕も困ってしまった。
 ソファで寝させるなんてとんでもない。ベッドを使って下さいと何度言ってもきいてくれない。
 僕たちはしばらく、どちらがベッドで寝るのか押し問答をしていた。
 答えが出ないので、結局ジャンケンで決めた。勝った方がソファで寝るのだ。そしてその勝負は僕が勝った。
 シロベニアさんは悔しそうな表情をしたあと、しぶしぶベッドに横になった。
 僕は勝利の余韻で得意満面の顔をしながら「おやすみなさい」と言って寝室をあとにしたのだった。

※※※※

「さぁ、準備は整った! ここからが勝負だ!」

 僕はすぐにお風呂に入って身体を洗った。お風呂から上がると、全裸で寝室に向かう。
 なぜ全裸で寝室に向かうのか? それはこれからシロベニアさんに性接待をするためだ。
 ベッドに横になったシロベニアさんの前で全裸の僕が登場する。それから「性接待に伺いました」とでも言えば意図が伝わるはずだ。
 果たしてシロベニアさんはドン引きするか? それとも、受け入れてくれるか?
 僕としてはドン引きする方に賭けるけど、やって見なきゃ分からない。

 よし、行くぞ!

 僕は全裸というマヌケな格好のまま、寝室の扉を開けた。
 部屋の中は、小さな灯りだけがぼんやりとついている。それから寝息。シロベニアさんのすうすうと規則正しい呼吸音だけが聞こえるだけだった。

「!?」

 え? もしかして、シロベニアさん寝てるの!?
 しまったぁ! こんなに早く寝てしまうとは思わなかった!
 まあ、お酒飲んでたからね。飲んだら眠くなるよね。シロベニアさんがすぐに寝てしまっても不思議ではない。
 僕はフラフラとベッドに向かう。
 一応、本当に寝ているのか確認しようと思ったのだ。
 ベッドの前に立ち、シロベニアさんの顔を覗き込む。
 あどけない子供のような寝顔で可愛かった。
 あーあ……。さすがに寝ている人を起こすのは気が引けるな。認めたくないが、今日の性接待は失敗だ。大失敗だ!
 お風呂なんて入らず、すぐに寝室に向かえば良かったのだ。そうすればシロベニアさんは寝なかったのに……。
 今更悔やんでも仕方がない。まぁ、いいや。また明日チャレンジしよう。などと思いながらシロベニアさんの可愛い寝顔に優しく笑いかける。

「明日こそ、最高のおもてなしをしますからね」

 本当に小さな声でつぶやいたのだが、シロベニアさんの瞳がパチリと開いた。
 あれ? と思ったときにはもう遅い。気付いたら僕はベッドに押さえ付けられていた。
 なにが起こったのだ? と頭の中を整理する。
 どうやらパチリと目を開けたシロベニアさんが瞬時に僕の存在に気付き、起き上がってベッドに押し付けたようなのだ。

「シ、シロベニアさん……?」

 僕が困惑した声で名前を呼ぶと、押さえ付けていた腕の力がゆるんだ。

「あれ……? もしかしてネリルさんですか?」
「そ、そうです……」
「!」

 押さえ付けていた腕がパッと離れる。それから慌てたような声が頭上から聞こえてきた。

「すみません! 寝ぼけてました!」

 ね、寝ぼけていた……? どう言うこと?
 起き上がりシロベニアさんから詳しく話を聞いた。
 どうやらシロベニアさんは冒険者なので、寝ているときも注意をおこたらないらしい。
 寝ていたらいきなり声が聞こえてきたので敵かと思い、瞬時に覚醒して声の主を拘束したとのこと。
 凄いなぁ。僕なら寝ているときに声をかけられても絶対起きないよ。一流の冒険者って凄いんだなぁ、などと感心していたら、ほんのり頬を染めたシロベニアさんと目が合った。

「それでネリルさん……」
「はい?」
「あなたはなぜ裸なのですか?」
「!」

 あ! 忘れていた! そう言えば僕は裸だったのだ。
 すやすや寝ていたら突然声が聞こえてきて、飛び起きたら全裸の男がこちらを覗き込んでいた。
 なにそれ? シロベニアさんからしたら恐怖以外の何者でもないよ。
 僕は慌ててシロベニアさんに謝った。

「す、すみません……。ビックリしましたよね!?」
「いや……その……。ビックリしたはしたのですが……。もしかしてネリルさんは、その……」

 シロベニアさんは真っ赤になって僕から目を逸らす。

「もしかしてネリルさんは、夜這いに来てくださったのですか?」
「え?」
「自意識過剰ですみません! でも、この状況はそれ以外考えられない!」
「え? ち、違います! 実は性接待に来ました!」
「性接待!?」

 ウワァァァ! 馬鹿正直に話してしまった!
 でもよく考えてると、夜這いも性接待もあんまり変わらないんじゃないか? やることは一緒だし……。
 でも、でも……。
 混乱する僕をよそに、シロベニアさんはあんぐり口を開けてこちらを見つめている。

「せ、性接待……? どういうことですか?」
「実は――」

 僕は今までの経緯を説明した。
 こんなド田舎の村にわざわざやって来てくれて嬉しかったこと。だから最高のおもてなしがしたかったこと。最高のおもてなしとはなにか? 村民たちと話し合って、性接待だと結論付けた。その性接待の相手に僕が選ばれたこと。だから深夜、裸でシロベニアさんの前に現れて性接待を行おうとしていたこと。
 あらためて話すとバカバカしくて笑えてくる。僕は笑い出しそうになるのを必死にこらえていた。
 だが、シロベニアさんは笑わなかった。
 それよりも頭を抱え、心底困惑した声でつぶやいた。

「いくら感謝しているからって、性接待はやり過ぎですよぉ……」
「あ、あはは……。やっぱりそうですよね……。すみません、不快な思いをさせちゃって……」

 見たくもない僕の全裸を見せられて、シロベニアさんが可哀想だ。
 すぐに退散しようと思い、ベッドから起き上がったところで、シロベニアさんにガシッと腕を掴まれた。

「性接待なんてやり過ぎだ……、やり過ぎだと思うんですけど。――あなたは美し過ぎる」
「へ?」
「美しいネリルさんがそんなあられもない格好をしていたら、あらがえる男なんていない……」

 シロベニアさんの表情を見ると、ビックリするほど熱っぽい瞳をしていて、僕の体の奥底がぞくんと戦慄わなないたのだった。
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